2025年2月28日金曜日

回転窓/観光客のスムーズな移動

 日本の上空に長く居座っていた強烈な寒波から一転、今週末は全国的に気温が上昇し4月ごろの陽気になるところもあるそうだ。再び寒さが戻るとの予報だが、春の足音が聞こえ始め旅行を計画する方もおられよう▼観光シーズンは車の利用者が増え、交通渋滞に悩まされることも少なくない。国土交通省が平日と比べ休日に車で訪れる人が多いエリアを対象に、都道府県別の立ち寄り客数ランキングや交通状況が示された見える化マップを提供している▼ETC2・0のデータを分析したランキングで、例えば静岡県は東伊豆エリアが休日に車で訪れる人が最も多く、富士山や浜名湖のエリアもランクイン。見える化マップでは伊豆、富士山のエリアで混雑の区間・地域があり、休日に目的地への移動に要する時間の増加傾向が現れている▼ランキングに入ったエリアは魅力があり多くの人を引き寄せるが、混雑する区間・地域とも重なる。交通インフラの整備拡充が進めば観光地の活性化にもつながるだろう▼全国各地には雄大な山河やおいしい食べ物など多様な観光資源が存在する。観光客のスムーズな移動もその一つになる。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171746 via 日刊建設工業...

中建審WGで業界団体らが意見/賃金確認の第三者機関検討を、対応コスト増に懸念も

 改正建設業法で定める「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の一環として適正な労務費・賃金の行き渡り方策を議論した26日の中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で、技能者への賃金支払いの確認や適正化指導の実施主体として第三者機関の設立が適切との意見が複数の建設業団体からあった。各団体は建設業者全体をカバーした調査・指導の必要性を強調しつつも、国土交通省の建設Gメンを補完するような役割を既存の業団体が担うことは困難との見方を示した。=2面に関連記事  国交省が適正な賃金支払いを促進する業団体などの自主的な活動を提案したことに、日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)が返答した。  日建連の白石一尚人材確保・育成部会長の代理で出席した相良天章賃金・社会保険加入推進専門部会座長は、調査・指導の実施主体に「適切な権限と体制が必要で既存の業団体にはふさわしくない」と指摘。適正な労務費を行き渡らせる観点で最上流の発注者を含めた支払い状況の確認が必要な場合、「業団体の立場で民間発注者を指導するのは現実的ではない」とも話し、中立的機関への委託などが望ましいとした。  全建を代表し出席した荒木雷太岡山県建設業協会会長は、各都道府県協会では会員企業数や体制面から「建設Gメンを補完する役割を担う効果は見込めない」との見解を示し、代替策として「Gメンを補完する組織を国交省から外部委託するか、建設業者全体を指導できる第三者機関の設立を検討してほしい」と要望した。岡山建協で昨年12月から「Gメン通報制度」を運用しているが、業団体の関与がリスクと認識され通報件数が少ない可能性があるとし「別団体で運用する方がいいと思う」と話した。  WGでは第三者機関などの設置をコスト面などから懸念する声も上がった。岩田正吾建設産業専門団体連合会(建専連)会長は「契約当事者間の納得が最優先」と強調。例えば下請が賃金台帳や就業規則を開示して元請に説明し、適切な行き渡りを担保すべきとした。  学識者から西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授も、賃金支払いを確認する組織の新設や制度の導入が「書類作成の経費の増加を招き、ひいては工事費上昇に拍車を掛ける」可能性を指摘。契約当事者間で賃金支払いを約束する「コミットメント」などの取り組みに重きを置き、行政主体が支援する方法が望ましいとした。 from...

大阪市/国際見本市会場インテックス大阪、改修方針等検討業務プロポ公告

 大阪市は、老朽化が進んでいる国際見本市会場「インテックス大阪」(住之江区)の改修を検討する。IR(統合型リゾート)が立地する夢洲(此花区)ではMICE(国際的なイベント)施設の整備計画が進んでおり、今後の展示会や見本市開催の動向、MICE施設との役割の違いを分析し、施設機能や必要規模を検討する。26日に「国際見本市会場(インテックス大阪)の改修方針等の検討業務」の公募型プロポーザルを公告した。3月21日まで参加申請を受け付け、4月下旬に選定結果を通知する予定だ。  インテックス大阪は1985年に開業した西日本最大の見本市会場。今年で40年を迎えるが、建物や設備の経年劣化が進み、機能面でも陳腐化している。他都市では次々と新たな展示館の建設が進んでおり、都市間競争力の低下が懸念されている。  一方、夢洲ではIRが開業する2030年に2万平方メートルの展示施設が整備され、その後も段階的に拡張が予定されている。  今回の業務ではIRのMICE施設の拡張計画を踏まえ、見本市会場に求められる施設機能や必要規模を整理し、改修方法を比較するとともに、調査結果を踏まえ、最適な事業手法を検討する。  プロポーザルは単体かJVが参加可能。参加資格はMICE施設の整備を目的とした基本構想や調査検討業務、地方自治体が策定した行政計画策定支援業務の履行実績がそれぞれ1件以上あること。3月28日に資格審査結果を通知し、4月4日まで企画提案書を受け付ける。プレゼンテーション審査は同23日に実施する予定。  業務内容は▽現状のインテックス大阪の課題と主催者ニーズの整理▽今後25年間の府内展示会などの開催見込み件数の算出▽IRのMICE施設と公的展示施設で開催される展示会の違いの分析▽MICE施設開業後のインテックス大阪の催事開催動向と収支予測▽MICE施設開業後を見据えた必要規模▽最適な事業手法の検討-など。事業手法は指定管理者制度やDBO(設計・建設・運営)方式、コンセッション(公共施設等運営権)方式のPFIなどを含めて検討を進める。  契約期間は12月1日まで。契約上限額は1650万円(税込み)を予定。 from...

鹿島/PCaPC床版の3Dモデル自動生成システムを開発、道路橋更新で時間短縮

 鹿島は、道路橋の床版取り換え工事でプレキャスト・プレストレストコンクリート(PCaPC)床版の3Dモデル自動生成システムを開発した。道路線形(道路全体の座標、長さ、角度)や、鉄筋などの数値情報を入力するだけでPCaPC床版の3Dモデルを生成。部材同士が干渉しないよう自動で配置する。生成した3Dモデルに床版取り換え前の3D測量点群データを取り込むことで、現況と設計値のずれを容易に把握。このため設計に関するシミュレーションが数値の再入力だけで短時間で行える。  同システムは床版の3Dモデル生成だけでなく、鋼桁の3Dモデルの生成や測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正も可能。システムに建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚・幅などの数値を入力することで、さまざまな鋼桁の3Dモデルを生成できる。  床版と鋼桁の干渉チェックは、2Dの図面で行う場合と比べ設計業務の生産性が大幅に向上する。3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込めば、差分解析により橋梁全体の現況と図面のずれを瞬時に数値で把握。数値を打ち換えるだけで、現況に合わせた微調整を瞬時に設計へ反映できる。  同社は、同システムを「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」に適用した結果、これまで熟練のCADオペレーターが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が10分の1程度に短縮した。BIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者などとの協議にも期待できる。  同社は今後、同システムを複雑な道路線形の橋梁や、PCaPC床版の製作と架設の施工計画に展開。同社開発の「スマート床版更新(SDR)システム」と連携させた情報化施工の技術開発も進める。 from...

2025年2月27日木曜日

回転窓/万博のおにぎり

 伝統食のおにぎり。米どころの一つ新潟県村上市が「種類は無限大」と広報紙で紹介していた▼市は「鮭(サケ)のまち」としても知られる。同市を含む岩船地方産のごはんを丸め、具には代表料理の「塩ひき鮭」のほぐし身、薄口しょうゆを霧吹きでかけてから岩のりをまとわせる。アルミホイルでくるんだ同市の「岩のりおにぎり」は、国内外にファンがいると聞いた▼大阪・関西万博の開幕が近づいてきた。迎える日本側の取り組みが活発化し、万博を地域の魅力発信やインバウンドの増加にもつなげようと、全国でさまざまな会合が行われている▼内閣官房は14日に「万博地方創生シンポジウム」を東京都内で開いた。「地方の決起集会」として、自治体担当者が期待を話すパネルディスカッションや、地域の魅力を伝えるポスター展示などを実施し、開催の機運を高めた▼村上市は「共創おにぎり」と銘打った活動をシンポジウムでアピールした。大阪府松原市など4市と連携し、各地のおにぎりを万博会場で提供。味とともに地域の文化や歴史を知ってもらうという。おにぎりで良縁が結ばれ世界に魅力が伝わるといい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171712 via 日刊建設工業...

川崎市/臨海部交通機能強化、扇島大規模土地利用転換など受け実施方針改定へ

 川崎市は「臨海部の交通機能強化に向けた実施方針」を改定する。JFEスチールの高炉休止に伴う大規模土地利用転換などを受け、アクセス道路や幹線道路整備などを新規に盛り込む。市総合計画や総合都市交通計画など上位計画との整合をとりながら、10月にも素案をまとめ、2026年3月の改定を目指す。  10日の市議会総務委員会で中間取りまとめを報告した。21年3月に策定後、大規模土地利用転換や新たな企業立地など、取り巻く環境の変化を踏まえた改定。23年6月に改定した臨海部ビジョンの実現に向けた中長期的な方向性と、今後5年間の取り組みなどを新規事業に加える。  中間取りまとめによると、道路機能強化で新規に4項目を盛り込む。臨海部幹線道路の検討ではJFEスチール東日本製鉄所京浜地区(川崎区扇島、約222ヘクタール)の大規模土地利用転換の機会を捉え、臨海部幹線道路の実現を目指す。臨海部地域内や羽田空港方面へのアクセス向上と周辺道路の交通分散を図る。  扇島地区土地利用転換に伴う道路整備では、一部土地利用開始に向けた道路整備を進めるとともに、段階的に島内の道路機能を強化する。扇島と東扇島をつなぐアクセス道路、島内を移動するための幹線道路、バースと幹線道路をつなぐ臨海道路などの整備を検討する。  関連する国道357号(扇島内)早期事業化では関係機関との調整を進める。対象となる路線は臨港道路東扇島水江町線、国道357号(多摩川トンネル)、首都高速湾岸線扇島出入り口、国道357号(扇島内)、国道357号(未着手)、内陸部アクセス道路(扇島~扇町間)(構想)など。  このほか路上駐停車対策など既存道路を効果的に活用するための取り組みも進める。 from...

土木学会・佐々木葉会長、八潮陥没事故受けメッセージ/広い視点で議論へ対話の場準備

 土木学会(佐々木葉会長)は26日、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、佐々木会長による会員向けのメッセージ動画=写真=をユーチューブに公開した。佐々木会長はインフラの老朽化などによるリスクについて「広い視点からの議論が必要」と指摘。今後、インフラメンテナンスとマネジメントに取り組むに当たり「対話と議論の場を準備する」考えを示した。  佐々木会長は2012年に発生した笹子トンネル天井板崩落事故にも言及し、今回の事故について「それに匹敵する衝撃を社会に与えた」と事故の深刻さを強調。「現在も続く事故への対応や構造物の健全性確保にとどまらず、より広い観点からの議論が必要」と提言した。  議論に当たって必要な視点として、道路の地下には目に見えないインフラが存在することや、これらのインフラの整備や維持管理には費用がかかり、その費用負担の仕組みが分かりづらくなっていること、インフラ整備には幅広い人の理解と合意が必要であることなど6点を列挙した。  六つの視点からの議論には幅広い分野の土木技術者の力を生かす必要があるとし、「インフラメンテナンスとマネジメントのための広い意味での技術に取り組むため、対話と議論の場をこれから準備する」考えを示した。  会員に対しては「『自分ごと』として下水道などの身近なインフラとどう向き合うか、職場、家族、近所などの身近な人と話してほしい」と呼び掛けた。 from...

JR四国/旧研修センター跡地開発(高松市)、学生会館など5棟建設

 JR四国は、旧研修センター跡地(高松市西宝町2の375の2ほか、敷地面積約1万平方メートル)の開発に乗り出す。多世代型の居住エリアとして、学生専用食事付き賃貸マンション(学生会館)とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、一般賃貸住宅の全5棟(総延べ約1万1000平方メートル)を建設する。2025年度中の完成を目指す。  学生会館の「(仮称)ドーミー高松西宝町」はRC造5階建て延べ3898平方メートル、139戸。26年2月末の完成を予定する。設計監理は共立エステート、運営管理は共立メンテナンス。サ高住の「(仮称)ココファン高松西宝町」はRC造6階建て延べ4295平方メートル、80戸。26年3月末の完成予定。設計監理はシスケア、運営管理は学研ココファン。施工はいずれも合田工務店が担う。  一般賃貸住宅は「(仮称)J.リヴェール高松西宝町」のA、B、C棟。軽量S造3階建て延べ849~1166平方メートルで各棟とも18戸。設計・施工は大和ハウス工業、運営管理は大和リビング。12月末の完成を予定している。  同社は非鉄道事業の収益拡大に取り組んでおり、東京都品川区で首都圏2棟目となる収益用不動産を取得し1月末に運営を開始した。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171715 via...

熊谷組/アースドリル評価技術26年度にも実装へ、瞬時に支持層到達を確認

 熊谷組が雄正工業(東京都新宿区、二川和雄社長)と共同開発したアースドリル工法の評価測定技術の現場実装に向け動いている。場所打ちコンクリート杭が支持層に達したかどうかを、掘削データから算出した数値と建物計画時の試験値とを比べて確認する技術だ。両社は施工管理者がパソコンを使いリアルタイムに確認できるシステムを、2026年度の現場実装を目指し開発している。  場所打ちコンクリート杭のアースドリル工法は、ドリリングバケットを回転させて掘削し、バケット内に収められた土砂を引き上げて地上に排出する仕組み。両社が開発した「熊谷式アースドリル工法掘削抵抗測定技術」は、ドリリングバケットの掘削深度と回転トルク、回転数を計測し掘削抵抗値を随時算出する。掘削抵抗値を建物計画時の標準貫入試験で測ったN値と定量的に比べ、支持層への到達度合いを測る。  両社は22年に技術を開発し、日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得。これにより掘削深度と回転トルクの計測結果から算出した積算回転トルクによる掘削抵抗値と、地盤調査結果で得たN値を比較し、回転数の計測装置を搭載しない重機でも適用できるようになった。24年12月24日付で建設技術審査証明(建築技術)を更新した。  両社は今後、支持層に傾斜や不落が予想される地盤などでの活用を想定。評価技術の現場実装によりデータを蓄積し、施工品質を高めていく。 from...

2025年2月26日水曜日

ID&EHD/東京海上HDの子会社化で新ビジネスモデル、民間防災コンサル本格展開

 ID&Eホールディングス(HD)が東京海上HDの子会社となり、建設コンサルタント分野で培った経験・技術と損害保険サービスを掛け合わせた新ビジネスモデル「民間防災コンサルティング」を本格展開する。東京海上HDによるTOB(株式公開買い付け)が5日に成立、13日に連結子会社となり5月にも臨時株主総会を経て完全子会社となる見通しだ。今後、両HDの経営資源や顧客ネットワークを積極活用し、発災前の防災・減災の取り組みや発災後の復旧・復興対応で新たな商機を探る。既にHDの事業会社らで構成する分科会を中心にサービスモデルの検討に入った。市場や顧客のニーズを見定めつつ、潜在需要の掘り起こしを進める。  民間防災コンサルティングでは、顧客が展開する事業や保有施設などの災害リスクの分析評価や点検といった事前領域から、発災後の保険金支払いや復旧などの事後領域にわたるサービスを一貫して提供する考え。日刊建設工業新聞の取材に応じたID&EHDの新屋浩明社長は「数年先まではある程度の事業量が見込まれ、現在の体制でもやっていけるだろうが、2030年以降は成長していけるか見通せない」と分析。公共分野など従来事業に引き続き注力する一方、民間顧客との接点を増やし新事業の拡大で中長期的な成長ビジョンを描く。  現在、損保会社の災害関連サービスの中心となっているのは、発災後の保険金の支払いだ。「津波や液状化などのリスク評価、被害を防ぐための点検といった発災前の対策までカバーすれば、より顧客のニーズに寄り添った保険サービスを提供できる」と新屋社長。「当社グループには災害の事前領域に対応した多種多様な工学技術があり、発災後の復旧に関するノウハウも生かせる」と自社の強みをアピールする。  ID&EHDは民間防災コンサル分野での事業化を主導するビジネス協業全体会議の下にビジネス協業分科会を設置。現在、分科会は防災(構成企業・日本工営)、都市空間(日本工営都市空間、日本工営)、エネルギー(日本工営エナジーソリューションズ、日本工営)の三つで構成する。東京海上HDと協力連携し提案内容を擦り合わせながら互いの強みを生かしたサービスを検討していく。  ID&EHDは東京海上HDが国内外に持つ顧客ネットワークを生かし民間市場への参入拡大を目指す。人口減少や社会保障費の増大などで公共事業関連予算の増加が期待できない中、民需の開拓を急ぐ。新屋社長は「民間事業へのアクセスは公共事業よりもはるかに難しい」とし、完全子会社化がデータや人材を共有しながら仕事をするための最善策になると判断。今回のTOBに当たり「行動できるのは業界に余力がある今しかなく、『やらないリスク』を考えた。私たちは技術を、東京海上HDは保険を通じて、世のため、人のため、同じ目線で社会貢献に取り組んでいる企業であることを確認できた」と振り返る。  民間市場では公共発注のような仕様書などはなく、提案力とスピードがより問われる。これまでにないソリューションの提供に向け、まずは両HDで互いのことをより深く知りながらシナジー(相乗効果)を追求していく方針だ。 from...

ハタコンサルタント・降籏達生社長に聞く/教育充実で定着率向上へ、全国7会場で研修

 建設業界の喫緊の課題の一つである人材の確保・育成。官民一体で地道な取り組みが進められているが、離職率の高さも見逃せない問題だ。全国で企業向けのセミナーや新入社員教育などに長年携わっている降籏達生ハタコンサルタント社長に問題点などを聞いた。  --会社設立の経緯は。  「小学生の時に映画『黒部の太陽』を見て土木の道に進んだ。岐阜県養老町の排水機場の現場を皮切りにダムや橋梁などさまざまな現場を経験したが、阪神・淡路大震災で故郷の惨状にショックを受け1995年3月に会社を立ち上げた」  「当時の建設業界は、研修など体系的に学ぶ風土がなかった。学びの場は現場で私自身も非常に苦労した。入札・契約制度が変わり企業に技術力が求められるようになり、特にここ10年は技術研修の熱が高まってきたと感じる。弊社は名古屋市内に本社を置くが、全国で技術研修や技術コンサルティングを行っている」  --建設業界が抱える課題は。  「一番の問題は定着率の低さだ。入社後3年以内の離職率は大卒で3割、高卒で5割。残業が多く休日が少ないといった点は改善されつつあるが、それでも定着しないのは、社員教育を行っておらず新入社員が成長を実感できていないことが要因だ。このため、建設技術者のキャリア別能力向上システムを作成し企業に配布している。土木や建築などの業種、現場事務職、専門工事技術者を対象に、キャリアに応じて求められる能力と育成方法を体系立てて記した。新入社員を5年で一人前に育ててほしい」  「弊社では『新入社員育成2カ月コース』を設けている。社会人としての基本と現場ですぐ使える基礎知識が身に付く建設業に特化した研修だ。建設業特有の専門知識やノウハウを身に付けてもらう。今回は内容に応じA~Dの4コースに分けたが、研修で得た知識を現場で実践する建設業に合った教育方法だ。1クラス約40人で行っており、仲間ができることで定着率も上がる。今年も札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7会場で4月から行う。オンラインでも実施する」  「動画研修受け放題システム『ハタコンムービー』も若者に好評だ。月額740円のサブスクリプションで、現場で分からないことはスマートフォンやタブレットで確認できる。企業にとっては採用ツールの一つになっている。教育経費を惜しまない企業は伸びている。新入社員も自分のスキルに応じて求められる内容、達成度が理解できると仕事の楽しさ、やりがいを感じるはずだ。全部理解すれば一人前になれる、と思うことが『希望』につながるのではないか」  --外国人技術者の活用は。  「ベトナム人技術者への支援や日本企業との橋渡しを行っている。現地の大学と提携し土木、建築、電気を学んだ後、われわれが設立した日本語学校で1年間教育を受けた優秀な人材をオンラインで面接し、紹介している。就職後、2年で2級土木施工管理技士に合格した人もいる。日本の高い技術力を学びたい人は多く、意識も高い。前向きで優秀なベトナム人技術者に触発され、会社全体の意欲が高まった企業もある。今後も積極的に支援する」  --会社が目指すものは。  「全国各地で自然災害が多発し激甚化している。自然災害は止められないが、被害は最小化できる。日本の国土や生命、財産を守ることが建設業の使命。そのための技術力を高めることがわれわれの仕事だ。建設業は不人気な業種であることは事実だが、将来は子どもたちがなりたい仕事のベスト3に建設業が入ることが私の夢であり目標だ。そのためには建設会社や働く人たちが、技術や身だしなみも含め『かっこよく』なる必要がある。世間から見てかっこ良く、子どもの憧れになるような建設業、建設技術者になるための支援を行っていきたい」。 ◇  (ふるはた・たつお)1983年大阪大学工学部土木工学科卒、熊谷組入社。阪神・淡路大震災を機に95年退社、同年ハタコンサルタントを設立。兵庫県出身、63歳。 from...

