2018年9月5日水曜日

【現場を担う-所長×職長】国際医療福祉大学成田病院新築工事

(右から)赤澤氏、大田会長、藤本所長、羽持氏。厳しい仕事の中でも笑顔を絶やさない
 ◇互いに支え合い『仕事の質』高める◇

 現場にかかわる皆が互いに支え合うことで、工事の品質をさらに高めていく-。戸田建設が施工を手掛ける「国際医療福祉大学成田病院新築工事」(千葉県成田市)では、働く人同士の輪を広げながら施工の品質を高めるという好循環を生み出している。推進力になっているのは、同社の藤本正洋統括所長や同現場職長会の大田洋会長(向井建設)ら、リーダー間の信頼関係だ。次世代育成へ向け新たな試みも進む。

 同工事の発注者は成田国際医療都市機構。17年10月に着工し、杭工事や基礎躯体工事を経て、現在は地上部の躯体工事に入っている。建物規模は延べ約9・4万平方メートル、病床数642床を誇る大規模病院だ。

 大田会長は「職長会メンバーがしっかりとつながりを作り、現場を引っ張っている。明るい雰囲気で現場が動いている」と話す。藤本統括所長は「この現場の職長会は、問題意識を持って自ら現場をより良くしていこうという意識が強い」と信頼を寄せている。「常に俯瞰(ふかん)的な思考で現場を見てくれている。だから互いに理解し合い譲り合っている」とも。

 建設現場は、さまざまな職種の作業が連携しながら進む。自社の作業だけではなく、周りの仕事も円滑に進むように配慮することが、安全や品質、全体の生産性の向上につながっている。

 藤本統括所長は2人1組でペアを作ってもらい、互いに助け合うという仕組みも取り入れている。スキューバダイビングなどで実施されている「バディシステム」だ。同じグループにとどまらず、工種や工区を飛び越えてバディを組み、一定期間が過ぎるとバディを入れ替える。

 それを積み重ねることで、現場内に信頼できる相手を増やしていく。そうした姿が理想像という。藤本統括所長は、「誰がバディになるかは問題ではない。相手のことを考えようという意識を持ってもらうことが大切だ」と強調する。

 6月からは職長会が主導する形で「サブ職長会」という試みが始まった。各職種のナンバー2を集めて職長としての仕事を覚えてもらう。大田会長は「技能や技術を伝承することも、自分たちの役目。ナンバー2が育つと現場はもっと良くなっていく」と話す。

 ◇リーダー同士の信頼がカギに◇

 職長会メンバーの羽持幸司氏(海野鉄筋工業)は、「サブ職長がいると動きやすくなる」と取り組みの効果を説明。作業を管理する“職長の目”が増え、品質向上につながるという。打ち合わせなどで現場を離れることがあっても安心だ。現場は来年に最盛期を迎え、これまでは多くても300人弱だった作業員数が、1500人規模になる見通しだ。サブ職長の育成は、最盛期の円滑な現場運営を見据えた重要な布石となる。

 こうした試みには前向きな姿勢が欠かせない。現場の職長会副会長や戸田建設関東職長会副会長を務める赤澤祐弥氏(志村工業)は、「関東職長会も巻き込みながら、現場の進め方やイベントを決めている。毎日、わくわくしている」と笑顔で話す。「ごり押しで動かそうとしてもうまく流れない。嫌々でやっているメンバーは一人もいない」と大田会長。藤本統括所長は「こうした規模の大きな現場でなければできないことがある。そうした使命があるということも、職長会メンバーなどが理解してくれている。だから、できる限り応援していく」という姿勢だ。

 大田会長は、「この現場を良い勉強場所にさせてもらいながら、次の現場でもしっかりと仕事をする人を育てたい」と力を込める。「良い建物を安全に造っていくためには、現場で働く皆さんとの信頼関係のキャッチボールが絶対に必要だ。そうした積み重ねがあれば、自信を持ってお客さまに建物を引き渡すことができる」。藤本統括所長には、そうした信念がある。

 「若い人たちにどんどん建設業に入ってもらいたい」という思いも皆に共通している。7月6日には茨城県立土浦工業高校の学生が見学に訪れた。大田会長は「学生を見て、『いいな』と思った。建設業を担っていく宝になる」と頬を緩めた。

 とび職人としての技を磨いてきた大田会長は、「みんなのための足場を組み立てることを誇りに思っている。『この足場はちょうどいいよ。ありがとうございました』と誠意を持って言われた時に、モチベーションが上がった」と振り返る。若い人にもそうした喜びをぜひ知ってほしいと考えている。

 赤澤氏は、自分の手掛けた建物が地図に記されていくことに、大きなやりがいを感じた。「ものすごくうれしかった。『興味本位でもいいから、やってみないか』と、若い人には言いたい」と力を込める。羽持氏は「鉄筋をやってみて合わなかったら、型枠やとびの仕事もある。いろいろな職種を回って、自分に合う仕事を見つけても良い」と話す。

 「この工事が終わるまでの間に、誰もが声を掛け合える雰囲気や輪を作りたい」。それが大田会長の目標だ。これからを担う若い人が、その輪の中に入ってくると、建設業の未来はもっと明るくなっていく。

 《工事概要》

 【工事名】  国際医療福祉大学成田病院新築工事
 
 【発注者】  成田国際医療都市機構
 
 【設計・施工】戸田建設

 【工事場所】 千葉県成田市畑ケ田地蔵前852ほか
 
 【構造・規模】RC一部S造8階塔屋1階建て延べ9万4815平方メートル

 【工期】   17年10月~20年2月

1 件のコメント :

  1. 事故だらけの現場、病院作って怪我してりゃ世話無いよなー
    なぜ事故が減らないのか全く分かって無い

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