現在の東京都中央区にあった築地居留地に1868(慶応4)年、日本初の洋風建築とされる築地ホテル館が完成した。川に沿って立つことを意識しデザインされた建物。1932(昭和7)年の聖路加国際病院や34(昭和9)年の築地本願寺などにもその建築思想が受け継がれている▼日本橋川や神田川などを船で巡ると、川に向いた近代建築が現存していることに気付く。建設当時、川は日常的に近い存在で、にぎわいの空間だった▼先日、東京湾で建設が進む2020年東京五輪・パラリンピックの競技施設などを船上から見学した。多彩なデザインの建築群に目を奪われ船上からの景色を楽しんだが、すべての施設が水辺からのアプローチを拒んでいるように感じた▼近代以降の工業化や交通技術の発展などによって川が日常から遠ざかり、建築は川に背を向けた。防災のための堤防は必要だが、水辺との親和性や接近性を大切にする建築の在り方もあろう▼羽田空港に着いた旅行者が船で東京湾にある五輪施設に乗り付けたり、豊かな水路網がある都内を周遊したり…。もっと水辺を楽しむ仕掛けを考えてもよいのでは。
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