銀座6丁目エリアで建替計画が複数始動/ブリオーニ銀座ビル、銀座能楽堂飯島ビル

 JR有楽町駅の東側に位置する銀座6丁目エリアで、複数の建て替え計画が始動した。対象はブリオーニ銀座ビルと、銀座能楽堂飯島ビル本館の2棟。ブリオーニ銀座ビルはヒューリックの発注、五洋建設の施工で15日に解体着手しており、11月末の解体完了を目指す。銀座能楽堂ビルは建て替えを理由にテナントの退去が進んでいるが、工事のスケジュールは明らかになっていない。  ブリオーニ銀座ビルの所在地は銀座6の5の1。建物はSRC造地下1階地上8階建て延べ2178平方メートルの規模。1980年に建てられ、飲食店や美容室といったテナントが入っていた。  銀座能楽堂飯島ビル本館の所在地は銀座6の5の15。建物は地下1階地上9階建ての規模。個人の発注で1972年に竣工した。飲食店や物販店舗などが入っており、うち生活用品を扱う順理庵はビルの建て替えを理由に2024年11月休業した。その他のテナント退去も進み、現在は大半が空室となっている。  外堀通りを挟んだ向かいでは東京都港区内の個人が、丸源14ビル(銀座7の3の9)を解体中。霞ケ関キャピタルも丸源54ビル(銀座8の3の7)を解体している。同通りのさらにJR新橋駅側では、ヒューリックの「(仮称)G8開発計画」も進展。沿道の風景は今後数年で一変することになりそうだ。 from...

2025年2月25日火曜日

スコープ/JFEエンジ、笠岡モノパイル製作所が25年度下期から本格稼働

 国内唯一の着床式洋上風力発電施設のモノパイル(基礎構造物)製造拠点であるJFEエンジニアリングの笠岡モノパイル製作所(岡山県笠岡市)が、2025年度下期の本格稼働を予定している。24年3月の開設から1月までに、4本の実物大モックアップを試作。国内の主要な洋上風力発電プロジェクトの停滞に伴い現時点で正式な受注はないものの、上野秀治所長は「今は助走期間。作業者の育成や技術のブラッシュアップを進めている」と語る。カーボンニュートラル社会の実現へ再生可能エネルギーの需要は高まり続ける中、初の受注に備えて超重量構造物の量産体制を整えている。  モノパイル式基礎は風車タワーを海中で支えるモノパイルと、タワーとモノパイルを接続するトランジションピースで構成する。モノパイルは厚さ100ミリ以上の分厚い鋼板を加工するため、量産には高い技術力が要求される。JFEエンジニアリングは洋上風力発電市場の拡大を見据え、モノパイルの艤装(ぎそう)を担う津製作所(津市)の設備拡充を含めて約400億円を投資した。  笠岡モノパイル製作所はJFEスチール西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)の東側敷地内にある。瀬戸内海に面した20ヘクタールの敷地には▽素管工場▽研掃・塗装工場▽長管エリア▽保管エリア▽事務所棟▽出荷バース-があり、モノパイルをつくり搬出するまで効率的に運用できるよう施設を配置している。素材となる大単重厚板「Jテラプレート」は、主に同社西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)から供給を受ける。  モノパイルは最大で直径12メートル、長さ約100メートル、重さ約2500トン、板の厚さ130ミリのサイズを製造可能。週1本のペースで年間約10万トン(約50本)の製造能力を持ち、初年度は約8万トンを見込む。フル稼働時には400人程度の新規雇用が期待されている。  1月30日に報道陣に内部を公開した。広い空間には洋上風力発電が盛んな欧州製の工作機械を中心に、200トンガントリークレーンや鋼板をパイプ状に巻き上げる装置で世界最大級の「ベンディングローラー」といった最新鋭装置が工程に沿って整然と並ぶ。  素管工場内はA、B、Cの各棟に分かれる。まずA・B棟で鋼板をつなぎ合わせた後、ベンディングローラーで巻き上げてリング状の「単管」を製作。C棟で複数の単管を周長溶接によりつなぎ、モノパイルを形づくる。出来上がったモノパイルは塗装工程などを経て、最後は多軸台車で出荷バースまで運び輸送船で出荷する。  製造工程のほとんどを自動化しており「いわゆる職人技は必要ない」(上野所長)が、機械の扱いには習熟を要するという。部材にはQRコードを貼り付けており、作業員がAR(拡張現実)グラスによって部材情報を確認しながら作業できる仕組みだ。公開したモックアップは最大直径9・7メートル、長さ58メートル、重さ1100トンのサイズ。最も需要が見込まれる15メガワット級風車を想定している。  「一番重要な技術は溶接」と上野所長。モノパイル1本当たりの溶接箇所は距離にして計1キロ以上。管の内外から繰り返し溶接を重ねるため、延べではフルマラソン相当に達する。溶接に欠陥があると、補修のために構内に巨大構造物が滞留してしまう。そこで工場建設と並行し、厚い鋼板を効率良く溶接する方法を開発。母材の間に設ける溝「開先」を狭めるなど、ほぼ欠陥を出さない高品質な溶接プロセスを導入した。  上野所長は先行する欧州に対し、日本は「15年分ほど経験に差がある。われわれは後発で、『たわみ』対策などやってみないと分からない課題が多い」と明かす。近年は中国製が欧州市場でもシェアを伸ばしており、「脅威」との認識も示した。一方で海外製に比べ、納入時期を調整しやすく輸送費も抑えられる国産品のメリットを強調する。日本唯一のモノパイル工場として「信頼を得られる『日本品質』を打ち出していきたい」と意気込む。  JFEホールディングスの寺畑雅史代表取締役副社長は6日に開いた25年4~12月期決算会見で、洋上風力発電の発注遅れを踏まえた上で「実際の受注に結び付くと見込む」との見通しを述べた。年間20万トンの国内需要を想定し、10万トン程度の受注を目指す方針だ。 from...

中部整備局新丸山ダム工事と大林組/堤体打設へケーブルクレーン自律運転の実証実験

 中部地方整備局新丸山ダム工事事務所と大林組・大本組・市川工務店JVは20日、施工中の新丸山ダム(右岸・岐阜県八百津町八百津、左岸・御嵩町小和沢)で、コンクリート打設のケーブルクレーン自律運転の実証実験を公開した。ローカル5Gの高速通信環境やセンサーを活用し、揺動を制御しながら運搬容器(バケット)の移動や材料の放出を行った。今春、堤体打設に着手する予定で、段階的にDX技術を導入。最終的には締め固めを行う建設機械とも連動し、一気通貫の自律型コンクリート打設の実現を目指す。  あいさつで同工事事務所の松原克彦副所長は「生産性、安全性の向上を目指して施工している。土木の現場でDXが進んでいることを伝えたい」、大林組の渋谷仁執行役員ロボティクス生産本部長は「重要なのは継続的に技術開発を進め、進化・高度化させること。国土交通省と協力し、未来の現場に一歩一歩近づきたい」と話した。  同ダムのコンクリート打設量は約130万立方メートル。運搬は、18トンつりの弧動式片側走行ケーブルクレーン2基で行う。右岸側にコンクリート製造設備やクレーン固定塔があり、バケットの発進地となる。左右岸の径間は537メートル。揚程は160メートル。  バケットは谷を渡る際、加減速で大きく横振れする。コンクリート放出時も荷重が抜けて跳ね上がり、安全面や材料の混ざり具合など品質面に影響を及ぼす。従来のオペレーター操作でこれらに対応するためには、放出地点の合図者との連携や振れを打ち消す操作など熟練した技術が必要。長時間、極度の緊張状態の作業が求められるとともに、ヒューマンエラーの課題もある。  自律運転では、ケーブルからバケットをつり下げるトロリ・フックに設置したセンサーが振れ幅や位置情報、残量を検出。システムが振れや跳ね上がりを相殺する動作を自動で加えて制御する。実験では、自動でバケットが巻き上がり発進。毎分400メートルのスピードで水平方向に移動し、左岸側に向かった。目標地点との距離を逆算しながら減速・巻き下げし、到達後に材料を放出。再度巻き上がり、右岸側に戻ってきた。一連の動作は揺動を抑制しながらスムーズに行われた。1往復の時間は3分ほど。  大林組はこれまでも同現場で、複数建機の自律運転の連携など、DX技術の実証実験に取り組んできた。今後着手する打設では、バケットの自動運搬、自律放出、放出位置の自律修正と段階的にシステムを運用。最終的には打設機械のバイバックなどとも連携し、全機械作業の自律運転を目指す。  新丸山ダムの建設では、既存の丸山ダム下流側に新たな堤体を構築する。堤高は118メートル、堤頂長は340メートル。洪水調節容量は7200万立方メートルに増強する。 from...

日建連/技能者賃金行き渡りへ会員に対応要請、設計労務単価引き上げ受け

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は国土交通省の公共工事設計労務単価が13年連続で引き上げられるのを受け、技能労働者の賃金引き上げに向けた取り組みをさらに進める。21日に開いた理事会で、会員企業に対し労務単価の上昇を踏まえた下請契約を結ぶなど3項目を要請することを決め、会長名で会員各社に通知した。理事会後に東京都内で会見した宮本会長は「適切な水準の労務賃金が技能者に確実に行き渡る努力を続けていく」と力を込めた。  会員企業に要請する取り組みは▽技能労働者の賃上げについておおむね6%の上昇を目標にする下請契約の締結▽技能労働者の適切な賃金支払いの徹底▽適正な受注活動の徹底-の3項目。日建連は例年、労務単価の発表を受けて趣旨に沿った取り組みの展開を会員企業に通知している。今回は、1次下請に対し労務単価の上昇分が賃金として確実に支払われるよう要請するなど、より強調した表現に改めた。  おおむね6%の上昇を目標とする下請契約の締結では「労務費見積もり尊重宣言」の運用に当たり、おおむね6%の上昇を目標とする趣旨に沿う適切な労務費を内訳明示した見積書の提出要請を徹底する。適切な賃金支払いの徹底では、適切な賃金の支払いを1次下請に確実に要請し、さらに2次以下の下請に対しても適切な賃金が支払われるよう確実に依頼する。適正な受注活動では適正価格での受注を徹底する。  14日に首相官邸で開かれた石破茂首相らとの車座対話には、日建連の宮本会長をはじめ主要建設団体の首脳が参加。民間工事も含め技能者の賃金について「おおむね6%の上昇」を目標とする申し合わせがあり、石破首相からも技能労働者の賃上げへ取り組み推進で要請があった。  宮本会長は「全業種に先駆けて建設業を取り上げてもらった。石破首相には、建設業に若い人が入らないという危機感を持ってもらえている」と車座対話での手応えを語った。 from...

東京都/インフラ整備にデジタル技術の導入拡大、ロードマップを策定

 東京都はインフラ整備へのデジタル技術の導入拡大に向けたロードマップを作成した。計画、設計、施工、維持管理の四つのフェーズで最新技術を段階的に適用する。設計フェーズではAIチャットボットを導入するほか、BIM/CIMを設計で円滑に活用する。施工フェーズではICT施工の対象工事を広げる。  20日に都庁で開いた技術会議でロードマップを示した。設計や施工など各段階で先端技術を活用することで、今後増大するインフラの更新などに対応する。ロードマップではデジタル技術を円滑に導入するため、それぞれのフェーズを3ステップに細分化した。技術革新が加速化する中、可能な限り前倒しで取り組むため、目標年次は定めなかった。  計画フェーズでは3Dデータの活用を推進する。まずは主要構造物で3Dデータを標準化し、その後、全ての構造物にも対応する。測量にはドローンを利用。当初は手動操作だが、徐々に自律飛行へと移行する。取得した点群データの精度向上にも取り組む。  設計フェーズではAIを積極的に使う。チャットボットだけでなく積算にも導入し、自動化を図る。施工フェーズは工事情報共有システムを全案件で採用。遠隔臨場はまず工事の一場面で採用し、最終的に全場面で活用できる体制を構築する。  維持管理フェーズでは、ドローンなどを使った点検を進める。自動化に向け試行や一部導入した後に本格導入する。構造物の劣化に早期に対応するため、修繕箇所の自動検出システムの構築にも取り組む。まずは基盤システムを作り、試行を経て本格適用する。  働き方改革促進に向けたロードマップも作成した。建設キャリアアップシステム(CCUS)は活用状況を確認・検証した上で方向性を検討する。工事書類は削減を加速するとともに、簡素化やデジタル化も推し進める。工事書類に代わるシステムも構築する。適切な設計変更や週休2日制確保工事などは継続して取り組む。 from...

防衛施設強靱化推進協会/防衛省と初の意見交換終了、制度・要件など協議継続で一致

 防衛施設強靱化推進協会(乘京正弘会長)は、防衛省と行ってきた2024年度意見交換会の全日程を終えた。4回の会合に延べ339社、536人が参加。ECI方式をはじめとする入札契約制度や、工期設定を含む働き方改革などについて幅広く議論。入札参加を促す取り組みなどについて引き続き協議していくことで一致するとともに、工事・業務の制度や要件などに関する検討を双方が進めることを確認した。=2面に意見交換の詳細  意見交換会は24年9月26日の第1回から2月6日の第4回まで実施。政府が防衛施設整備を推進する中、整備や維持管理を的確に行い、双方の理解を促進しようと協会から実施を求め、初めて行われた。協会からはゼネコンや設備会社、建設コンサルタント、資機材メーカーなどの会員、支部会員とが参加。現場判断の決定のある実務レベルの担当者が主体となった。  協会は契約制度・契約手続き、同省が多くの発注を計画するECI方式、建設工事、調査・設計・監理業務についてさまざまな要望を出した。防衛省の回答を受け、工事、業務それぞれの領域で意見交換した。  工事関係は、入札手続きの期間延長や提案資料の簡素化、公告時期の平準化などを要望。同省は見積活用方式の見積提出期限や技術提案書作成期間などの延長を検討し、25年度の入札に適用する考えを示した。ECI案件の説明会や駐屯地・基地の見学会を開くことも明らかにした。  業務関係のうち、技術者の同種・類似実績は、協会が要件の緩和を要請。同省は経験豊富な技術者が未経験と同列で扱われることへの意見提出を提案し、協会は契約制度委員会で評価の在り方とともに検討することにした。部分払いの検討なども進める。同省は物価下落時のスライド条項の適用について慎重に検討する考えなども示した。  協会は初の意見交換会について「ゼロ回答がなく、有益だった」(幹部)と評価。同省は「入札に参加してもらえないのが一番よくない」とし、制度変更などに前向きに対応する意向を示したという。意見交換会は25年度も行う方針。協会は契約制度、企画などの各委員会で対応を検討する。 from...

国交省/道路陥没事故対策検討委が初会合、管理の在り方など論点議論

 埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け下水管路維持管理の在り方などを検討する国土交通省の有識者委員会が21日、東京・霞が関の同省で初会合を開いた=写真。委員会では大規模な下水道の点検手法の在り方やリスク情報の共有方法、施設更新・維持管理制度の在り方などを論点に議論。春に中間取りまとめ、夏に最終取りまとめを行う。  中野洋昌国交相は冒頭、「今回の事故を教訓にインフラメンテナンスを再建し、二度とこのような事故を起こしてはならないという強い決意を持って対策を講じていきたい」と述べた。  「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」は都市工学や下水道、地盤など各分野の専門家ら12人で構成。委員長は家田仁政策研究大学院大学教授が務める。  初会合では下水道など「大規模な道路陥没事故を引き起こす可能性がある地下管路」を対象に論点を整理。▽重点的に点検する対象や頻度、技術など点検の在り方▽道路管理者などとのリスク情報の共有の在り方▽事故発生時の対応方法▽今後の施設維持管理更新や再構築とそれを支える制度の在り方-などを議論する。  家田氏は「120万人が影響を受けるのは災害なら激甚災害に指定されるほどの重大な事態。中野大臣の強い決意を伺い、われわれ委員も身の引き締まる思いだ」と述べた。その上で「インフラマネジメントの状態は決して万全でないのが実情。関係省庁挙げて努力が進むことを期待したい」と述べ、国を挙げた取り組みを求めた。 from...

MM21中央地区60・61街区/SPCと横浜市が土地売買契約締結

 ケン・コーポレーションら4社が設立したMM60・61特定目的会社(SPC)は21日、横浜市と「みなとみらい21中央地区60・61街区」の土地売買契約を締結したと発表した。締結日は20日付。1月31日には市と同街区に関する基本計画協定を締結している。売買契約を結んだことで、SPCが同街区の開発事業者になった。26階建てと13階建て2棟総延べ15万6000平方メートル規模の学校、ホテル、オフィス、店舗など複合施設を建設する計画。2026年3月にも着工し、29年2月の竣工を目指す。  構成企業はSMFLみらいパートナーズ、鹿島、岩崎学園。市が23年4月から公募を行い、24年2月に開発予定者に選定した。所在地は西区みなとみらい6の2の1ほか。敷地面積は2万3129平方メートル。土地売却価格は220億4163万7695円(公募価格は214億4310万4440円)だった。  計画によると西棟はS造地下1階地上13階建て延べ約2万5000平方メートル。用途は学校。東棟はS造地下1階地上26階建て延べ約13万1000平方メートル。用途は事務所、店舗、ミュージアム、ホテル。西棟は28年8月、東棟は29年2月の竣工を予定している。用途別に建物を分けることで生まれたオープンスペースを回廊やデッキでつなぎ、連続性や回遊性でにぎわいを創出する配置計画。  同区画はMM21地区で最後の大規模市有地であり、市は地区全体の開発の総仕上げとなる重要な街区と位置付けている。MM21地区街区開発の進捗率は約98・6%(24年4月1日現在)となる。 from...

若築建設ら/クレーン作業のAI監視システム開発、作業員とつり荷の離隔確保

 若築建設らは、クレーン作業時につり荷と作業員の接近を警戒するシステムを開発した。AI画像認識技術を活用して、作業員とつり荷の外形を同時に認識するとともに、つり荷の外形と作業員の離隔を算出する。常時監視でき、離隔が事前に設定した安全距離を下回る場合、クレーンのオペレーターと作業員へ警報を発信。作業員とつり荷の離隔を確実に確保でき、安全性確保と作業効率を両立する。クレーン作業時の災害を防止する。  新システム「WIT 3rdEYE(ウィットサードアイ)」は、インフラ向けロボットの開発などを手掛けるイクシス(川崎市幸区、山崎文敬代表取締役、狩野高志代表取締役)との共同開発。▽作業員認識▽つり荷形状認識▽作業員とつり荷の隔離算出▽合図者からの信号受信▽作業指示表示と警報発信-の五つの機能を備える。  合図者からの荷物つり上げ開始の指示と、つり荷移動中での停止の指示を合図者専用のリモコンを通じて伝達するシステムも搭載した。  クレーン操縦席にモニターを設置し、人物の接近状況と合図者信号に応じて操作可否を3色で表示。設定離隔内に作業員が侵入した場合、作業員が装着している腕時計型デバイスを振動させることで危険を知らせる。合図者の確認機能を組み合わせることで、オペレーターは安全確認を確実に行える。つり荷の形状寸法に応じて警報を出せるため安全性を向上できる。  若築建設は今後、国土交通省が推進するi-Constructionの方向性に沿う形で新システムを積極的に展開。建設現場でのDXを推進し、安全性向上に貢献する。 from...

2025年2月21日金曜日

阪神電鉄/阪神タイガースのファーム拠点完成、環境に優しい野球文化の発信拠点に

 阪神電気鉄道が兵庫県尼崎市で整備を進めてきた阪神タイガース2軍本拠地「ゼロカーボンベースボールパーク」が完成し、20日にオープン式典が開かれた。新たな2軍球場「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」や選手寮、室内練習場、一般用野球場などで構成する。設計・監理を久米設計、施工を熊谷組が担当。関係者約200人を集め、環境に優しい野球文化の発信拠点の誕生を盛大に祝った。  場所は阪神電鉄大物駅東側に位置する小田南公園(杭瀬新町3、約7・4ヘクタール)。現在の鳴尾浜(兵庫県西宮市)から2軍本拠地を移転する。阪神電鉄と尼崎市が共同で、脱炭素や循環型社会に貢献する公園として再整備するプロジェクトを環境省に提案。2022年に脱炭素先行地域の選定を受けていた。  2軍野球場(RC一部S造3階建て延べ約1万1000平方メートル)のグラウンド面積は甲子園球場と同程度(両翼95メートル、中堅118メートル)を確保。LEDのナイター照明灯を6基設置し、観客席は約3600席を備える。阪神なんば線を挟んだ南側敷地に室内練習場(S造平屋6168平方メートル)と選手寮「虎風荘」(S造3階建て延べ3704平方メートル)を整備した。  脱炭素化の取り組みでは、ナイター試合を開催する野球場の年間電力使用量の80%強相当を太陽光発電と蓄電池で賄い、不足分を尼崎市のクリーンセンターの発電でカバーする。  竣工式で、阪神電鉄の久須勇介社長は「この施設が沿線活性化の起爆剤になると確信している。今後も市と連携し期待に応えたい」、阪神タイガースの秦雅夫会長が「球団創設90周年の節目に素晴らしい施設が完成し、大変感慨深い」と話した。尼崎市の松本眞市長は「環境貢献のシンボルとして多くの来場者でにぎわってほしい」と述べ、来賓の小林史明環境副大臣は「尼崎市と阪神電鉄の先進的な取り組みに敬意を表する」と語った。  続いて久須社長が久米設計の藤澤進社長と熊谷組の上田真社長に感謝状を贈呈。藤澤社長は「基本構想段階から参画し、6年を経てきょうを迎えることができた。この場所から将来のスター選手が巣立つのが楽しみだ」、上田社長は「施設を快適に利用していただくため、万全体制でアフターケアに努めていく」と述べた。  オープニングセレモニーで関係者代表らがテープカットを行い、無事完成と新たな門出を祝った。 from...

土木学会/24年度インフラメンテ賞の受賞者決定、5部門43件に栄誉

 土木学会(佐々木葉会長)は20日、2024年度「インフラメンテナンス賞」の受賞者を発表した。同賞はインフラ維持管理で優れたプロジェクトや先進的な技術、功績のあった個人や企業・団体、優秀な論文などを顕彰。21年度に創設し今回で4回目となる。  応募があった80件・編の中から5部門で43件・編を決定した。27日に東京都新宿区の同学会講堂で表彰式を開く。  受賞の内訳は▽プロジェクト賞6件▽チャレンジ賞9件▽エキスパート賞9件▽マイスター賞9▽優秀論文賞10編。  受賞件名(論文名)と受賞者は次の通り(敬称略)。  【プロジェクト賞】  ▽カチプール、メグナ並びにグムティ橋第2橋梁建設および既設橋改修工事=バングラデシュ人民共和国交通橋梁省国道・道路局、オリエンタルコンサルタンツグローバル、日本構造橋梁研究所、大日本ダイヤコンサルタント、片平インターナショナル、大林組、清水建設、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム  ▽線路データのプラットフォーム構築によるメンテナンス連携=日本線路技術、小田急電鉄、東急電鉄、東京メトロ、JR東日本  ▽名神高速道路における日本初の集中工事を利用した床版取替リニューアルプロジェクト=中日本高速道路名古屋支社、鹿島  ▽ベトナム技能者育成学校=日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会  ▽九州自動車道宝満川橋床版取替工事プロジェクト=大林組・大本組JV  ▽中空床版全面打換え工事の品質確保・工程管理に向けた取り組み=東日本高速道路北海道支社、戸田建設、ネクスコ・メンテナンス北海道  【チャレンジ賞】  ▽橋梁実モデルと橋梁メンテナンスVRを活用した橋梁メンテナンスの技術力向上の取組=九州地方整備局九州技術事務所  ▽住民主体型橋梁セルフメンテナンスを通じた女性技術者による次世代育成・指導者育成の取り組み=土木技術者女性の会、茨城県建設業協会建女ひばり会、石岡市道路建設課  ▽AI活用等による主要線路設備全ての劣化状態自動判定の実現=JR東日本、日本線路技術  ▽鉄筋コンクリート内部ひび割れ検出システムによる床版調査の取り組み=技建開発  ▽ポリカーボネート樹脂製透光板の飛散防止材の開発=首都高速道路会社  ▽「福国橋守マイスター会」による道路インフラメンテナンスの取組=福岡国道事務所、福国橋守マイスター会  ▽ひび割れ進行評価技術を用いた橋梁維持管理の高度化・効率化を目指す取り組み=多摩市都市整備部道路交通課、八千代エンジニヤリング、ニコン・トリンブル  ▽メンテナンスフリーと施工の効率化を目的とした補修工法の開発と導入=JR東日本東京土木設備技術センター、デンカ  ▽道路走行可能な新幹線・在来線両用のレール探傷車の開発と運用=JR東日本、JR四国、JR九州、日本線路技術  【エキスパート賞】  ▽稲田勉▽太田哲司▽黒谷努▽坂上悟▽田上敏博▽並木宏徳▽林良範▽堀雄一郎▽山口敏久  【マイスター賞】  ▽藍郷一博▽植野芳彦▽加賀山泰一▽川村昭宣▽葛目和宏▽時田英夫▽中田雅博▽横田聖哉▽吉田好孝  【優秀論文賞】  ▽中小河川に架かる橋梁を対象とした効率的な定期点検への取り組み=後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、藤森竣平(同)、近藤冬東(同)、岩波光保(東京科学大学)千々和伸浩(同)、津野和宏(国士館大学)  ▽橋梁定期点検の義務化をチャンスと捉えた定期点検実務のスパイラルアップとコスト縮減=木下義昭(玉名市役所建設部)  ▽空港舗装動態観測への干渉SAR解析等の新技術導入の可能性及び具体の方策の検討=山田凱登(沿岸技術研究センター)、遠藤敏雄(同)、森弘継(関東地方整備局東京空港整備事務所)、三浦幸治(同)、小野憲司(京都大学)  ▽動ひずみ計測による疲労き裂の発生原因推定とLPWAを活用した対策効果の検証=三森章太(首都高技術)、木之本剛(首都高速道路会社)、日和裕介(首都高技術)、和田尚人(同)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽地方公共団体における橋梁の新しい再評価方法の有効性・実用性に関する検討=齋藤和也(IHI)、塩永亮介(同)、津田誠(石川工業高等専門学校)、廣井幸夫(IHI)  ▽橋梁長寿命化修繕計画における既存橋梁の撤去および継続利用の評価手法に関する検討=尾場瀬美綺(茨城大学)、原田隆郎(同)、大崎康弘(茨城県土木部)大久保克紀(同)  ▽ゴム引布製起伏堰に用いられるゴム引布の疲労破壊に関する実験的検討=川邉翔平(農業・食品産業技術総合研究機構)  ▽超音波法によるウェブ厚推定を利用したPCポストテンションT桁橋のグラウト充填調査=大野健太郎(東京都立大学)、岩野聡史(リック技術研究所)、後藤幹尚(大田区都市基盤整備部)、岩波光保(東京科学大学)  ▽既設ガードレール支柱の鉄筋コンクリート部材を用いた補強工法の提案=林和彦(香川高等専門学校)、飛鷹政亘(丸治コンクリート工業所)酒井凌(カンケン)、福山裕史(同)、渡井忍(マックストン)  ▽新幹線構造物の検査の省力化に向けたデータ取得・分類・蓄積に関する研究開発=栗林健一(JR東日本研究開発センター)、大島竜二(同)、佐藤保大(JR東日本)、久田真(東北大学)、皆川浩(同)、宮本慎太郎(同)。 from...

内閣府/PFI事業のスライド条項、標準契約に記載検討

 内閣府はPFI事業の物価変動対策として、スライド条項の適用を巡る検討を進める。PFI法に基づく直近の事業を調査したところ、47件は全体・単品・インフレの各スライド条項とも規定されていたが、いずれの規定もないのが57件あった。受注者からは、条項の運用のばらつきを指摘する意見も出ており、契約のひな型となる「PFI標準契約1」に全体スライドの記載を追加することを検討するとともに、適用の状況を注視していく。  民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)が158事業を対象に行った調査によると、全体・単品・インフレの各スライド条項のうち、全体は70件、単品は79件、インフレは64件で規定があった。規定の有無はさまざまで、緩やかな価格水準の変動に対応する全体スライドだけが規定されていたり、特定資材の急激な価格変動に対応する単品スライドや、急激な価格水準の変動に多応するインフレスライドの規定がない事業が少なくなかった。  工事などへの物価変動の影響が大きく、日本建設業連合会は2024年6月に国や地方自治体でスライド条項の適用にばらつきが見られるとも指摘した。その上でスライド条項の適用をPFI事業の関係ガイドラインに明記するとともに、すべての発注者に適用するよう申し入れていた。  スライド条項を巡っては、PFIのような官民連携の事業領域に物価高騰の影響が出ていることで、川崎市は3日公表の「民間活用(川崎版PPP)推進方針」に、通常範囲を超える物価変動の場合には市と民間事業者とで「事業手法や性質に応じて適切にリスクを分担する」と明記。物価変動に対する趣旨を明確にするのが狙いで、事業継続の必要な措置という認識も示した。一方で「通常の範囲内のインフレ・デフレについては民間事業者のリスク」とした。  PFI標準契約1は全体スライドの規定そのものがなく、単品スライドやインフレスライドの官民負担の割合を規定していない。同推進室は公共工事標準請負契約約款や国の直轄工事の規定を参考に、全体スライドの追加を検討する考え。受発注者の契約変更協議が活発になっていることで、実態を見た物価変動対策を進める。 from...

工場探訪/大林道路大分センターアスコン(大分市)、工場全体をDX・自動化

 大林道路が次世代モデルのアスファルト合材工場と位置付ける「大分センターアスコン」(大分市)。田中鉄工(佐賀県基山町、末吉文晴社長)と開発した製品事業運営を効率化、最適化するさまざまなデジタル(DX)ツールの連携により、施工現場と運搬車両の情報をひも付けた製造のプロセスの自動化による出荷を実現している。材料を貯蔵してプラント本体に供給するまでのルートも設備化し、場内で材料供給するホイールローダーの稼働も不要とした。将来的に工場従事者の半減を目指す。  大分センターアスコンは年間10万トンを製造、出荷する大林道路にとって主力工場の一つ。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2024年6月に公表した指針を踏まえ、製造部門の業務DX化や設備の自動化に着目して最適化する「スマートマニュファクチャリングBIツール」を先行導入した。  同ツールは統合API連携サーバーやデータ保存ストレージを介し▽ウェブから工事情報を収集する受注管理▽ダンプ台数を自動算出する配車管理▽製造を自動化する出荷管理▽製造配合と出荷情報を整合させる製造管理▽製造・現場双方が車両情報を把握する運行管理▽契約情報と施工情報を統合する品質管理-などの各システムを連携させる仕組み。受注管理や出荷管理、製造管理で先行しており、残るシステムは25年度にも開発する。  時間外労働上限規制に対応して働き方改革を推進する必要があり、原材料高騰分の価格転嫁が思うように進まずコスト削減や収益性の向上が急務だったことも背景にある。そこで実現性の高いシステムから順次導入していった。  その一つが施工現場と運搬車両の情報をひも付けて製造プロセスを自動化する出荷管理システム。さまざまなDXツールでダンプの入場や受け付け、場内誘導、合材の自動積み込み、出荷伝票の受け渡し、退場までを運転手が降車せずに完結するドライブスルーのシステムを導入した。  場内での車両渋滞緩和や歩行による事故防止だけでなく、事務担当者の作業効率も向上。夜間の少量出荷を無人で行うことも可能となった。同システムによる製造情報と配合情報の一元管理に基づく出荷によって、適切な品質確保によるコンプライアンス強化にもつなげたいという。  材料の貯蔵設備として24年11月末から本格運用する新材コルゲートサイロ8基(貯蔵量1基当たり280トン)と再生骨材貯蔵サイロ4基(同120トン)も生産性向上に貢献している。いずれも雨水などの浸水による含水比率上昇を抑制。プラント本体への供給ルートも設備化、自動化しており、アスファルト合材の製造プロセスにおいて場内でのホイールローダー稼働がなくなり人件費や燃料費のコストダウン、二酸化炭素(CO2)排出量の削減も実現した。  同社によると、再生骨材貯蔵サイロは世界初で初導入した。サイロ内で石や砂など材料同士の固まりを防ぐブロッキング対策用の設備として、材料を入れ替えられる循環路を開発し採用している。  同社は大分工場での先行事例を全国に順次広げていく考えだ。当面は品質確保に向け合材の配合管理を徹底するシステム強化に万全を期す。担当者は「将来的にはAIも取り入れ、工場運営のさらなる効率化を目指す」と展望する。 from...

関東整備局/17号北本電線共同溝PFIで見積活用、NTTインフラネットグループに

 国土交通省はPFI事業の入札不調・不落対策に「見積活用方式」を取り入れた。関東地方整備局が「国道17号北本(5)電線共同溝PFI事業」の一般競争入札(WTO対象、総合評価方式)を開札し、23億7518万2529円(税込み、以下同)でNTTインフラネットを代表とするグループが落札した。不調・不落対策を目的に、入札者が提出した見積書の内容を予定価格に反映する見積活用方式を、同局が実施する工事を伴うPFI事業で初めて採用。3月の事業契約締結を目指す。  関東整備局は2024年1月に入札手続きした「国道20号西府町・谷保電線共同溝PFI事業」で発生した入札不調を踏まえ、見積活用方式を採用した。入札手続きに当たっては、電線共同溝事業への参画意欲などを確認するための市場調査を実施。標準歩掛かりではなく見積活用をした方が望ましいと考えられる工種も聴取した。市場調査の結果や現場付近の工事を受注した施工会社へのヒアリングも行った。  全46工種のうち入札者に提出を求める見積書の内容として、特殊部設置の▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)。管路部設置の▽管路工(管路部)▽縁石工(復旧)▽側溝工(同)▽路側防護柵工(同)▽構造物取り壊し工-の8工種を選定。残りを標準歩掛かりで積算し予定価格を設定した。  落札したのはNTTインフラネットとミライト・ワン、オリエンタルコンサルタンツで構成するグループ。総合評価では価格点300点と内容点700点の合計1000点を満点として審査。その結果、同グループは763・75点(内容点463・75点、価格点300円)だった。  事業区間は埼玉県北本市本宿5~同宮内7の約800メートル。事業方式はBTO(建設・移管・運営)方式。電線共同溝と道路、道路付属物の調査設計、工事、工事管理と電線共同溝部分維持管理を一括して任せる。2034年3月の施設完成と引き渡しを目指す。契約期間は44年までの20年間。  電線共同溝整備は災害時の泥閉塞(へいそく)解消や円滑な交通確保を目的に行う。事業スピードのアップや財政負担の平準化を図るため、同局はPFI手法で整備を進める。 from...

竹中工務店/量子コンピューターで教育施設整備計画最適化、短時間で要望反映しやすく

 竹中工務店は、量子コンピューターを用いた教育施設整備計画の最適化技術を開発した。大学や高校、専門学校といった校舎などの新築や改修を想定し、複数のカリキュラム(授業と教室の最適な組み合わせ)実施案を短時間で算出、比較検討できるようにした。その結果を踏まえ最適な施設整備計画案を効率的に作成。発注者の要望をより的確に反映しやすい計画立案も可能になった。  多数の中から高速で最適な組み合わせを探し出す量子コンピューターの計算方式の一つ、量子アニーリング技術を活用。カリキュラム案を1案当たり10時間程度で作成する。  同社によると、教育施設のカリキュラム実施案は施設構成や学生数、教員数など複数の要因を考慮する必要がある。1学期を通して500以上の授業が行われるような大規模な大学の場合、一つの実施案作成に数カ月かかる。  新技術を用いた計画立案の手順は▽教育施設の現状やカリキュラム実施上の制約を確認▽教育施設から協議可能な教員の時間帯や授業計画、教室数・定員などの施設情報を入手▽教室数や定員について施設構成案を考察▽教育施設から入手したデータと竹中工務店が設定した施設構成案データを整理し、プログラムで読み取れる形式に変換▽教育施設固有の制約に対応するよう、最適な施設構成案を算出するプログラムを修正、テスト▽プログラムを実行して最適な施設構成案を算出▽算出した結果を教育施設に確認してもらいフィードバックを受けてプログラムを修正、再実行▽最終的な施設構成案を基に整備計画立案-となる。  複数のカリキュラム実施案を一つの最適案に絞る際、二つ以上の必修授業が同日に行われず教員や学生の授業間移動が減ることを評価。教室の稼働率が高いかどうかも考慮する。  同社は個別の施設整備だけでなくキャンパス全体の運用も視野に入れ、より効率的で精度の高い提案ツールとして活用していく。 from...

2025年2月20日木曜日

スコープ/茨城大学と日立建機が教育や研究開発で連携、地域発展にも貢献

 日立建機が教育・研究機関との連携を加速する。茨城大学と人材育成や研究開発などで相互協力する包括連携協定を3日に締結。共同研究をはじめさまざまな連携を通じ、顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向け新たな技術を探索する。同社が教育・研究機関と包括連携協定を結ぶのは初めて。茨城県内に拠点を置く企業と大学のオープンイノベーションにより、社会価値の創出や地域の発展に貢献する。  両者は同日、水戸市の茨城大水戸キャンパスで調印式を開き、先崎正文社長と太田寛行学長が協定書に署名した。新たな価値創造のオープンイノベーションに取り組む同社と、ステークホルダーとの共創による教育や研究を進める同大学の方向性が一致した形だ。  先崎社長は建機オペレーターの減少や高齢化、環境負荷の低減、安全性向上など業界を取り巻く課題が「複雑、高度化している」と指摘。その上で建機の開発に必要な技術分野が電気電子や情報通信、ソフトウエアへと広がっていることを踏まえ「幅広い分野を総合的に扱うエンジニアの育成が急務だ」との考えを示した。  共同研究などさまざまに連携し、「われわれが目指す顧客に寄り添う革新的なソリューションの創出に向けた新たな技術探索を図る」と協定締結の狙いを説明。「茨城県に立地するわれわれが緊密に連携、協力を図ることにより、その成果を地域社会の発展へと還元する」と述べた。  茨城大は工学部と大学院理工学研究科で、地域産業に貢献する製造系の高度ITエンジニアの育成に力を注いでいる。地域企業と協力して機械や電気、電子、情報工学といった分野をまたぐ実践的カリキュラムで教育を展開。2006年からは「サステイナビリティ学」の研究や教育に取り組んでいる。  太田学長は「このタイミングで、サーキュラーエコノミー(循環経済)やカーボンニュートラル(CN)への対応を強化している日立建機と協定を結ぶことで、社会実装、社会還元の道を得られた思いだ」と今後の取り組みを展望した。  同大学は3年次に原則、必修科目を開講せず、特に学外での主体的な学びを促す期間「iOP(internship Off-campus Program)クオーター」を設けている。太田学長は「今は4年間キャンパスの中で学ぶ時代ではない。これからの大学は社会と接しながら、学生が自己実現を図る場を提供しなければならない。そういう意味で、日立建機は良いパートナーだ」との期待感を示した。  日立建機は現在、デジタル技術を含む幅広い分野を総合的に扱っており、新たな価値を創造するためのエンジニア育成に注力している。その一環で産学問わずさまざまなパートナーとオープンイノベーションの推進にも積極的に取り組んでいる。  今回の協定締結を機に、大学院修士1年を対象にした企業提携講座を25年度にも開設する。同社社員が講師となり、理工学部の学生にものづくりの基礎知識や安全、品質保証などの考え方などを講義。ものづくりに関わる企業が求める人材を育成する。土浦工場(茨城県土浦市)でインターンシップの受け入れも行う。  共同研究も始まる。研究内容は未定だが、先崎社長と太田学長は「持続可能な地球環境の構築」を研究テーマに据える。  太田学長は新しい学問として「気候変動科学」の確立を目指していると説明。「二酸化炭素(CO2)を固定化し燃料にしたり、水田で発生するメタンを活用したりする。企業がそれらを商品やサービスにどう生かすか考えることも大切。(気候変動に対し)緩和策と適応策を組み合わせた社会モデルを考える上で、建設現場のサステナビリティに取り組む日立建機のような企業との連携は重要だ」と語った。  先崎社長は「お客さまが求めるサステナブルな環境づくりをサポートする。そのため広い視野を持つ大学と連携し、オープンな関係で研究ができることはわれわれにとってもプラスになる」との考えを示した。  日立建機は企業のPRを目的に、茨城大の水戸キャンパスと日立キャンパス(茨城県日立市)にある施設のネーミングライツ(施設命名権)の取得も予定する。協定を結んだ3日、先崎社長が愛称を付ける予定の水戸キャンパスの中庭を視察。「学生が集まる動線の中にあるので、カットモデルの展示や電動ショベルを使った実演などいろいろなイベントを展開してみたい」と展望を語った。 from...

北海道企業局/経営戦略改定案、工水建設改良費に5年で273億円

 北海道企業局は、中長期的な経営目標や投資・財政計画を示す経営戦略の改定案をまとめた。2025~29年度の5カ年の建設改良費は電気事業で約98億円を見込み、岩尾内発電所の大規模改修などを実施する。室蘭、苫小牧、石狩合わせた工業用水道事業は24年11月に示した原案より約28億円増の273億円を見込み、苫小牧で新規ユーザー配水管敷設、石狩で水管橋耐震補強を盛り込んだ。経営戦略は本年度内の成案化を目指す。  現行の経営戦略は20~29年度を計画期間とするが、20年度の計画開始以降、ラピダスの次世代半導体製造工場やデータセンターの立地などを契機とした再生可能エネルギーや工業用水需要の高まり、資材費や人件費の高騰、金利の上昇による経営コストの増大、ゼロカーボンの実現などの社会的要請の高まりなど、経営環境に大きな変化が生じたため、中間年となる本年度に内容を見直す。  中長期の投資計画を見ると、電気事業では20年度から40年間の建設改良費に約744億円を試算。主な事業では計画期間内に岩尾内発電所大規模改修(21~28年度)に約67億円、ポンテシオ発電所改修(21~25年度)に約23億円を投じる計画で、25~29年度の建設改良費は約98億4500万円を見込む。このほか計画期間外の事業として、川端発電所大規模改修(31~39年度)、鷹泊発電所大規模改修(41~49年度)を計画するとともに、川端ダムと鷹泊ダムについてはダム安全性評価委員会で審議中となっており、国がダム改修を含めた老朽化対策を検討している。  工業用水道事業では、今後40年間の更新需要に室蘭工水で約160億円、苫小牧工水で約440億円、石狩工水で約60億円の総額約660億円を試算。25~29年度の建設改良費には室蘭工水が30億7600万円を投じる計画で配水管更新改修やダム放流設備耐震補強などを実施。苫小牧工水は225億6900万円で配水管更新改修や新規ユーザー配水管敷設などを計画し、25年度は約92億円、26年度は100億円超の投資を見込む。石狩工水は17億1400万円で配水管更新改修や新たに水管橋等耐震補強などに取り組む。 from...

愛媛県/東予港西条地区産業用地整備、DBで軟弱地盤対策発注2月中に入札公告

 愛媛県は、半導体や蓄電池など先端成長産業の大型投資を呼び込むため、東予港西条地区(西条市ひうち)に約30ヘクタールの大規模産業用地を整備する。県が浚渫土などによる埋め立てを進めており、産業用地として必要な軟弱地盤対策をデザインビルド(DB)方式で発注する。月内にも総合評価方式の一般競争入札を公告したい考えだ。  2025年度当初予算案に事業費29億1277万3000円を新規計上した。このうち地盤改良整備に28億6254万7000円を充てる。合わせて26年度の債務負担行為42億5628万6000円を設定した。  5000トン級の船が着岸できる水深7・5メートルの岸壁(延長130メートル)も整備する。予備設計委託費などとして3202万9000円を盛り込んだ。工業用水の配水管路を整備するための実施設計・試掘調査費1819万7000円も計上している。  進出企業は26年に公募する。用地は分割せずに一括での利用を見込む。28年度中の供用開始を見据える。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171556 via 日刊建設工業...

大成建設ら/ふるい下残さでソイルモルタル製造、最終処分量低減を実証

 大成建設と光洲産業(川崎市高津区、光田興熙社長)は、建設混合廃棄物の中間処理過程で発生する建設副産物「ふるい下残さ」をソイルモルタルの母材として有効利用する技術を確立した。建設発生土の再利用によってソイルモルタルを製造する大成建設の「TAST工法」を応用。砂質土を主体とする材料の代替としてふるい下残さ100%の再生土砂を活用し、ソイルモルタルが製造できることを室内試験や試験施工で実証した。  一般的に解体工事で発生する廃棄物はがれき類のほか木材、プラスチック、ゴムなどの有機物が混在し適切に処理することが義務付けられる。中間処理過程で再生砕石や再生資材が選別、分別された後、最終的に土が主体となる粒径2ミリ程度以下のふるい下残さが生じる。微細な異物などが混入しており再生利用が難しい。大成建設によると各地にある最終処分場は残余容量が減少傾向にあり、最終処分量の低減が課題となっている。  そこで同社らは、砂質土を主体とする建設発生土にセメントと水を混ぜてソイルモルタルを製造するTAST工法に着目。代替材としてふるい下残さをセメントと混合し固化することにより、有害物質の溶出抑制と所定強度の確保を実現した。  このほど横浜市戸塚区にある同社技術センターに建設した木造人道橋の橋台周辺空隙部を充填するため、約8トンのふるい下残さをソイルモルタルの部材として初適用した。試料の7日強度はソイルモルタルの目標品質を上回り、有害物質の溶出量も土壌環境基準値に満たしていることを実証。ふるい下残さの再生利用と最終処分量低減を実現した。 from...

2025年2月19日水曜日

回転窓/いただきますの意味

 実家から送られてきた大きな箱を開けると、地元の野菜や米が入っていた。いつも大変にありがたく、親にとっては返礼の電話でこちらの近況を聞けるのが何よりうれしいようだ▼葉物野菜を中心に軒並み値段が高くなっている。米価は顕著で、昨年に比べて倍の値を付けるスーパーも少なくない。新聞や雑誌の見出しには〈令和の米騒動〉の文字が躍る▼米価高騰は需要が供給量を上回っているのが要因とされ、昨夏の猛暑で収穫量が減少したことや国の減反政策などが影響しているという。投機目的で米をストックする業者がいるため市場に出回っていないとの指摘もあり、政府は備蓄米21万トンを3月中に放出する。これが価格低下につながるよう願いたい▼米の供給量を増やす手段として収穫期が異なる多品種栽培が挙げられる。AIで収穫適期を予測するスマート農業の推進にも期待が高まる▼就農者が減少する中、就労環境の改善や新規人材の確保などの対策が急務となっている。食卓に並ぶ食材の多くは根気強く作物を育ててきた生産者のおかげ。〈いただきます〉の言葉に込める感謝の気持ちを忘れてはいけない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171526 via 日刊建設工業...

政府/エネ基本計画、温暖化対策計画、GX戦略を閣議決定/脱炭素で経済成長推進

 政府は18日、エネルギー政策の中長期の指針となる「第7次エネルギー基本計画(第7次エネ基)」と、温室効果ガスの新しい削減目標を盛り込んだ「地球温暖化対策計画」、脱炭素化を経済成長につなげる戦略「グリーントランスフォーメーション(GX)2040ビジョン」をそれぞれ閣議決定した。ガス排出を2040年度に13年度比で73%削減する目標を設定。再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源のある地域に企業誘致を促すなどの産業政策を盛り込んでいる。  エネルギー基本計画の改定は約3年ぶり。データセンターの新増設などで電力需要が増加していくことから、第7次エネ基では再エネを最大限活用し、40年度の発電量に占める再エネ比率を23年度実績(22・9%)の倍近い4~5割程度に引き上げる。再エネは「長期安定電源化」を目指し、浮体式洋上風力やペロブスカイト太陽電池の導入などを推進する。  原発の比率は、建設中を含めた36基ほぼすべての稼働を前提に2割程度とする。再稼働は「官民を挙げて取り組む」とした。建て替えは、廃炉を決めた事業者の発電所サイト内で次世代革新炉とすることが対象。これまでの計画にあった「可能な限り依存度を低減する」の文言は削除した。温室効果ガス排出の多い火力発電は現状の約7割を3~4割に縮小する。計画案に対しては、4万件以上の一般意見が寄せられ、原発関連が多かったという。  温室効果ガスの次期削減目標(NDC)は、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑える世界目標の実現に向け、13年度比で35年度に60%減、40年度に73%減と設定。地球温暖化対策計画は、再エネや原子力を最大限活用する一方、石炭火力を次第に減らすエネルギー転換を進めるとした。住宅や半導体工場などの省エネ対策、電力需要の大きいデータセンターの効率改善、ペロブスカイト太陽電池の導入支援などを推進する。二酸化炭素(CO2)に価格を付け、企業や人の行動を変える成長志向型の「カーボンプライシング」、高度な再資源化や太陽光パネルのリサイクルを促進するような「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に取り組む。  分野別のうち、建築物では建築物省エネ法の規制を強化し、小規模建築物の省エネ基準への適合を25年度に義務化する。30年度以降に新築する建築物は、ZEB水準の省エネ性能の確保に取り組む。道路整備は総合的なCO2削減の効果を判断しつつ、環状道路などの幹線ネットワークの強化や、道路空間への再エネの導入を進めるとしている。  NDCは同日、国連気候変動枠組条約事務局に提出した。その達成を目指す「政府実行計画」には、政府の庁舎や土地に太陽光発電設備を最大限設置することや、ペロブスカイト太陽電池の導入目標を検討することが入った。新規の建築事業は「原則ZEB Oriented相当以上」とし、30年度以降はさらに高い省エネ性能を目指すこととしている。  GX2040ビジョンでは、脱炭素、経済成長、エネルギー安定供給の「同時実現」するための方向性を示した。脱炭素電源と新たな産業用地の整備を進めていく。25年通常国会に資源有効利用促進法の改正案を提出し、再生材の供給・利活用をさらに進める。GX推進法の改正案も提出し、26年度からの排出量取引制度の本格実施、28年度の化石燃料賦課金の導入への環境整備を進める。  18日の閣議後の会見で武藤容治経済産業相は、米国のトランプ大統領が化石燃料への回帰を表明していることに関し、「動向は今後も注視が必要」とした上で、「各国が脱炭素と産業競争力強化の両立に向けた取り組みを進めている。わが国もGXを着実に進めねばならない」と述べた。 from...

大林組/ホイールローダー用の後付け自動運転装置を開発

 大林組は、ホイールローダー用の後付け自動運転装置を開発した。自動運転システムのほか、3DLiDAR(ライダー)や傾斜計などのセンサー、自動運転制御盤、レバー制御装置で構成する。ホイールローダーのメーカーや機種を選ばずに取り付けられ、経験の浅い作業員でも安全な場所から簡単に動作設定できるようになっている。実証実験を行い、燃料運搬作業の自動運転や夜間作業を実現した。  ホイールローダーは作業場所の位置を確認し、運搬物の形状から効率良くすくい込みができる位置をセンサーで判断し、作業位置まで走行する。事前に設定した経路で運搬し、積み込みや投入作業を行う。今回開発した装置は、すくい込みや運搬、積み込み、投入などの作業設定を、遠隔で安全な場所から行える。帳票機能も備え、積み込みや投入の数量を管理できる。  グループ会社の大林神栖バイオマス発電(茨城県神栖市、長瀬有弘社長)が運営する大林神栖バイオマス発電所(同市、発電容量51・5メガワット)で実証実験を行った。バイオマス発電の原料となるパームヤシ殻(PKS)をすくい込み、集積場所から燃料投入口まで運搬して投入する作業を繰り返し、同発電所の安定稼働に必要な135トンを約2時間30分で投入することに成功した。暗くても感知可能なセンサーを搭載することで夜間でも日中と同様に作動することも確認できた。 from...

大阪府市/万博跡地、4ゾーンに分け開発へ/今夏にマスプラ策定

 大阪府と大阪市は大阪市此花区にある人工島・夢洲の大阪・関西万博跡地(夢洲第2期区域約50ヘクタール)を「ゲートウエイゾーン」「グローバルエンターテインメント・レクリエーションゾーン」「IR(統合型リゾート)連携ゾーン」「大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーン」の4ゾーンに分け、開発を進める方針を示した。今後、一般意見を募集した上で、今夏にマスタープランを策定。2025年度後半の開発事業者公募を目指す。  18日に「副首都推進本部(大阪府市)会議」(本部長=吉村洋文知事)の第15回会合を大阪市内で開き=写真、「夢洲第2期区域マスタープランVer.1・0」を提示し了承を得た。  コンセプトは「万博の理念を継承し、国際観光拠点形成を通じて『未来社会』を実現するまちづくり」。ゲートウエイゾーンでは商業・オフィス・宿泊施設を配置し、ナイトアクティビティの充実やイノベーション機能の導入を進める。グローバルエンターテインメント・レクリエーションゾーンでは国際的なモータースポーツ拠点やウオーターパーク、劇場・アリーナを整備し、非日常空間を創出。IR連携ゾーンではIR区域と連携し、MICE(国際的なイベント)施設やホテルを設ける。大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーンでは先端医療・国際医療・ライフサイエンス関連の機能を導入する。  まちの骨格は夢洲駅前から水辺へと続くシンボルプロムナードによる「うるおい軸」と、ゾーン内を結ぶ「にぎわい軸」で構成。道路ネットワークでは既設の観光外周道路とつながる道路を整備。IR予定地の第1区域から2、3区域まで連続した回遊性の高い歩行者空間も確保する。  マスタープラン策定では2025年日本国際博覧会協会などと協議し、大屋根リングの一部活用や静けさの森の移設・再配置などを検討する。まちの管理・運営は開発事業者が主体のエリアマネジメントを想定している。  ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーンの開発事業者は別途先行して募集する。  会合で委員からは「開発では資材高騰の影響が考えられ、事業者が柔軟に対応できる公募条件を検討してほしい」「事業者の創意工夫を生かせるよう公募の進め方を慎重に検討すべき」といった意見が挙がった。  吉村知事は「ベイエリアの広大な敷地を生かし、夢洲でしかできない圧倒的な非日常空間を創出してほしい。50~100年先を見据え大阪の新たな拠点として成長させていく」と述べた。 from...

竹中工務店/進捗管理アプリを大幅改良/新たに5機能追加・拡充

 竹中工務店と同社グループの朝日興産(大阪市中央区、宮本靖雄社長)は、建築工事の進捗実績を部屋や部位ごとに可視化するアプリケーション「位置プラス『進捗管理』」を大幅に改良した。2020年の発売から累計約200現場で導入実績がある同アプリを活用してきた社員や作業員の要望を踏まえ、管理図表をより見やすくした。今後はゼネコンやサブコンなどの販売先を拡大し、25年に約50現場、26年に約80現場で新規導入を目指す。今秋までにさらなる改良版の開発も予定している。  今回の改良版で追加・拡充した機能は▽工程の進捗線画面をブロック矢印表記に変更▽出来高集計・出力▽作業予定日管理機能の追加▽PDF登録・閲覧機能の追加▽スマートフォン向け画面の改良-の五つ。  竹中工務店によると、特に要望が多かったのは工程の進捗線画面をブロック矢印表記に変更する機能追加。従来は線分形式で各部屋や部位の完了割合のみを表示してきたが、ブロック矢印表記への変更によって一目でどの作業に問題が生じているか視覚的に把握できるようになった。  出来高集計・出力機能の追加も要望が多かった一つ。作業者が登録した進捗実績を月ごとにまとめて作業別、協力会社別にエクセルで出力する。月ごとの集計区切り(締め日)は任意に設定でき、各現場の請求タイミングに合わせた集計が可能。出来高請求時の根拠資料として用いることで事務作業を削減し、作業者にアプリへの作業完了登録を促す効果も期待する。  これらの追加機能は特許を出願している。同社は進捗図や進捗線を印刷して現場に貼りたいという要望も踏まえ、今夏にも簡易にPDF化して印刷できる機能を追加する予定。今秋には進捗表をより分かりやすく把握できる機能の改良も視野に入れる。 from...

2025年2月18日火曜日

スコープ/新大宮上尾道路整備で大深度に橋梁基礎構築、施工は清水建設

 国土交通省関東地方整備局が埼玉県内で整備を進めている高架式の自動車専用道路「新大宮上尾道路」のうち、施工条件が厳しい区間で工事の最盛期を迎えている。国道16、17号が交差する「宮前地区」(さいたま市西区)は施工空間が十分確保できないため、ニューマチックケーソン工法を採用して橋梁の基礎工事を進めている。大深度に基礎を構築する工事に挑む清水建設の現場を取材した。  新大宮上尾道路は国道17号で発生している慢性的な交通渋滞の緩和と県央地域の発展を目的に、さいたま市中央区~鴻巣市を結ぶ延長約25・1キロの自動車専用道路として計画されている。中央区円阿弥~上尾市堤崎(与野~上尾南)の約8キロは事業化され、国道17号の上空を通る高架構造を計画している。事業主体は関東整備局と首都高速道路会社の2者となっている。  道路工事の中でも難関とされるのが国道17号の「新大宮バイパス」と「上尾道路」が分岐する宮前地区の橋梁基礎工事。2本の道路の間にある約13メートルの幅に新大宮上尾道路の橋梁基礎を計9基設ける。清水建設が5基(P87~P91)、東急建設が2基(P93、P94)施工を担当している。  基礎工事に採用したニューマチックケーソン工法は、軟弱地盤や固い地盤にも利用できる。逆さまにしたコップを水中に押しつけると、気圧が働いて水の浸入を防ぐという原理を応用して開発された。地下水の浸入を防ぎながらコンクリートの箱を構築する。  ケーソンの先端には天井走行式の掘削設備や排土設備などを使って土を掘り進める作業室が設けてある。地上では事前にリング状のケーソンを構築しておく。掘削した穴にケーソンをセットすると自重で沈下する。その後も土を掘り進めながらケーソンをセットするという作業を繰り返し行い一体化する。ケーソン1ロットは直径6メートル、高さ5メートル、厚さ1・2~1・5メートルの規模となっている。  通常、橋梁基礎工事では既成杭を使用するケースが多い。杭を打設する際は周辺地盤の崩壊を防ぐ目的で土留めや支保工を設置する。最低でも幅20メートル程度の作業ヤードが必要になる。同工事の現場ではオリエンタル白石が開発した「スリムケーソン工法」を採用。幅は8メートル程度で済み、狭い空間での施工を可能にする。  基礎の深さは最大57・5メートルを想定。ケーソンは27~28日間で5~6メートルのペースで設置する。地上から10メートルの深さまでは函内シャベルで掘削し、10メートル以深は事務所に据え付けているコントローラーで遠隔操縦する。  清水建設では既に2基(P87、P89)の基礎工事を完了し、現在は3基同時に施工を行っている。同社の佐藤元信工事長によると「3基同時に施工を進めているため、延べ労働時間が最も長い」という。時間外労働の上限規制が適用されている中、週休2日制や建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入して働き方改革にも注力する。  基礎工事では常に高い品質確保が求められる。そこで、事務所内に設置した計測機器で施工状態を監視している。「函内圧力調整システム」を使ってケーソン内部の気圧を高め、常に地下水が浸入していないかをチェック。傾斜計でケーソンが水平を維持しているかも確認している。  完成した道路をイメージしやすくするため、MR(複合現実)も活用。タブレット画面に映し出したパースを使い、警察協議や用地交渉などに役立てている。  現場では35人の作業員が昼夜2交代制で工事に従事している。1月30日時点での進捗はP88が36・7メートル、P90は27・8メートル、P91が32メートル地点まで沈下している。  物流の円滑化や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線からのアクセス向上に貢献する新大宮上尾道路。工事を所管する大宮国道事務所の久保智史工務課長は施工会社に対し「工事の安全性を確保しつつ、高い品質を期待したい」とコメント。清水建設の佐藤工事長は「交通の妨げにならないように努め、無事竣工を迎えたい」と展望する。  宮前地区の橋梁基礎工事は2基残っており、今後工事発注する予定だ。 from...

データラボ/スマートヘルメットで出来形計測、最適なデバイスと新手法確立へ

 3Dデータの活用を手掛けるDataLabs(データラボ、東京都中央区、田尻大介代表取締役兼最高経営責任者〈CEO〉)が、ヘルメットにカメラが内蔵されている「スマートヘルメット」を活用した出来形計測の実用化に注力している。三つのデバイスを使い撮影したデータを点群化し、3D配筋検査システム「Modely(モデリー)」でモデルを検出。操作性や安全性などを比較検証した。最適なデバイスと新しい手法の確立を目指す。  実証実験は、入交建設(高知市、窪内隆志代表取締役)が施工する「令和5-6年度南国安芸道路芸西高架橋下部P1-P5工事・令和5-6年度南国安芸道路西分高架橋下部P3、P4工事の合同」(発注・国土交通省)で実施した。同現場で▽RTK測量(iPhone)▽Go Pro▽スマートヘルメット(BeeInventor社「DasLoop Video」)-の三つのカメラデバイスを使用し、橋脚フーチング部の鉄筋組み立て完了後の出来形を計測、比較検証した。  結果、スマートヘルメットが現場での作業性、安全性で一番高い評価を得た。撮影時にカメラの画角と角度に注意が必要だったが、問題なく撮影でき、主筋を点群データからモデル化できることも確認した。  一方、iPhoneは撮影時に両手がふさがるため、やや足元に注意を払う必要があり安全性で課題が残った。Go Proはヘルメットに直接装着するため突起となり、足場などの狭小箇所には不向きという結果となった。  田尻CEOは「ヘルメットは現場で必ずかぶる。両手を空けた状態で別の作業をしながら、鉄筋の状態の動画も取れて出来形検査ができる点は期待できる」とした。  入交建設の担当者からは「スマートヘルメットやヘルメットマウント型の動画撮影による出来形管理を行うには、撮影者自身がどのように映っているかの認識が難しい。自分の目線で見えているものがカメラに映っていると認識できれば、撮影漏れがなくなりさらに現実的な手法になる」と指摘。「カメラが内蔵されているため足場などの障害物を気にしなくて良い。本来の業務をしながら、出来形計測ができる」と話している。 from...

中野洋昌国交相、八潮陥没事故現場を視察/埼玉県知事が技術・財政面で支援要望

 中野洋昌国土交通相は15日、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故の現場を視察した。視察後記者団の取材に応じ「市街地にも近く、非常に大きな影響が及んでいることを改めて重く受け止めた。技術的支援を引き続き行うとともに、財政的な支援も検討したい」と述べた。視察後に八潮市役所で大野元裕埼玉県知事、大山忍八潮市長と会談。大野知事が救助や復旧に向け、国の技術的・財政的支援などを求める要望書を中野国交相に手渡した。  中野国交相は「事故を重く受け止め国民の安全、安心を確保するため、上下水道全体の強靱化や老朽化対策を含め必要な対策をしっかりと検討し実施していく」と強調した。  会談冒頭、大野知事は「本復旧の検討結果を待たずに仮の下水道を整備するとともに、キャビン部分に向けて掘削を始めることを決めた」と救助の現状を説明。その上で「下水道は日本全国の問題。国土強靱化の実施中期計画に盛り込むとともに、流域下水道の今後の在り方も検討いただきたい」と要望した。  大山市長は「見てもらった通り現場の環境は大変厳しい。また周辺地域にも大きな影響が出ている。国交省や自衛隊、消防、建設業のこれまでの尽力に感謝している。一刻も早くドライバーの救出と住民生活が元に戻るよう引き続き力添えをお願いしたい」と述べた。  県は要望書で救助や応急対策、抜本的な復旧に向け国による技術的、財政的な支援を求めた。陥没事故を踏まえ地下埋設物のデータベース構築の推進や、次期国土強靱化実施中期計画への下水道強靱化の明記、国が進めるウオーターPPPの再検討と下水道事業の補助要件からの除外を求めた。  大野知事によると、中野国交相は流域下水道に対し全国的な問題としてしっかり取り組んでいくとともに、ウオーターPPPは「地方自治体などに意見を聞き、より良い方法を考えていきたい」と応じたという。 from...

香川県/畜産・水産試験場建て替え、25年度に実施設計

 香川県は2025年度、試験研究機能の強化を目的に現在地で建て替えを計画している畜産試験場(三木町下高岡2706)と水産試験場(高松市屋島東町75の5)の実施設計に着手する。それぞれ当初予算案に9621万6000円、8475万2000円を計上した。実施設計の発注時期はいずれも年度後半となる見込み。指名競争入札で委託先を選定する予定だ。  畜産試験場は本館(1963年竣工、RC造2階建て延べ296平方メートル)や実験棟(56年竣工、同2階建て延べ247平方メートル)、付帯施設を建て替え、1棟に集約する。磯野建築事務所で基本設計を進めており、25年度前半に完了させる。当初予算案の事業費には造成工事の費用も含む。  水産試験場は本館(70年竣工、RC造2階建て)と増養殖実験棟(71年竣工、RC造平屋)の2棟延べ約2000平方メートルを建て替える方針。基本設計は未発注で24年度中に委託したい考えだ。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171496 via 日刊建設工業...

2025年2月17日月曜日

回転窓/セントレアの開港20周年

 英語で中部地方を意味する「central(セントラル)」と、空港の「airport(エアポート)」を組み合わせた造語「セントレア」。2005年に開港した中部国際空港(愛知県常滑市)の愛称であり、全国9000点を超える応募の中から選ばれた▼選定理由の一つに〈語感が優雅で美しく、中部国際空港への期待感を象徴するような新しいイメージを感じさせる〉とある。利用者の利便性を追求し、中部と世界を結ぶセントレアがきょう17日に開港20周年を迎える▼当時の本紙特集は〈成田、関西と並ぶ3番目の国際ゲートウェイが誕生〉の見出しで新空港の整備効果や建設工事、施設の特徴などを紹介。翌3月に愛・地球博(愛知万博)の開幕を控えた厳しい工程の中で整備が進められ、1990年の基本構想公表から15年を経て待望の開港であった▼中部圏の成長発展を支えるセントレアで現在、2本目となる滑走路の整備プロジェクトが進行する。2025年度に着工し、完成は27年度の予定だ▼20年前に多くの人の夢を乗せてテイクオフしたセントレア。次代に向け飛躍していくための新たな歩みが始まっている。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171472 via 日刊建設工業...

凜/東洋熱工業工事部工事課主事・藤岡杏奈さん、信用・信頼してもらえる所長へ

 入社6年目。これまでに主に3現場を経験し、設備工事の施工管理の仕事にも「ようやく慣れてきた」と感じている。「引き渡し直前までバタバタする。ちゃんと暖房や冷房が効くのか、人が使えるのかと緊張する」と明かすが、だからこそ「現場で建物がどんどん出来上がり、本当に終わった時は達成感がある」とやりがいを語る。  昔から住宅販売のチラシに描かれた間取り図が好きで、大学では建築学科に進んだ。しかし、当初志望していた建築デザイン系には入学直後に「これじゃない」と直感したという。  サブコン業界に関心を持ったのは3年次の空調設備の講義がきっかけだ。その夏には東洋熱工業のインターンシップに参加し、その後の入社につながった。  現在は東京都内で研究施設の新築現場に携わる。所長をはじめ現場には女性が多く、「男女差は感じない」と話す。工事は2月から3月にかけてピークを迎える。6月の竣工予定に遅れが出ないよう「最後までちゃんと後悔がないように、一つ一つ確認しながらやっていく」と気を引き締める。  理想の所長像は「コミュニケーションを取れる所長」。偉ぶらず、未確定の指示を出さないことを常に意識している。「現場に入る協力業者の方に信用され、信頼してもらえるようにしたい」。  (ふじおか・あんな) from...

国交省/八潮陥没事故後の緊急点検結果公表、2月21日に有識者委初会合

 国土交通省は埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、全国で実施した緊急点検の結果を公表した。14日の閣議後会見で中野洋昌国交相が明らかにした。点検対象は7都府県13流域の下水道管理者。このうち埼玉県内の3カ所で腐食などの異常を確認した。路面下調査では空洞は見つからなかった。点検結果を踏まえ事故原因とされる下水道の点検手法見直しなどを議論する有識者委員会を立ち上げ、21日に初会合を開く。  八潮の道路陥没事故は、下水道幹線の破損が原因とされる。国交省は処理水量日量30万立方メートル以上の下水処理場に接続する口径2メートル以上の管路を対象に緊急点検を要請。対象は管路約420キロとマンホール約1700カ所に上った。  点検の結果、埼玉県内の新河岸川水循環センター(和光市)に接続する下水道管路3カ所で異常が見つかった。マンホールと管路部分の段差が1カ所、マンホール内壁の腐食で鉄筋が露出している部分が2カ所あったという。  国は県に対し速やかに対策工事を実施するよう要請した。県は段差部分の修繕工事に着手。マンホール内壁腐食の箇所でも応急措置を準備している。新河岸川水循環センターは荒川右岸流域下水道に接続する10市3町の下水を受け入れている。  路面下空洞調査はこれまでに全体約390キロのうち約320キロが完了。下水道が原因と思われる空洞はなかったものの、その他の原因による緊急度の高い空洞が6カ所見つかった。  内訳は埼玉県2カ所、東京都1カ所、神奈川県1カ所、奈良県2カ所で、いずれも緊急補修工事を進める。点検が完了していない埼玉、千葉の両県でも調査を急ぐ。  国交省は21日、有識者委員会の初会合を東京・霞が関の同省で開く。委員長には家田仁政策研究大学院大学特別教授が就く。再発を防ぐため、下水道管路の点検手法見直しを議論するほか、大規模な道路陥没の恐れがある地下管路の施設管理の在り方も検討していく方針だ。  中野国交相は会見で「議論を踏まえ大規模な陥没事故防止に向けて必要な対応をしっかり検討、実施していく。さらなる点検についても必要に応じて検討していきたい」と述べた。 from...

主要ゼネコン26社/24年4~12月期決算17社増収、利益は明暗分かれる

 主要ゼネコン26社の2024年4~12月期決算が13日に出そろった。連結売上高は手持ち工事の順調な進捗などを背景に17社が増収。本業のもうけを示す営業利益は好採算案件への入れ替わりや受注時採算の改善などが進んだ15社が増益となった。建設市場は旺盛な民間設備投資や堅調な公共工事が下支えするものの、さらなる資材高騰など建設コストの上昇を懸念する声も多い。引き続き各社は施工体制に考慮した採算重視の受注を徹底する。  連結売上高は大型の手持ち工事を順調に消化し、設計変更で追加工事を獲得した企業の増収が目立った。  営業利益は明暗が分かれた形だ。15社が前年同期を上回ったものの、建築事業で好採算案件への入れ替わりなどが思うように進んでいない準大手の減益が目立った。「原価低減や追加工事の獲得が追い付かず、現時点で損益改善の見通しがたたない」(奥村組)とし、利益確保に苦慮した企業もあった。  工事の採算性を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率は公表している22社のうち15社が前年同期と比べ上昇。選別受注を徹底したことなどが改善につながっている。11社が2桁台の高水準を確保した。  業績の先行指標となる単体受注高は15社が前年同期を上回った。再開発案件や大型生産施設などの民間設備投資が旺盛で、国土強靱化対策など底堅いインフラ需要がある。防衛関係の予算も増えており、引き続き「公共投資の堅調な推移が期待できる状況」(東亜建設工業)だ。  工事の順調な進捗や採算性向上を背景に、通期業績予想を上方修正する企業も目立った。「価格転嫁交渉が進み追加変更契約を獲得できた」(鉄建建設)として、今後も発注者に適切な理解と対応を求めていく。  物流の2024年問題によるコストや工程への影響も浮き彫りになってきている。関税強化策を検討する米国や不動産市況が悪化する中国など海外情勢にも目を向ける必要があり、引き続き難しいかじ取りが迫られる。 from...

長崎市/大黒町地区再開発、2棟総延べ2万平米に

 長崎市は「大黒町地区市街地再開発準備組合」が同地区で計画する第1種市街地再開発事業について、都市計画素案の概要を公表した。同地区内にある長崎県営バス長崎駅前ターミナルと周辺の老朽化したビルを、2棟総延べ2万0900平方メートル規模の複合ビルに建て替える。都市計画審議会での審議などを経て、5月の都市計画決定を予定。その後は本組合設立を含め、ビルの完成までに5~6年程度かかる見込み。  13日に市と長崎県が共同で都市計画に関する住民向け説明会を県庁内で開催。市の担当者が再開発事業と高度利用地区の変更、県の担当者が再開発に関連する都市計画道路江戸町道ノ尾線(国道202号)の変更について説明した。  再開発の施行区域は江戸町道ノ尾線の道路部分を含めた約0・9ヘクタール。市道大黒町1号線を挟んで北側のA街区の建築敷地面積は、バスターミナルが入居する長崎交通産業ビルの敷地など約3800平方メートル。再開発に伴い、街区の中心を通る市道大黒町上町2号線を廃止し、街区全体を一体的に建て替える。再開発ビルの規模は延べ約1万6700平方メートルで、低層部にバスターミナルや商業施設、広場中層部にオフィス、高層部にホテルを設ける。  A街区の南東側に位置するB街区の建築敷地面積は約1200平方メートル。再開発ビルは延べ約4200平方メートルで、商業施設と駐車場で構成する。A街区とB街区の2棟の間には、それぞれの建物を接続する連絡通路を設置する。  再開発と併せ、A街区に隣接する江戸町道ノ尾線の車道を拡幅し、幅約3メートル、延長約85メートルのバス停車帯を新設する。道路の都市計画変更は県が行う。  再開発により、築60年以上が経過し老朽化が課題となっている長崎交通産業ビル(SRC造地下1階地上6階建て延べ約1万2380平方メートル)の更新が実現するほか、バリアフリー化や路面電車などとの乗り継ぎ利便性の向上、国道の渋滞緩和が期待される。 from...

2025年2月14日金曜日

回転窓/五輪の新たなモデル

 イタリア北部で行われるミラノ・コルティナ冬季五輪の開幕まで1年を切った。同国で4度目、ミラノで初となる大会は来年2月6~22日の17日間、新競技の山岳スキーを含む8競技116種目が予定されている▼近年の五輪は開催経費の負担増などを背景に立候補を断念する都市が相次いでいるという。国際オリンピック委員会は経費を抑えるため、既存や仮設の施設の活用を推奨し開催都市以外の国内都市などで競技を認めるといった改革を進めている▼今大会は使う施設のうち約85%が既設で、新設会場を最小限にとどめる。最大の特徴は複数都市による「広域開催」。四つの会場群を設け各競技を行う異例の運営となる▼ミラノとコルティナダンペッツォの間は直線距離で300キロ近く離れている。会場群の移動や観客輸送など課題が残る中、次回もフランスのアルプス地方で広域開催になる。今回は先駆け的な大会で五輪の新たなモデルになりそうだ▼アイスホッケー女子が日本勢で最初となる大会の出場権を獲得した。各競技でも予選会が進む。厳しい道のりだが、選手には全てを出し切って五輪の切符をつかんでほしい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171413 via 日刊建設工業...

青木あすなろ建設/社長に望月尚幸副社長昇格、4月1日付

 青木あすなろ建設は12日に開いた取締役会で、望月尚幸代表取締役兼副社長執行役員建築事業本部長が4月1日付で社長に昇格する人事を決めた。辻井靖社長は代表権のない会長に就く。  望月 尚幸氏(もちづき・なおゆき)1987年日本大学理工学部卒、清水建設入社。2020年4月日本国土開発執行役員、同8月取締役兼常務執行役員、21年同兼副社長執行役員、23年高松コンストラクショングループ顧問、24年1月青木あすなろ建設顧問、同4月副社長執行役員、同6月から現職。神奈川県出身、61歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171416 via 日刊建設工業...

東京・中央区/新築時にZEB・ZEH実質義務化、敷地3000平米以上など対象

 東京・中央区は区内で進展する開発事業に対し、ZEB・ZEH化を一層強く求める。「まちづくり基本条例」に基づく指針と、「市街地開発事業指導要綱」の二つを4月にも改正する予定。同月以降、敷地面積3000平方メートル以上の建築などを計画する際は、開発計画にZEB・ZEH化対策を反映する必要がある。同100平方メートル以上の開発に対しても、ZEB・ZEH化への配慮を求める。  13日開催の区議会環境建設委員会に報告した。指針の対象は敷地面積3000平方メートル以上の建築のほか、▽高度利用地区▽特定街区▽再開発等促進区を定める地区計画▽総合設計▽都市再生特別地区-といった制度を活用する開発。ZEB・ZEH化の達成を「反映事項」と位置付け、実質的に義務付ける。敷地面積100平方メートル以上の開発が対象の要項改正では「配慮事項」とし、義務化には踏み込まない。  ZEB・ZEH化は、ZEB・ZEH Readyか同Oriented以上の水準であればよい。1次エネルギー消費量を実質ゼロにする「ZEB・ZEH化」までは求めない。まちづくり基本条例の対象となる開発に対しては、新築建物のZEB・ZEH化率を27年度末までに100%にする目標を掲げる。  区は区有施設のZEB・ZEH化も推進する。今後施設を新築・改築する際はエネルギー消費性能(BEI)0・5以下を要件とし、ZEB Readyの水準を達成する方針。3月には日本橋中学校(改築)、2026年1月には晴海西小学校第二校舎(新築)でZEB Readyの認証を取得する予定だ。 from...

TTK社長・五十嵐克彦氏/創立70周年「変化をいとわずチャレンジ」

 ◇通信基盤を通じ地域とともに成長  東北通信建設として1955年2月15日に創業し、長きにわたって地域経済の発展に貢献してきた。東日本大震災からの復旧・復興にも力を尽くした。節目の到来を踏まえ、五十嵐克彦社長は今後も「地域に貢献し、高いサービスを提供し続ける」と強調。「変化をいとわずチャレンジしていく」姿勢で、社員と共に100年企業を目指していく。  --70年の節目を迎える。  「前身の東北通信建設時代から『東北の通信基盤はわれわれがつくる』という熱い思いで歴史を刻んできた。当社を支えていただいた取引先、同じ思いをつなげてきた先輩方や社員、パートナーである協力会社に感謝したい。情報通信を取り巻く環境の変化に対応しながら、地域の皆さんに寄り添いサービスを提供する使命を今後も果たし続けたい。変化をいとわず新しい分野にチャレンジする姿勢を持ち続ける」  --これまでさまざまな転換期があった。  「日本電信電話公社の民営化を含め時代の潮流に合わせ事業を拡大したことが一つ目の転換期だろう。二つ目は東日本大震災だ。津波で大きな被害を受けた沿岸部を中心に災害復旧・復興に力を尽くした。昨夏の秋田や山形での豪雨、今冬の豪雪など東北各地で自然災害が相次いでいる。地域を守り早期復旧するという使命感が社業を支える社員に根付いている」  --当面の事業戦略をどう考える。  「本年度は2022年度からスタートしたグループ第6次中期経営計画の3年目に当たる。これまで培ってきた技術やノウハウ、東北全域をカバーする事業基盤を生かし、さらなる成長と企業価値の向上を目指す。新分野への挑戦などによって、売上高で情報通信設備工事以外の比率を3割程度まで高めたい。土木技術を活用した電線共同溝や無電柱化、再生可能エネルギー市場などがターゲットで、スマートアグリ分野やZEBなどにも照準を合わせている」  --成長を支える上で人材の育成は欠かせない。  「少子高齢化の進行で労働力不足は顕著になっている。震災後、地元の東北で情報通信の仕事に携わりたいという学生が男女、文系理系を問わず一定数いてくれる。希望に応えられるよう、情報通信エンジニアリング分野で働きがいを感じ、活躍してもらえる環境を整えていく。社員が能力を伸ばし、力を発揮することで、これまで提供できなかった新しいサービスが提供できる。そこに意欲を感じてもらえたらうれしい」  --100周年に向けた思いを。  「情報通信の基盤をフル活用して新3K(給与、休暇、希望)を実現していく。ミライト・ワングループの一員として、ミライト・ワンはもちろん西武建設や国際航業と情報共有しながら、同じDNAを持つ企業として成長を目指す。地域のさまざまな課題を技術とサービスで解決するのがグループの使命だ。地域の未来を支える、その一翼を担っているという強い覚悟を持ち、今後も信頼される企業であり続けたい」。  (いがらし かつひこ) from...

都市機構ら/東京都港区虎ノ門で延べ18万平米のビル竣工、高機能オフィスを配置

 都市再生機構らが東京都港区虎ノ門で建設している延べ18万平方メートルの再開発ビルが14日に竣工する。内部には機能性に優れたオフィスや、ビジネス活動をサポートする業務支援施設などが入る。隣接する虎の門病院と連携し、災害時には約1万4000平方メートルの治療・収容拠点の設置も可能になるなど、高い災害対応力を備える。  完成するビル「虎ノ門アルセアタワー」(港区虎ノ門2の105)は、S一部SRC・RC造地下2階地上38階建て延べ約18万0600平方メートルの規模。基本設計・総合監理・デザインディレクションは日本設計・三菱地所設計JV、実施設計・施工は大成建設が担当した。  アルセアタワーの整備は、都市機構や地権者などで構成する「虎ノ門二丁目地区再開発協議会」が推進する虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業の一環。虎の門病院のほか、国立印刷局と共同通信会館を含む街区を一体的・段階的に再整備し、病院機能を止めずに施設更新を図った。  今後は共同通信会館を解体し、基盤施設を整備する。2030年度の事業完了を予定している。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171418 via 日刊建設工業...

2025年2月13日木曜日

回転窓/人の移動も変える取り組み

 食や農林水産業の持続性を高める取り組みを表彰する「サステナアワード」。2024年度の農林水産大臣賞には「海の未来をつくるレストラン『THE BLUECAMP』」が選ばれた▼応募したのは、和洋中の料理人や菓子職人らで構成する東京都のグループの「Chefs for the Blue」。水産業を体験した学生たちに6日間限定のレストランを運営してもらった。食のプロとして学生に協力し、水産業の生産・流通・消費への理解を促した▼総務省が1月末に公表した24年の「住民基本台帳人口移動報告」によると、埼玉、千葉、神奈川を含む東京圏は3年連続の転入超過となった。転入のほとんどは15~29歳の若年層だった▼転出超過となったのは40道府県。依然として転出が続く県は多く、建設業とともに農業や水産業の担い手不足が深刻化している地域がある▼THE BLUECAMPのレストランには全国から約250人が来店し、学生、産業界、消費者のつながりが広がった。課題と向き合い、必要性と可能性を知ってもらう産業界の地道な取り組みは、人の移動もきっと変えていくと期待したい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171380 via 日刊建設工業...

鹿島/鹿島道路社長に小土井満治氏、4月1日就任

 鹿島は12日、小土井満治常務執行役員土木管理本部副本部長が鹿島道路の社長に4月1日付で就任する人事を発表した。  小土井 満治氏(こどい・みつはる)1983年名古屋大学工学部地盤工学科修士課程修了、鹿島入社。2017年執行役員、21年常務執行役員土木管理本部プロジェクト推進統括部長、22年同土木管理本部副本部長兼馬毛島総合工事事務所長などを経て24年11月から現職。広島県出身、66歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171374 via 日刊建設工業...

環境省/陸上風力の立地誘導、環境アセス見直し状況中環審総会に報告

 環境省は12日、今国会に改正法案の提出を予定している環境影響評価(環境アセス)制度見直しの検討状況を、中央環境審議会(中環審、環境相の諮問機関)総会に報告した。中環審の有識者委員会の答申案として、陸上風力を最大限導入するため環境影響の懸念が小さい適地に立地を誘導する仕組みを検討。建て替え時は現行の配慮書の代わりとなる簡潔な書類を作成・公表し、国が意見する仕組みを設けるなどの対応を説明した。  総合政策部会の環境影響評価制度小委員会と風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会の答申案を説明した。環境アセス報告書の手続きを維持し、発電所事業では環境省が報告書を取得する仕組みを整えることで、事後調査の結果などを一元的に管理・分析できるようにするとした。  陸上風力は、環境配慮が確保された施設の誘導について検討が求められた。法対象外の3・75万キロワット未満の発電事業でも環境影響が著しくなる恐れがあるため、第二種事業の規模要件を引き下げ、法対象の対象を広げるとした。建て替えは、環境配慮の方針などを記載した簡潔な書類を現行の配慮書に代えて作成・公表し、国が意見を述べるのが妥当とした。  同省が環境アセス図書を継続して公開する制度と、累積的な環境アセスの技術的な検討、環境アセスを担う人材育成の取り組みを現行制度の課題として報告した。開発事業の上流段階で実行する戦略的環境アセスは、実現に向けた検討を「進めていくことが求められる」とした。 from...

青森県平川市/食・農・観の拠点整備構想、25年度に事業可否検討へ

 青森県平川市は産業振興基本構想に基づく「食・農・観の活性化拠点」整備に向け、事業可否を含む整備方針の検討に入る。2025年度予算案に決定までの検討事項整理やサウンディング(対話)調査などを任せる「食・農・観の拠点整備構想検討業務」費として1390万円を計上。選定方式は公募プロポーザルを想定する。発注時期は未定。PFIなどの官民連携手法を検討しており、事業化を決定した場合は26年度に可能性調査などに着手する。  整備を目指しているのは、市が強みとする高付加価値な農業・農産物を中心とした拠点施設。地域の食文化や観光資源を結び、地域の魅力向上と持続可能な発展の鍵として期待されている。24年12月の前回対話で市場性の有無や具体的な拠点機能、候補エリアの絞り込み、整備運営手法の方向性、事業採算などを聴取した。調査結果は整備構想検討業務に反映する考えだ。  整備候補地には県道13号(黒石~大鰐)上、国道102号(弘前~黒石)上、国道7号上、ほか(中心市街地)など広範囲に設定している。今後の実施計画などの段階で具体的な場所を決める。柏木町藤山にある「ねぷた展示館」との一体整備も検討している。  施設には交流スペースを設け、地域住民が主体になるイベントや教室、展示会を開催できる場にする。ライブ配信やSNS撮影が可能なスタジオなど、情報発信を活用した戦略的事業も展開。伝統芸能・平川ねぷたのはやしや伝承料理の調理体験などの観光、マルシェを開催できる物販・飲食、食育・教育など、幅広い活用を見込んでいる。 from...

上場ゼネコン大手4社/24年4~12月期決算、3社増収・好採算案件で利益率も改善

 上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設)の2024年4~12月期の連結決算が12日に出そろった。大型工事の進捗や設計変更などを獲得するなどして3社が増収。本業のもうけを示す営業利益は好採算案件への入れ替わりと利益率改善を要因に3社が前年同期を上回った。業績の先行指標となる単体受注高は2社が増加した。  連結売上高は4~12月期で鹿島、大林組、大成建設が過去最高となった。鹿島は海外関係会社が押し上げた。大林組は国内の大型工事や海外子会社が売り上げに貢献。大成建設は首都圏の大型建築工事が最盛期を迎え増収となった。  営業利益は、大林組と大成建設が土木や建築の利益率改善で増益となった。鹿島は施工初期段階の大型工事が多く建築事業の減収が要因で減益となったものの、単体の完成工事総利益(粗利益)率は2桁を維持した。同社は「建設コストの動向を見極めつつ、生産性向上や原価低減に向けて取り組む」姿勢だ。大林組も2桁を確保。清水建設は前年同期に低採算な大型工事の計上があった反動で建築工事の粗利益率が改善した。  単体受注高は、大林組と大成建設が増加した。大林組は「施工の平準化や受注時採算の確保を重視した取り組みが奏功している」。大成建設は国内土木の大型官公庁工事や複数の建築大型工事を受注した。鹿島は国内外で高水準だった前年同期の反動減となったが高水準を維持した。  通期の連結業績予想は、鹿島と大林組が上方修正した。堅調な建設事業や手持ち工事の順調な進捗、採算性の改善などを考慮した。今後「スライド条項の適用など建設物価の高騰を適切に価格転嫁していく」(大成建設)。  今後の海外事業の業績については「トランプ氏が米大統領になり関税政策に伴うインフレや金利高、移民政策による労働力不足が発生する可能性には注視する必要がある」(鹿島)。一方、米国内で減税や規制緩和による経済の押し上げ効果によって、建設や不動産市場の活性化に期待が高まる。大林組も建設需要への期待を示すものの「グリーンエネルギー関連に対する政策は衝撃的。北米での投資が限定的になるかもしれない」と見通す。  貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」では鉄鋼とアルミニウムなどを現地調達している社が多く、今後の動向を注視することになりそうだ。 from...

2025年2月12日水曜日

回転窓/観光資源の雪と山

 今月に入り、この冬一番とされる強い寒気の影響により日本海側など広い範囲で大雪が続いた。災害救助法が適用された地域もあり、被害がこれ以上広がらず一日も早く日常を取り戻したい▼時に災害をもたらす雪だが、普段は観光資源としての役目も果たす。神社仏閣や庭園などに降り積もる雪は風情があり、外国人向けの雪をテーマにしたツアーも盛況だという▼自宅から眺める富士山の雪化粧が裾野付近まで伸び、青く澄み切った冬空にひときわ映える。先日、電車内でインバウンドの一行が車窓から見えた富士山に歓喜の声を上げていた。その中には浮世絵師・葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に関する書籍を抱えている方も▼海外でも富士山は日本を象徴する山としてダントツの人気を誇る。夏の富士登山は国内外から多くの人でにぎわう一方、「オーバーツーリズムの象徴」といった負の側面も深刻化している▼「富士は眺める山」と会社で登山好きの先輩が話す。山頂まで荒涼とした砂地や岩場が続き、登るよりも遠方から景色を楽しむに尽きるのだとか。楽しみ方は人それぞれだが、迷惑行為は控えなければならない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171340 via 日刊建設工業...

新理事長/浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)・野口哲史氏

 ◇欧州に負けない産業に  国土交通省から1月20日付で設立が認可された。政府は洋上風力を再生可能エネルギー主力電源化の切り札に位置付けている。浮体式の普及拡大を巡る期待は大きく、大量導入とコスト低減、海上施工全体の最適化が一層求められてくる。大量急速施工を実現する「合理的な建設システム」の構築と、「適切な建設コスト」の達成を研究目標に掲げ、「欧州に負けない産業を作りたい」と意気込む。  --設立の経緯を。  「政府が浮体式を含めた洋上風力で2040年までに45ギガワットの案件形成を達成する目標を掲げている。普及には事業コストを抑え、風車建設の工程を一貫して行う大量急速施工でないと難しい。協調領域となる基地港湾などのインフラ整備に提案・提言できる団体として設立した」  --普及への課題は。  「組合設立前、浮体式の動きが活発な欧州を何度も視察した。フランスや英国などは基地港湾やウェットストレージ(仮置き場所)といった風車建設に関するインフラを整備し連携させ、風車を大量急速施工しようとしていた。風車メーカーもインフラ整備された国から優先して供給する動きを見せている。欧州の計画に追い付くか、追い抜くぐらいのスピードで協調領域を整備しなければ日本に安く風車が供給されず、ビジネスを展開できないだろう」  --大量急速施工にどう取り組む。  「電力会社など事業者で構成される浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)と意見交換していく。浮体形状がセミサブ型かスパー型か各事業者で違うためどちらに重きを置いているかを議論する。セミサブ型は港湾内でも港湾外でも施工できるが、スパー型は港湾外で施工するため、それだけの準備が必要だ」  「1年中、洋上風力建設に従事できるのが理想だ。日本海側と太平洋側で作業時期が異なり日本海側は冬場に海上仕事ができない。現地の据え付けを夏に行い、冬場に浮体を作って風車も搭載し係留するなど、さまざまな事業者が複数プロジェクトで同時並行に建設できるようにしたい」  --今後の展望を。  「浮体式の専用港湾をいつまでにどんな規模で構築するかの計画を打ち出している国が多いのに対し、日本は構想をはっきり打ち出していない。構想があれば、造船や浮体メーカー各社が動きやすい。技術的な課題も含めサプライチェーン(供給網)を踏まえた提言が必要だ。大量急速施工のためのインフラ整備のビジョンを打ち出し、国に支援してもらえるように標準シナリオを作る。25年度に組合としての協調領域の方向性を国に示す。1拠点で年間30~40基の風車整備を目標としたい」。  (1月20日就任)  (のぐち・てつし)1983年京都大学工学部土木学科卒、五洋建設入社。2012年執行役員、18年取締役兼専務執行役員。団体活動では日本埋立浚渫協会技術委員長、洋上風力部会長として洋上風力での港湾支援の在り方など海洋土木の実務経験から課題解決に取り組む。大阪府出身、64歳。趣味はゴルフと美術館巡り。 from...

国交省/道路の被災や事故を生成AIで検知高精度化、迅速な初動対応に寄与

 国土交通省は生成AIを活用し、道路や河川などのインフラの異常事象を高精度に自動検知するシステムの開発に着手する。道路が被災したり事故が発生したりした場合に、監視カメラの映像から異常を判定するAIシステムの精度向上などに生成AIを用いる。目視での確認を必要とせず、事象発生を即座にアラートで道路管理者に知らせる仕組み。通行止めの判断や維持工事を担う建設会社への連絡といった初動対応の迅速化につながりそうだ。  内閣府の「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」で2024年度補正予算措置分の対象施策に選定。予算額2億56百万円が配分された。   国交省は防災・減災、国土強靱化の一環で、緊急輸送道路などで監視カメラの増設を進めている。一部の地方整備局ではカメラ映像を分析するAIシステムを試験的に導入。スタックで立ち往生した車両の早期発見などに役立てている。初動対応の効率化に加え、目視が要らず省人化にも効果が高い。  ただし蓄積したデータが少ないとAIシステムの判定にブレが出る。そのため生成AIでシミュレーションを無数に行うことで不足するデータを補完する。技術開発では生成AIが判断や予測を誤ったり不適切なデータが混ざったりするリスクも考慮する。トンネルを実証フィールドに精度向上に取り組む方針。トンネルはカメラ台数が多く映像で全体をカバーでき、気象などの影響も受けないため実証には最適だという。  排水機場のポンプ設備の故障や障害につながる異常事象を前もって検知するAIシステムの開発にも生成AIを活用。設備の劣化状況を見極め更新優先度の把握や設計に生かす。インフラ管理用に全国で整備している通信ネットワークの最適な管理にも用いる。  一連の実証には土木研究所と国土技術政策総合研究所が参画し、生成AI関連システムの開発とリスク評価に当たる。関連業務を民間に委託する手続きも年度内に始める。実証成果は25年度末までにまとめる予定。 from...

全漁建/25年活動方針で漁港の防災力強化要望、能登被災地早期復興へ施工要件緩和も

 全日本漁港建設協会(全漁建、岡貞行会長)は2025年に「漁港版国土強靱化実施中期計画」の策定や、能登半島地震の早期復旧・復興に向けた施工要件の緩和などを国に訴えていく。漁港版国土強靱化実施中期計画では東日本大震災や能登半島地震の被害を検証した上で、流通や災害時の搬入拠点としての役割を踏まえた漁港の防災力強化の施策を盛り込むよう要望する。  10日に岡会長が東京都内で会見し、25年の協会活動方針を示した。24年度内に国が素案を示す予定となっている国土強靱化実施中期計画の策定に当たり、漁港整備に特化した施策の反映を求める。「漁港は全国津々浦々にあり、それぞれに重要な役割を担っている。加えて今回の能登半島地震で、半島が災害を受けた場合の被害も広く認知された。過去の災害もしっかり評価した上で、必要な施策を盛り込んでもらいたい」(岡会長)として要望活動を強化する。  能登半島地震の早期復旧・復興に向けては、復旧工事に従事する労務者の宿泊施設や作業船の係留場所、浚渫土砂の仮置き場などの確保で「課題が表面化している」と問題視。復旧工事の円滑化へ要件緩和などの解決策を国に提案していく。また、復旧工事などに関する発注情報が「圧倒的に不足している」と指摘し、漁港だけでなく港湾管理者とも連携して会員への情報提供に努める。  「災害協定を締結していないと災害時の初動が遅れる」(岡会長)として、漁港を管理する都道府県と、協会支部との災害協定の締結も進めていく。水産庁と協会本部との協定締結も目指す。「本部が包括的な協定を締結していれば、災害時に本部から支部へ復旧支援を出すこともできる」とみる。  働き方改革に向けては会員企業のICT活用やプレキャスト(PCa)化を促すため、施工事例の収集・分析や優良事例の作成などに取り組む。「協会の半分以上の会員企業がICTなどに手を出せていない。これを100%に近づけていく」(岡会長)。 from...

国交省/マンション管理建替円滑化へ今国会に改正2法案、社整審小委で取りまとめ案

 国土交通省は、今国会でマンション管理適正化法とマンション建て替え円滑化法の改正を目指す。7日に開いた社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)マンション政策小委員会(委員長・齊藤広子横浜市立大学教授)で、改正案の基本的な考え方となる「取りまとめ案」を示し、おおむね了承された。所有者の高齢化といった課題に対し管理、建て替えの両面で制度充実を図る。近く両法案の改正案を示す予定だ。  取りまとめ案では「新築から再生までライフサイクル全体を通じた管理、再生の円滑化」を目指す方向性を提示した。管理適正化と建て替え促進の両輪で課題解決を目指す。  管理適正化については「マンション管理計画認定制度」の対象を新築にも広げ、分譲販売事業者に管理計画の作成を促すとともに、円滑な引き継ぎや管理計画の見える化によるマンションの資産価値の適正評価を促す措置が必要と指摘。近年増加している管理業者管理者方式を巡っては、区分所有法改正を踏まえた区分所有者への重要事項や取引関連情報の説明を義務付けるべきとした。  建て替えの円滑化・促進については、区分所有法の改正により1棟リノベーション、建物・敷地の一括売却など新たな手法の創設が予定されていることを踏まえ、マンション建て替え円滑化法にも対応した方策、手続きの追加を求めた。  増加している多様な建て替えニーズに対しては、建て替え後の賃借権から区分所有権への権利変換を可能にするなど、合意形成を促す措置を提案。マンション建替型総合設計制度を活用した際の斜線制限緩和の特例措置なども盛り込んだ。これら施策の実効性を高め地域の実情に合ったマンションストックを形成するため、地方自治体の権限、関与、体制を強化すべきとした。 from...

福島建協/県との広域支援協定で初出動、除雪体制強化へ会津地域にトラック34台派遣

 強い寒気の影響で、4日から断続的に雪が降る福島県会津地域の除雪作業に対応するため、福島県建設業協会(長谷川浩一会長)は福島県との災害時の広域支援協定に基づき、10日から会員企業を派遣した=写真(福島建協提供)。積雪量が平年の3・5倍の100センチを超える会津若松市内を中心に会津若松建設事務所が管理する道路の除雪作業に従事。県中通りの会員14社から4トントラック34台、運転手48人を12日までの3日間派遣し、雪捨て場までの運搬業務を担う。  福島建協と県は、自然災害で建設事務所管内をまたぐ広域的な支援が必要となった場合に備え、2022年5月に「災害時における応急対策業務の広域的な支援に関する協定」を結んだ。被害の拡大防止と早期復旧を図る目的で、記録的な豪雪を受け今回が協定に基づく初の出動となった。今後の体制を踏まえ、協会から浜通りの会員企業も必要に応じて出動することとしている。  協定に基づく派遣企業は次の通り。  ▽尾形土建(二本松市)▽石橋建設工業(本宮市)▽菅野建設工業(同)▽昭和建設工業(郡山市)▽富士工業(田村市)▽福浜大一建設三春支社(三春町)▽石覚組(小野町)▽橋本組(須賀川市)▽横山建設(同)▽八木沼組(天栄村)▽佐久間組(白河市)▽福島県南土建工業(同)▽鈴木建設(同)▽藤田建設工業(棚倉町)。 from...

千葉県袖ケ浦市/新庁舎整備最終段階・南庁舎が竣工、庁舎全体が完成

 千葉県袖ケ浦市が建設していた市役所南庁舎が完成し、8日に現地で竣工式典を開いた。粕谷智浩市長らが参加し、感謝状贈呈やテープカットなどで竣工を祝った。同庁舎の新築は、北庁舎・設備棟の新築と中庁舎の大規模改修に続く段階的整備の最終ステップ。南庁舎ができたことで、庁舎全体が完成を迎えた。同庁舎は、市民交流広場を中心とした機能を配置した。10日から開庁している。  南庁舎はRC一部S造2階建て延べ1405平方メートルの規模。基本設計・監理は榎本建築設計事務所、基本・実施設計と施工は大成建設が担当した。  冒頭、粕谷市長は「地域コミュニティーの活動や市民交流の場として安心して使ってもらいたい。市が目指す新たな姿の実現に向け、全力でまちづくりに取り組んでいく」と述べた。来賓の浜田靖一衆院議員と江野澤吉克千葉県議会議員、小国勇袖ケ浦市議会議長が祝辞を述べた。  式典では、粕谷市長が明智克夫榎本建築設計事務所会長と廣瀬淳一大成建設執行役員千葉支店長に表彰状を手渡した。  明智会長は「新庁舎が市のシンボルとして、長く市民に愛され、親しまれるよう心から祈念する」と謝辞を述べた。続けて、廣瀬支店長は「誠実なものづくりで感動を届けるという信条の下、施工に努めてきた。市民に開かれた庁舎としてさらなる市政の発展に寄与するだろう」と期待を込めた。  新庁舎の所在地は坂戸市場1の1(敷地面積1万9373平方メートル)。整備は段階的に実施し、初弾として22年7月に北庁舎と設備棟が竣工した。建物規模は北庁舎がRC一部S造5階建て延べ4982平方メートル、設備棟がRC造2階建て延べ1039平方メートル。免震構造を採用し災害対策室や議場、執務スペースを設けた。  23年6月に中庁舎(SRC造地下1階地上7階建て塔屋2階延べ6469平方メートル)の耐震補強、大規模改修工事が完了。旧庁舎と旧議場棟を解体した後、24年2月から南庁舎を建設していた。 from...

三菱商事/鉄筋品質証明書電子化で建設業対象サービス開始、ラベルとの照合時間大幅減

 三菱商事は鉄筋の品質証明書を電子化するシステムで、建設業を対象としたサービスを1月に開始した。現場に納入された鉄筋のラベルをスマートフォンで読み込み、電子証明書類と自動でひも付けできるようにする。既に準大手ゼネコンなど6社が10現場で導入。一部の現場では照合時間を約80%削減する効果を確認した。各ゼネコンが業務効率化を模索する中、有力な選択肢として売り込みを強化する。  鉄鋼メーカーが鋼材を販売する際、品質が検査済みであることを証明する「ミルシート」と呼ばれる書類を発行する。流通過程で鋼材とともに引き渡され、品質を担保している。一方で、ミルシートの年間流通枚数は約7000万枚と試算され、関連書類を電子化する機運が高まっている。  三菱商事はミルシートを電子化するシステム「ミルボックス」を2023年に開発。電子受け渡しなどの利便性が評価され、商社や鉄鋼メーカーなど200社以上に導入された。サプライチェーン(供給網)の川上と川中で電子化が進む中で川下のゼネコンを対象とした機能を充実させていく。  建築現場にはミルシートとは別に、鉄筋の寸法や長さを示したラベルが同時に納入される。これらのラベルをスマホで読み込み、ミルシートと自動でひも付ける機能を実装した。職員がラベルとミルシートを手作業で照合する手間を省き、鉄筋の品質や納品状況を効率的に管理できるようにした。  中間検査や竣工検査に対応できるよう、ミルシートの一覧表を自動で作成する機能も実装した。準大手や地場のゼネコンが本格導入したほか、複数のスーパーゼネコンでもトライアルを行っているという。  料金は月額制とし、ラベルの読み取り枚数に応じて変動する。鉄筋の使用量が多い高層建物の現場で、月約2万円程度で利用できるようにする。当面は現場単位で契約し、将来的にはゼネコン単位での契約に切り替えていく方針だ。  国土交通省の統計によると、RC造・SRC造の2階建て以上の建築現場は年間に約1万2000カ所ある。三菱商事はこれらを対象市場に据え、需要の取り込みを狙う。同社担当者は「資材の品質確保は非常に重要だが、その方法には効率化の余地がある。建設資材に関わる企業として、最終的な消費場面で新たな価値を提供していきたい」と話している。 from...

2025年2月10日月曜日

回転窓/「女性映画人」の軌跡

 「日本の女性映画人(3)-1990年代」と題した特集上映が11日から3月23日まで、東京都中央区の国立映画アーカイブ長瀬記念ホールOZUで開かれる▼監督や脚本、撮影など多様な職域で女性映画人たちが手掛けた全52作品を会期中に上映する。これまでに「無声映画期~60年代」と「70~80年代」の作品を対象に開かれ、今回の「90年代」も映画ファンには楽しみな企画であろう▼日本映画製作者連盟が先日発表した2024年の映画興行収入(興収)は、前年比6・5%減の2069億8300万円だった。邦画は歴代最高を記録したものの洋画が3割減と振るわず、興収が4年ぶりに減少した▼好調な邦画をけん引するのはアニメ作品。一方で洋画の不振はハリウッドで起きたストライキの影響もあるようだ。コロナ禍の20年に大きく落ち込んだ興収だが、全体の回復基調は続いているという▼明日から開催される特集上映のコンセプトは、女性映画人を顕彰するとともに「日本映画史を見据える新たな視点を提示する」こと。こうした映画史をたどる企画なども通じて、日本映画が大いに盛り上がるのを期待しよう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171314 via 日刊建設工業...

宮地エンジニアリンググループ/社長に池浦正裕取締役昇格、4月1日就任

 宮地エンジニアリンググループは7日、池浦正裕取締役が4月1日付で社長に昇格する人事を決めた。青田重利社長は同日付で取締役相談役に就く。池浦氏はエム・エムブリッジ社長を継続する。  池浦 正裕氏(いけうら・まさひろ)1982年九州大学経済学部卒、三菱重工業入社。2017年エム・エムブリッジ常務執行役員、19年取締役兼常務執行役員、20年6月社長兼宮地エンジニアリンググループ取締役。福岡県出身、66歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171300 via 日刊建設工業...

結/東洋建設・トリム・ケイラブさん、東洋建設と世界の架け橋に

 アメリカで生まれ、1歳の時に両親の仕事の都合で来日した。高校を卒業するまで日本で暮らし、大学進学で再度アメリカへ。異文化や国際関係を学んだ。バイリンガルの強みが生かせる職場で働いていたが、日本の会社で働きたいと思い、2021年東洋建設に入社。契約の締結に必要な交渉業務に従事する。「建設はもちろん洋上風力のことも聞いたこともなくて、入社したら勉強ばかりだった」と入社当時を振り返る。  強みは「日本語と英語が話せて、両国の文化に理解があること」と自負する。交渉では文化や商習慣が国ごとで違う。交渉は「とても神経を使う仕事」と認識し、相手の会社の方針やスタンスを深く知るなど事前準備に余念がない。「意味やニュアンスをうまく伝えることが大事だ」という。  直接的にものづくりには関わっていないが、「契約業務はプロジェクトにとって土台」と考えている。成果物を実際に見ると、「その裏側に私の仕事があったことを実感し、やりがいを感じる」。  「日本の洋上風力市場は大きくなる」と見据え、「東洋建設がトップクラスになるよう頑張りたい」と力を込める。「この経験を生かして、今後も海外企業との関係に取り組みたい。契約交渉や会議の通訳、資料の翻訳であっても、良いコミュニケーションを通じて、東洋建設と広い世界の『ブリッジ』になりたい」と笑顔を見せる。  東洋建設洋上風力事業本部管理部係長 from...

久米設計、大成建設ら/ASHRAEの公共施設・コミッショニング部門で1位に

 久米設計、大成建設らがコミッショニング(性能検証)を担当した「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所新本館・研究棟」(名古屋市北区)が、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が主催する「ASHRAE Technology awards」の公共施設・コミッショニング部門で1位に選ばれた。コミッショニング単独での受賞は国内初。実施設計段階から性能検証・分析に取り組み、竣工後の運用改善で省エネ率100%以上の「net-ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」を実現した。  新本館・研究棟は県がPFIのBTO(建設・移管・運営)方式を導入して建替事業を進め、2019年春に運用を開始している。建物はS造4階建て延べ8147平方メートルの規模。新開発の熱駆動のヒートポンプを用いた2温水回収ジェネリンクや太陽熱集熱パネルなど、自然エネルギーを最大限に活用した超高効率熱源システムを導入。このほか、自然光を利用した照明エネルギー削減システム、単結晶型太陽光発電設備など、多種多様な創エネ・省エネ技術を駆使し、計画値で「Nearly ZEB」を達成した。  久米設計は基本設計・実施設計監修・工事監理と性能検証(実施設計以降)を県から受託した。第三者性を確保するために設計担当者とは別の性能検証チームを組成し、性能検証業務を推進した。PFI事業者の「あいちZEBサポート」は大成建設グループで構成され、実施設計と施工を大成建設、維持管理を大成有楽不動産がそれぞれ担当。竣工後から、大成建設エネルギー本部(現クリーンエネルギー・環境事業推進本部)のZEBサポートセンターも性能検証などの関連業務に携わった。  愛知県や設計・施工・運用者・利用者等の関係者らによるコミッショニング会議、ZEB推進会議を定期的に開き、名古屋大学の協力も得て各フェーズで綿密な性能試験・検証を実施。その成果として操作説明書や運用マニュアル、エネルギーレポートなどを適宜作成してきた。運用フェーズではエネルギー消費量の確認と削減活動に努め、運用開始から3年目の実績値として1次エネルギー消費量を101%削減し、net-ZEBを達成した。  今回の受賞は、久米設計として昨年の世界最優秀賞に輝いた「帯広厚生病院」(北海道帯広市)に続いて2年連続となる。コミッショニングを主導した同社環境技術本部ダイレクター兼環境計画センター長の横山大毅氏は「完成後の設備システムの試運転で予想外のことが多少発生し、各種データを分析しながら実性能のチューニングやシミュレーションモデルの再現性向上などに取り組んだ」と振り返る。  今後、省エネや脱炭素化関連の法規制が一段と強化される中、「公共施設もZEBが必須となり、工夫された設備システムほど性能検証が重要になる」と指摘。本案件の受賞を機に「国内でコミッショニング導入の動きが広まればうれしい」と喜びを語る。 from...

国交省/市区町村の入契制度実情踏まえ効果的に改善支援、国と県で個別訪問など想定

 国土交通省は市区町村の入札契約制度の改善を促すため、地域の実情に応じた支援策を都道府県との連携で展開する。都道府県単位で市区町村が参加する勉強会を開催するなど一律の支援策を講じてきた「ハンズオン支援事業」の取り組み内容を変更。2025年度の同事業では、募集・選定した都道府県と前もって調整し、地域特有の課題などを踏まえた効果的な働き掛け方を検討する。改善が遅れている市区町村の首長や幹部に、国交省と都道府県が一緒に個別訪問するなどの方法を想定する。  同事業は都道府県を応募主体に支援先を決定し、国との連携で市区町村の制度改善を後押しする。初回の23年度は茨城(管内市町村数44団体)、長野(77団体)、岐阜(42団体)の3県、24年度は埼玉(63団体)、新潟(30団体)、佐賀(20団体)の3県を支援した。  市区町村には発注関係の専門職員が少ないなどマンパワー不足に悩む団体が多い。支援は1年の期間中に勉強会を複数回開き、団体ごとに課題抽出から改善ロードマップの作成までを実施。支援実施後のフォローアップでも国と都道府県が連携している。  一方、全国的に見ると制度改善の状況は地域ごとに濃淡があり、都道府県域内の団体数や課題の特性に応じ効果的な働き掛け方も異なる。そこで25年度は支援内容の詳細を、都道府県との意見交換を踏まえ決定する方針とする。3月初旬まで都道府県からの応募を受け付け、最終的に2団体程度を選定する予定だ。  具体的な支援内容として市区町村の幹部への個別訪問に加え、市区町村の相談を個別で受ける会議体の設置などを想定する。地域内の優良な取り組み事例を収集し、具体的な障害や解決方法などの要点を水平展開することも例に挙げる。  国交省の調査によると、首長との直接対話や担当部局への個別訪問で市区町村に制度改善を働き掛ける都道府県は少数だが一部ある。工事担当だけでなく財政部局にも説明したり、市区町村に抱える課題や支援の在り方をアンケートした上で対応したりするなど、有効な工夫事例もある。 from...

新潟県/胎内川ダム洪水吐き増設、鹿島JVに

 新潟県は6日、WTO対象の「胎内川河川総合開発(二級)胎内川ダム洪水吐増設工事」の一般競争入札結果を発表した。落札者は鹿島・福田組・帆苅組JVで落札金額は49億8940万円(税抜き)。技術評価型総合評価方式、見積もり活用方式の試行工事。入札には4者が参加した。  工事内容は、ダム工(洪水吐き工、基礎処理工)、放流設備(クレストゲート製作・据え付け)、仮設工、取り壊し工、雑工各一式。  工事場所は新潟県胎内市下荒沢。工期は2031年3月14日まで。  同ダムの洪水吐きは現在一つだが、もう一つ設置して二つにする計画。既設堤体に放流設備を増設する際に使用する上流仮締め切りゲートの詳細設計は八千代エンジニヤリングが担当。CIMモデル作成業務も同社が担当した。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171302 via 日刊建設工業...

長崎市/平和公園スポーツ施設再配置、陸上競技場跡にプール移転

 長崎市は7日、平和公園の西地区(松山町)にあるスポーツ施設の再配置について検討する同市平和公園再整備基本計画検討委員会(委員長・西岡誠治長崎県立大学教授)を開き、陸上競技場とソフトボール場を公園外に移転し、陸上競技場跡地に市民総合プール、ソフトボール場跡地に弓道場とテニスコートの一部をそれぞれ配置する再整備基本計画報告書の素案を示した。  再配置は、長崎県が計画する地域高規格道路の長崎南北幹線道路が公園内の複数のスポーツ施設の上空を通過するため、スポーツ施設の再配置や歩行者動線の在り方などを検討している。  素案によると陸上競技場跡地の南側にプール(敷地面積約1万4000平方メートル)、北側に芝生広場(約8000平方メートル)、これらを囲むように600メートルの外周園路を整備。芝生広場北側には平和伝承施設を設ける。屋内プールの機能や規模、位置、屋外プールの在り方などは計画策定後に検討する。  陸上競技場については、中部下水処理場跡地(茂里町)に陸上練習場としての機能を移転。長崎南北幹線道路の高架下となるプール跡地には多目的空間(スポーツ小広場)を整備する。  ソフトボール場は市総合運動公園(柿泊町)に再配置。その跡地に必要面積が小さい弓道場と道路整備に支障を来すテニスコートの一部を配置。それぞれの機能、規模、配置については関係団体と協議する。  施設の再配置を巡っては、2023年4月の市長選で初当選した鈴木史朗市長が再検討する考えを表明し、委員会に専門の再検討部会を設置。検討を重ねた結果、24年11月に鈴木市長がプールを同公園内の陸上競技場の場所に再配置する方針を示していた。  市は基本計画に基づいて25年度からPFI導入可能性調査などを進めるとしている。  再整備基本計画策定業務は八千代エンジニヤリングが担当。 from...

警視庁/蔵前・田無警察署を改築、25年度に基本設計に着手

 警視庁は台東区の蔵前警察署と西東京市の田無警察署を建て替えるため、2025年度に基本設計に入る。蔵前署は現在地で改築。新たな庁舎の規模は既存建物の1・7倍に当たる延べ7800平方メートル。設計や工事費を含めた全体事業費は93億円で計画している。田無署は全体で118億円をかけ、近隣の別地に既存の3・5倍となる延べ1・3万平方メートルの庁舎を建てる。  両警察署とも施設が手狭な上、老朽化が進んでいた。新たな庁舎を建設し機能を強化する。  蔵前署の所在地は蔵前1の12の47(敷地面積2208平方メートル)で、既存建物の規模は6階建て延べ4411平方メートル。築51年以上が経過している。改築後は地上8階建て延べ7820平方メートルに拡大する。  工事中は菊屋橋庁舎(台東区)を警察署仕様に改修し、仮設庁舎にする。25年度予算案には基本設計費のほか、仮設庁舎の工事費などを含め3億1065万5000円を計上した。基本設計は26年度まで行う。その後、27、28年度に実施設計、28~31年度に工事を行い、31年度に利用を始める。  田無署の所在地は田無町5の392ほか(敷地面積1613平方メートル)で、既存建物は地下1階地上4階建て延べ3640平方メートルの規模。完成から46年以上が経過し、高経年化が進んでいる。敷地が狭いことから、民間事業者と駐車場の利用契約を結んでいるが、駐車場の返還を求められている。  建て替え予定地は田無町5の314の1(敷地面積3274平方メートル)で、新たな庁舎は地下1階地上5階建て延べ1万2915平方メートルとなる。  25年度予算案には基本設計費として7200万円を充てた。基本設計は26年度まで行い、実施設計は26~28年度に実施。28~30年度に工事を行い、30年度に開設する。既存警察署は31年度に解体する。 from...

三重県四日市市/北勢地方卸売市場再整備具体化へ、整備主体など事業スキーム検討

 三重県四日市市は、老朽化が進む北勢地方卸売市場の再整備を具体化する。2025年度予算案に関係費1425万5000円を計上した。本年度に実施した民間事業者へのサウンディング(対話)調査の結果を踏まえ、整備主体など事業スキームの検討を進める。早期の基本構想策定を目指す。  北勢地方卸売市場(河原田町伊倉712)は1979年に四日市、桑名、鈴鹿の3市が公設公営で開設した。指定管理者制度を経て2010年に完全民営化。施設は3市で共同所有している。敷地面積は11万6269平方メートル。総延べ床面積は4万2594平方メートル。主要施設として青果棟(RC造2階建て延べ7477平方メートル)や水産棟(RC造2階建て延べ4015平方メートル)がある。  取り扱い量の減少や施設老朽化などに対応するため、機能を強化し県内の市場流通拠点として再整備する。本年度の対話では土地・建物の所有権の在り方や余剰地の活用方法について提案を募るとともに、参画意欲や条件などを確かめた。今月中をめどに対話結果の概要を公表する予定。  25年度は本年度に引き続き基本構想の策定作業を進める。対話結果を踏まえ、3市と運営権会社の再整備への関わり方や資金、スケジュールなどについて検討を深める。本年度の基本構想策定業務は流通研究所が担当している。 from...

奥村組ら/シールドマシン遠隔操作システムを工事導入、大阪から台湾現場の操作実現

 奥村組と奥村機械製作は7日、シールドマシンの遠隔操作システムを台湾で施工中の現場に導入し、運転に成功したと発表した。国内のオフィスからマシンを遠隔操作し、掘削や排土が行えることを確認。技術者不足が課題となる中で、オペレーターが現場に常駐せずシールドマシンを稼働できる環境を実現した。通信の安定性と施工の安全性を高め、国内のシールド工事への適用も視野に入れる。  遠隔地のパソコンからインターネット経由でシールドマシンの制御用コンピューターに接続し、マシンを遠隔操作できるようにする。従来のケーブル接続による距離の制約を受けず、インターネットに接続可能な環境であれば国内外問わず導入できる点が強みとなっている。  台湾の新竹市で施工している台湾科学園区発注の宝山シールド工事に同システムを導入した。現場から約1800キロ離れた大阪市内にある奥村機械製作の本社オフィスから遠隔操作を実施。操作を送信してからのタイムラグを1秒以内に抑え、掘削や推進、排土などの主要動作が行えることを確認した。  技能労働者の高齢化や入職者の減少で、高度な専門技能を持つオペレーターが不足している。遠隔操作システムによってオペレーターが現場に行かずに施工できる環境を整備し、複数の現場を兼務できるようにする。新たな技術者の育成に向け、熟練オペレーターが遠隔から技術指導できる体制も整える。 from...

2025年2月7日金曜日

回転窓/AIに悩みを相談

 AIを巡る動きが活発だ。トランプ大統領が米国内のAI関連事業に4年間で77兆円超の設備投資を発表したほか、ソフトバンクグループと米オープンAIが生成AIの合弁会社設立で合意するなど、ここにきて大きなニュースが続いている▼AIは自動翻訳や文章生成、質疑応答など活用の幅が広い。その進化と普及が生活や仕事をどう変えるのかは簡単に予測できないが、人の悩みに答えてくれるAIプログラムも出現している▼京都大学などが対話型AI「チャットGPT」を使って仏教的観点から悩みに回答する「ブッダボットプラス」を開発した。ブッダと弟子のやりとりをまとめた仏教経典の文言の解釈や説明を交えながら相談者の悩みに答える▼ブッダボットプラスの英語版はチベット仏教が国教のブータンで導入される。新年度に100人以上の僧侶が試験的に利用し、改良した上でガイドラインを策定。僧侶だけでなく一般市民も利用できるようにするか議論を進めるという▼AIをはじめ革新的な技術が次々と生まれていく。それらを有効に使っていくには…。こんな悩みに答えてくれるのもAIかもしれない。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171260 via 日刊建設工業...

東京・中央区/木密解消へ独自手法考案、敷地売買の支援や基金の創設

 東京・中央区は木造密集地域の解消に向け、まちづくりで独自の手法を考案した。無接道敷地など、再建築が困難な敷地を申請に基づき区が買収。関連する手続きをワンストップで支援して申請者の負担を抑える。既存建物の除却費用も補助する。施策の原資として2025年度に「密集街区環境改善まちづくり基金」を創設。7月に申請受け付けを開始する。  6日発表した25年度当初予算案に関連経費1億1012万9000円を計上した。能登半島地震では石川県輪島市の朝市通りをはじめ、木造家屋が密集するエリアで大規模な延焼が発生。区はこうした状況を踏まえ、新たな施策を通じて木造密集地域の解消を急ぐ。  区はまず敷地所有者からの相談を受け付ける。ニーズに応じて申請時に必要な土地の境界確定をはじめ、建物解体業者との調整や、売買契約、所有権移転登記などで必要な書類作成をサポート。申請受け付け後は敷地を不動産評価にかけ、所有者から価格面の合意を得た上で買い取る。  買い取った土地は無電柱化施策で必要となる地上機器設置スペースや、防災備蓄倉庫、消火器の設置場所などとして活用する。区は「取り組みを通じ、安全・安心な市街地の形成を図る」としている。 from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171259 via...

鹿島/クワッドアクセルを他社施工3現場に導入、システム適応性高め広く普及へ

 鹿島は自動化施工システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)を、他社が元請施工の三つの現場に適用した。自動ブルドーザーや自動振動ローラーを導入。建設会社と連携しクワッドアクセルを試行的に使用してもらうことで業界に広く普及させるのが狙い。さまざまな建設工事に導入し、システムの適応性をさらに高める。  導入したのは▽松島初原土地区画整理事業(松島イノベーションヒルズ)(施工者=日本国土開発、国土開発工業)▽長与町嬉里・丸田地区計画(同=冨島建設)▽桑名市多度町あらめ池地区開発事業(同=水谷建設)-の3現場。自動振動ローラーによる転圧や、自動振動ローラーと自動ブルドーザーなど複数機種による連携作業を行う。  クワッドアクセルは「施工マネジメントシステム」と「自律自動運転システム」で構成する。鹿島はこれまで建設現場の省人化と生産性、安全性の飛躍的向上を目指してダムを中心とした工事に適用し、実績と成果を積み上げてきた。  同社は今後、クワッドアクセルをより多くの現場に適用し、建設機械の自動運転機能と性能の向上を図る。自動化機種を増強し、適用可能な工種や作業を拡大するとともに、現場規模や使用条件に合わせて柔軟に対応できる汎用(はんよう)性の高いシステムへ発展させるための技術開発を進める。 from...

沖縄県/マリンタウン国際会議・大型展示場整備、25年度に基本計画改定着手

 沖縄県は、BT(建設・移管)+コンセッション(公共施設等運営権)方式のPFIで計画する「沖縄県マリンタウン国際会議・大型展示場整備運営等事業」について、基本計画の見直しに向けた検討に着手する。4月にも計画改定などの検討業務の委託先選定手続きを開始し、6月ごろに業務委託する。計画見直しでは事業スケジュールや事業手法などを再検証する考え。PFI事業者選定の入札再公告は早くても2026年度以降となる見込み。  県は25年度当初予算案で計画改定業務の委託費を含む「マリンタウン大型MICE施設整備・エリア形成事業」に7600万1000円を計上した。  事業では国内外のMICE(国際的なイベント)需要の呼び込みを目指し、西原町東崎と与那原町東浜にまたがる中城湾港マリンタウン地区に大型MICE施設と宿泊、商業などの民間収益施設を一体的に整備する計画。  24年6月に公告した一般競争入札(WTO対象)では、参加表明書の提出がなく不調になった。建設業の人手不足や、事業の要件とされていたホテル事業の運営に対する懸念の声などが上がっていた。25年度は事業の方式や範囲、実現性に関する課題を丁寧に検証し、早期の再公告に向けた準備に取り組む。  公共施設の中心となる「大型MICEゾーン」(敷地面積約14・5ヘクタール)の施設面積は展示場が1万平方メートル以上、多目的ホールが7500平方メートル以上、会議室が20~30室計3400平方メートル以上、2000台以上の収容の立体駐車場を想定。  併せて、同ゾーンの西側にある「H3-Tゾーン」(約1・14ヘクタール)内にシャトルバスやタクシーの乗降場となる交通ターミナルなど、民間収益施設として大型MICEゾーンの東側に位置する「H1ゾーン」(約3・47ヘクタール)でのホテル整備を必須提案としていた。 from...

五洋建設ら研究会/環境配慮型コンクリに再生骨材使用、製造過程でCO2を7割削減

 五洋建設ら13社が参加するBFCCU研究会は、環境配慮型コンクリート「CELBIC(セルビック)」に、再生骨材を使用した「CELBIC-RA」を開発した。解体ガラなどからリサイクルした再生骨材を使用し、低炭素性と資源循環性を付加した。製造~保管の工程を経て二酸化炭素(CO2)を固定したCCU材料である再生骨材を使用するため、製造過程で一般のコンクリートと比較して最大70%程度のCO2を削減できる。  CELBIC-RAは、結合材の70%に高炉スラグ微粉末を使用したCELBICに再生骨材を使用している。再生骨材は、解体ガラなどを主な原料として製造され、CO2と反応するセメントペーストが含まれていることから、製造~保管の工程を通じてCO2を固定できる。CO2を固定するセメントペーストの量が比較的多い品質区分MやLの再生骨材を使用する。実機実験を通じて、CELBIC-RAの製造と品質管理手法を確立。構造体コンクリートとしての性能も確認した。JIS A 5022に規定されている「再生骨材コンクリートM」に該当するため、場所打ち杭や基礎などの建築構造物に適用できる。  同研究会は五洋建設が幹事を務め、▽青木あすなろ建設▽淺沼組▽安藤ハザマ▽奥村組▽熊谷組▽鴻池組▽鉄建建設▽東急建設▽東京テクノ▽東洋建設▽長谷工コーポレーション▽矢作建設工業-の13社で構成している。今後、CELBIC-RAを実現場で普及・展開を図る。 from...

2025年2月6日木曜日

阪神高速会社ら/大阪市で阪神・淡路大震災30年特別講演会・座談会開く

 阪神高速道路会社と阪神高速先進技術研究所は4日、大阪市内で「阪神・淡路大震災から30年特別講演会・座談会」を開いた。関西圏の人流・物流を支える阪神高速グループとして、震災から得た経験や教訓、技術を風化させず、どのように未来へつないでいくのか。座談会には震災を経験したグループ社員が登壇。当時の状況や対応を振り返り、今後の大規模地震への備えなどを議論した。  阪神高速グループの社員ら約250人が参加。開会に先立ち、原広行総務人事部長が「震災後に入社した社員が約8割を占める中、震災から得た教訓を胸に刻みながら次世代につないでいきたい」と話した。  第1部では国土交通省国土技術政策総合研究所の星隈順一道路構造物研究部長が「阪神・淡路大震災の教訓を活かす、進化させる~最近の震災経験から振り返る~」をテーマに講演した。1992年に国交省に入省後、主に耐震設計の技術基準に携わってきた星隈氏。兵庫県南部地震後に担当した調査や研究、技術基準改定の業務を振り返り、その後の地震に生かされたことなどを解説した。「日本の耐震対策、復旧対策技術は世界トップクラス。ハイテクだけでなく、ローテクな技術を含め海外への展開も期待している」と話した。  第2部は神戸線復旧建設部、神戸管理部などで復旧に尽力した阪神高速グループの社員が「震災当時の経験・記憶の伝承、震災を経てこれからの阪神高速」をテーマに座談会を行った。  パネリストは阪神高速会社の林田充弘保全交通部長、伊藤学技術部長、遠藤厚総務人事部総務担当部長、小林寛保全交通部保全技術担当部長、糸川智章建設事業本部神戸建設部長、葉玉博文神戸管理・保全部保全事業総括課長、庄直之阪神高速技研執行役員、竹中寛人阪神高速パトロール執行役員、下野靖洋阪神高速トール神戸藍那営業所長。コーディネーターを金治英貞阪神高速先進技術研究所理事長が務めた。  神戸線・湾岸線の被害調査や構造物・施設の応急復旧対策、本復旧に向けた設計や施工など、昼夜を問わず持ち場、立場で対応に当たった実体験を振り返るとともに、鋼管集成橋脚をはじめ新たな防災・減災技術なども紹介した。  震災の教訓をどのように未来へつないでいくのか。林田氏は「当時、熱い思いを持って頑張る先輩の姿が本当にかっこ良かった。若い人にもそうした熱意やかっこ良さを伝える必要がある」と指摘。会場の参加者に向けて伊藤氏は「それぞれ人が肌で感じた震災はさまざま。次の世代にも大震災で起こったこと、その後の地震対策などを後世に語り継いでほしい」、糸川氏も「常にお客さまの大切な命を預かっていることを意識し、日々の業務に取り組んでほしい」と呼び掛けた。  庄氏は「何事にも探求心を持って取り組むことが自身の成長につながる」とアドバイス。「当時は前だけを見て仕事をしていた」とという竹中氏は「平時からより良い道路サービスを追求し続けている阪神高速グループであれば、どのような天災でも乗り越えられる」と期待した。  遠藤氏は「非常事態の中、頼もしく働く先輩の姿を間近に見られたことが会社人生の大きな財産。つらい時も当時を思うと頑張れる」と語った。小林氏は「何事もシナリオ通りに進むとは限らない。時には臨機応変な対応も求められる。その中で常に自分がやるべき役割を認識しておくことが大切だろう」と強調した。  葉玉氏は「神戸線復旧建設部では判断や行動の早さ、部署間連携が非常に良かった。必ず前に進めるという気迫が伝わるリーダーの存在が大きかった。これは平時でも共通する」と強いリーダーシップの必要性を指摘。下野氏は「震災未経験者が理解することは難しいかもしれないが、映像や資料、先輩たちの話などから思いを巡らせ、起こった場合にどう行動するかを想像してほしい」と訴えた。最後に金治氏が「インフラ企業にとって安全は最優先事項。阪神・淡路大震災の対応なども含め、日常業務で安全を追求する礎になればと思う」と締めくくった。 from...

回転窓/春の労務単価アップ

 静岡県河津町の「河津桜まつり」が今年も始まった。立春を過ぎ、春の訪れを告げる催事のニュースが少しずつ増えている▼河津桜まつりは今年で35回目。気温の低い日が続いたことで、予報によると開花は20日以降になるそう。まつりの期間中、15、16日と22、23日には能登半島地震の被災地を応援するため「出張輪島朝市」が開かれる▼暦の上で春を迎えても、今季最強・最長とも言われる強い寒気が日本列島を覆っている。日本海側から雪雲が流れ込み、北海道や北陸は5日も記録的な大雪になった地域がある▼そうした各地で多くの建設会社などが除雪に奮闘している。SNS上には「親切な建設会社の社長さんが重機で除雪してくれた」などと、一般の方々から発信された通行止め解除への貢献や生活道路の除雪に対する感謝と応援のメッセージが並ぶ▼石破茂首相が4日の閣僚懇談会で、公共工事設計労務単価の引き上げを指示した。単価は例年2月に公表されており、上昇なら13年連続となる。春の単価アップを重ね、地域とインフラを守っている建設業の処遇改善や担い手の確保につながっていくよう期待したい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171226 via 日刊建設工業...

内閣官房/強靱化実施中期計画策定方針案、上下水道老朽化対策を追加

 内閣官房の国土強靱化推進会議(議長・小林潔司京都大学名誉教授)は5日、国土強靱化実施中期計画の策定方針案を公表した。重点施策に地震や大雨といった複合災害や、気候変動を踏まえた流域治水、港湾の協働防護などを盛り込んだほか、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け上下水道の老朽化対策も追記した。政府は今後、地方自治体などの意見を聞き、3月下旬に開く次回会合で実施中期計画の素案を示す方針。6月に計画の閣議決定を目指している。  策定方針案では、これまでの「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」と「同5か年加速化対策」が着実に効果を発揮していると評価。その上で切迫する巨大地震や激甚化、頻発化する水害により強靱化の「さらなる加速化・深化を図る必要がある」とし、「施策の重点化」と省庁を超えた「施策連携強化」の方向性を提示した。  具体的な施策は▽災害外力・耐力の変化への対応▽人口減少等の社会状況の変化への対応▽事業実施環境の変化への対応-の3項目に整理した。このうち災害外力・耐力の変化への対応では流域治水の推進、巨大地震に備えた戦略的な防災インフラ整備、デジタル技術を活用した災害対応力向上などを盛り込んだ。  能登半島を襲った2024年1月の地震と同9月の豪雨を念頭に、半島の防災・強靱化や、上下水道や送電網などの耐震性強化、複合災害・2次災害への対応強化、住宅・建築物の耐震化なども掲げた。グリーンインフラや官民による港湾の協働防護、インフラメンテナンスの効率化・高度化といった新たな視点も加えた。八潮市の道路陥没事故を踏まえ「緊急性を要する損傷箇所の集中的な修繕・更新、防災・減災対策との一体的推進」の項目も追記した。  計画期間は26~30年度の5カ年とする考えを示した。事業規模は「おおむね15兆円程度の事業規模で実施中の5か年加速化対策を上回る水準が適切」とした。  策定方針案は同会議でおおむね了承され、来週にも開く関係省庁会議に提出される予定。その後、全国の都道府県や市区町村、経済団体などに周知し意見を求める。3週間程度の期間を設け回答を受け付ける。 from...

自民品確議連/中野洋昌国交相に要望書提出、設計労務単価は率の高い引き上げ必要

 自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」(会長・梶山弘志衆院議員)の幹部が5日、東京・霞が関の国土交通省に中野洋昌国交相を訪ね、建設産業の担い手の処遇改善と円滑な施工確保に向けた要望書を提出した=写真。地域ごとの担い手確保を喫緊の課題と捉え、公共工事設計労務単価の引き上げを重点的に要望。面会後、取材に応じた梶山会長は「(昨年4月に時間外労働上限規制が適用され)働き方改革や週休2日への対応もある。全業種と比較した場合にある程度、率の高い引き上げが必要だ」と訴えた。  梶山会長と佐藤信秋幹事長、古川禎久副会長が要望活動に参加。▽設計労務単価・技術者単価の引き上げ▽国土強靱化の着実な推進▽建設産業の担い手確保の取り組みの推進▽公共工事の円滑な施工の確保の徹底▽賃上げ推進に向けた「総合評価方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」の適切な運用-の5項目を要望した。  中野国交相からは、石破茂首相が設計労務単価の引き上げを4日指示したことを踏まえ「しっかり取り組む」との返答があったという。梶山会長は現場の週休2日を念頭に「週5日でどれだけの収入が月換算、年換算でもらえるか」を引き上げ率の目安に挙げた。  国土強靱化では実施中期計画の早期策定を要望。梶山会長は、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故に触れ「八潮は一例。全国どこでも老朽インフラがある」として万全の対応を求めた。 from...

PFI・PPP協会/老朽化橋梁マネジメント研究会が初会合、契約モデル検討も視野

 日本PFI・PPP協会(植田和男会長兼理事長)は5日、「老朽化橋梁マネジメント研究会」の初会合を東京都内で開いた=写真。老朽化や橋梁の維持管理・更新を巡る課題などの情報を共有し、包括管理や新技術の活用、橋梁の価値の創造などの研究を進める。管理・更新の契約モデルの検討も視野に入れている。初会合では国土交通省道路局、八千代エンジニヤリング、前橋市の担当者が橋梁の管理やメンテナンスについて講演した。  研究会は外部講師の講演会、分科会による研究、意見交換などを行う。協会の非会員からも参加を幅広く募っていく。分科会は包括管理・統廃合、新技術活用推進、橋梁の新たな価値創造の領域での設置を予定している。  初会合の講習には行政38団体、民間121団体から300人以上の申し込みがあった。会場で国交省は点検要領や新技術・技術基準について、八千代エンジニヤリングが包括民間委託の事例、前橋市は橋梁メンテナンスについて説明した。  冒頭、植田理事長は「公共施設、インフラすべての分野で官民連携の果たす役割は大きい」と話した。官民連携事業の契約、リスクの重要性を強調し、「費用と発注とで(受発注者の)お互いに不幸なことが包括的民間委託で起きている」と指摘した。業務範囲やリスクの明確化を求め、契約モデルの検討に意欲を示した。橋梁の存在を前向きに捉えた価値創造の取り組みを進める考えも示した。 from...

長崎県/浦上ダム(長崎市)再開発、25年度に貯水池掘削に着手

 長崎県は、浦上ダム(長崎市昭和町、浦上川水系大井手川)の再開発で、2025年度に貯水池の水中掘削に着手し工事を本格化する。再開発は長崎水害緊急ダム事業の一環で水道専用の重力式コンクリートダムに洪水調節機能を加える。掘削工事は27年度までを予定し、その後、ダム本体や下流取り付け河川分水路などに取りかかる。  貯水池掘削工事は水道用水への影響などから水中掘削のみで施工する。掘削土量は約48万立方メートルで、全量を県内業者で対応することを予定している。掘削工1工区は既に公告済みで、3月18日に開札する。工事概要は工事長360メートル、貯水池掘削工4万8500立方メートル。工期は660日。  下流取り付け河川分水路はダムの放流量増加に伴い大井手川から浦上川への合流地点の流下能力不足が見込まれるため、合流地点の西側に延長約80メートルのバイパス水路を整備する。  ダム本体工事は堤体の活用できる部分を除いて撤去し、コンクリートを打ち替えて改築・かさ上げする。改築後のダム諸元は堤高21・1メートル、堤頂長94・9メートル、総貯水容量249万トン。天端高は30センチのかさ上げとなる。事業費は約210億3000万円。  21年度の県公共事業評価監視委員会の再評価では、25年度の貯水池掘削工事完了、26年度のダム本体工事着手、29年度のダム本体工事完了を予定しているが改めて工期を見直す必要がある。  緊急ダム事業は長崎大水害の翌年の1983年に建設事業に着手し、浦上ダム再開発が最後の事業となる。全体事業費は約740億円を見込む。 from...

東京・品川区/新庁舎整備の総事業費706億円、春ごろ建築・設備工事公告

 東京・品川区は新庁舎整備で総事業費が706億8500万円となる見通しであることを明らかにした。区は2025年度当初予算案に「新庁舎整備事業」の関連経費として83億1758万円を計上した。春ごろに建築を含む3工事の入札手続きに入る。建築と電気設備、機械設備の3工事を分離発注する方針で、夏をめどに入・開札する。建設工事を経て29年9月の開庁を目指す。  基本・実施設計などの関連業務は日建設計、設計段階で建物機能や諸条件を検討する管理支援業務は三菱地所設計が担当した。  新庁舎の建設地は広町2の2の5(敷地面積8341平方メートル)。JR東日本が計画する「広町地区開発」の事業地内に位置し、第1種住居地域、基準容積率は600%。施設はS一部SRC造(免震構造)地下2階地上14階建て延べ6万1000平方メートルの規模。建物高さは約61・7メートルを想定する。  新庁舎のコンセプトは、幸福を指す「ウェルビーイング」(Well-being)と包摂を意味する「インクルージョン」(Inclusion)、品川(Shinagawa)の3語を英語表記した頭文字「WISH」に設定。未来に希望の持てる区政と新庁舎をつくるというメッセージを込めた。 from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171227 via...

盛岡市/新学校給食センター整備事業、25年度に整備手法など調査

 盛岡市は新たな学校給食センターの建設に向け、2025年度に整備手法を検討するための調査に入る。整備パターンやスケジュールなどを盛り込んだ次期「学校給食施設整備実施計画」を年度内に策定。公募型プロポーザルなどを含めた発注方式は検討中で、25年度予算案に計上する。新学校給食センターは早ければ30年度にも供用を開始し、1日当たり1万食程度を市内に供給する。建設候補地は市北部の下厨川地区とする方針を固めている。  現行の「第二次学校給食施設整備実施計画」では、(仮称)盛岡学校給食第2センターと(仮称)盛岡学校給食第3センターを個別に整備する案と、施設を集約する案の2パターンを比較検討した。第2センターの供給能力は5000食程度、第3センターは5500食程度。施設を集約する場合は1万0500食程度を想定した。候補地は市内6カ所を対象に調査し、幹線道路へのアクセスや敷地条件などを考慮した結果、下厨川の厨川住宅敷地が最適と判断した。  現在、市では家庭からの弁当持参を併用する「給食自由選択制方式」を導入しており、市内11校が採用している。新学校給食センターの整備で市内の全小中学校にパンか米飯とおかず、ミルクを提供する「完全給食」の提供が可能となる。  「新たな学校給食センター整備に係る調査業務」は日建設計総合研究所(東京都千代田区)が担当した。 from...

静岡県焼津市/新市立総合病院建設事業、基本設計を再度見直し

 静岡県焼津市は、2023~24年度の2カ年で基本設計を見直した「焼津市立総合病院新病院建設事業」について、25年度も再度、設計を見直す方針を決めた。資材価格や労務費の高騰で病院経営に影響を与えかねないほか、病床稼働率もコロナ禍前の状態まで回復していないため、受療動向を見極めながら病床数や規模などを再検討しコストを抑制する。30年度以降の早期開院を目指す。  19年度の基本設計着手時は病床約450床、延べ約3万8000平方メートルの規模を想定。新型コロナウイルス感染症の拡大や許可病床数の縮小などを受け、23~24年度で基本設計を見直した。  病床は423床とし、▽病棟形状と可変性のある病室配置▽各診療部門の合理化、建物寸法▽手術室削減(9室から8室)▽一般レストランの取りやめ、講堂規模を縮小▽心臓カテーテル室の整備-など、病院機能の強化、維持を図りながら見直しを実施。環境面ではカーボンニュートラル(CN)対応(ZEB Oriented)、雨水調整池の拡張など周辺環境にも配慮した。病院棟はS造9階建てで免震構造を採用。9階に電気室と機械室を配置する。リニアック棟はRC造2階建てで耐震構造とした。  しかし、建設資材の高騰などで概算事業費が急増。このまま事業を進めるにはリスクが大きいため、経営強化プランに基づき引き続き経営改善に取り組むとともに、基本設計を再度見直すことが必要と判断した。見直し作業は梓設計が引き続き実施する。順調に進めば26~27年度に実施設計を行う予定だ。 from...

大成建設、大成ロテック/福島県田村市に新研究施設開設、民間初の舗装評価路を整備

 大成建設と大成ロテックは、福島県田村市で次世代舗装技術の開発や環境課題の解決などに取り組む新たな研究施設を開設した。国内民間企業で初の「舗装評価路」(1周延長909メートル)を整備し、24時間連続で5台の自動運転荷重車両(自動運転レベル4相当)を同時走行させることによって舗装の耐久性を短期間で評価する。今後はゼロウオータービルとなる「自然共生型管理棟」も整備。舗装評価路の内側と外周部の造成地には「ネイチャーポジティブ実証フィールド」も配置し、自然再生の長期実証に乗りだす。  所在地は田村市常葉町山根宇藤1の9。敷地面積は約14・4ヘクタール。施設は▽延長100メートル直線区間2本を含む舗装評価路▽5台の自動運転荷重車両を格納・整備するS造平屋870平方メートルのトラックヤード▽給油機1台と1万リットル地下タンクを備えた給油施設▽ゼロウオータービルと木架構汎用(はんよう)化技術の実証施設を備えたW造2階建て延べ585平方メートルの自然共生型管理棟-などで構成する。  舗装評価路では、レベル4相当の自動運転荷重車両(最高速度40キロ)を5台同時に走行させ、短期間で舗装用材料や構造の耐久性を評価。理論設計方法の検証や舗装材料の力学試験結果などから耐久性を予測する手法確立に向け実証実験などを行う。耐久性を向上させ舗装のライフ・サイクル(LC)全般で二酸化炭素(CO2)排出量削減にも貢献できるとみる。  自然共生型管理棟は2026年度に供用開始を予定する。雨水や再利用水などの活用によって上水利用量との相殺を目指すゼロウオータービルとして整備することで、将来的に上下水道インフラが十分整備されていない地域への普及を視野に入れる。  ネイチャーポジティブ実証フィールドでは、舗装評価路内側に希少生態系の半自然草原を創出。同外周部では地域の種苗を用いて質の高い自然の森を早期に創出する。さまざまなネイチャーポジティブ関連技術に役立てる。  田村市で開設した大成建設グループの新研究施設は、国内初のゼロカーボンビルを建設している「大成建設グループ次世代技術研究所」(埼玉県幸手市)プロジェクトに続く取り組みになる。 from...

2025年2月5日水曜日

回転窓/急がれる温暖化対策

 昔の人は世の中の恐ろしいものやかなわないものを〈地震・雷・火事・親父(おやじ)〉と表現した。このうち駄じゃれと思っていた〈親父〉は、台風を意味する大山風(おおやまじ)がなまったとする説もある▼防災意識を高めるこのことわざは、江戸時代後期には使われていた。言葉だけでなく、地震や火事から逃げ惑う人々を描いた絵からも天災の恐ろしさが伝わる▼米ロサンゼルスで先月7日に発生した山火事は2週間以上続き、家屋約1・6万棟が焼失。2028年の五輪開催を控える同地の一日も早い復興を願う▼異常気象を研究するワールド・ウェザー・アトリビューションは、地球温暖化で火事が起きやすくなっているとする分析リポートを発表した。現地では昨冬に大雨が降り、逆に今冬は雨がほとんど降らなかったことで空気が乾燥。成長した草木に火が燃え移り被害が拡大したという▼トランプ大統領は来年1月に気候変動対策の国際ルール「パリ協定」から正式に離脱すると表明した。災害を減らすには世界各国が協調して温暖化対策を推進していくことが求められる。先人の言葉を教訓にできることから始めたい。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171178 via 日刊建設工業...

日立ビルシステム/社長に山本武志副社長が昇格、4月1日就任

 日立ビルシステムは4日、山本武志副社長が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。網谷憲晴社長は3月31日付で退任し、4月1日付で日立製作所執行役専務に就任する予定。  山本 武志氏(やまもと・たけし)1984年鳥取県立米子工業高校卒、日立エレベータサービス(現日立ビルシステム)入社。2021年取締役、23年常務などを経て24年4月から現職。鳥取県出身、59歳。 from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171176 via 日刊建設工業...

CM業務売上高が400億円市場に拡大、単価上昇や業務効率化が奏功/CM協会調査

 CM(コンストラクションマネジメント)業務が売上高400億円の市場に拡大したことが、日本コンストラクション・マネジメント協会(CM協会、川原秀仁会長)の調査で分かった。2024年度のCM業務市場調査によると、プロジェクト件数は2年連続で2500件を超え、CM業務の売上高が407億円(23年度調査363億円)となった。担い手不足が課題となる中、需要の増加や技術者単価の上昇、業務の効率化など複合的要因により売り上げを押し上げた。  同調査は今回で7回目。同協会が運用する認定コンストラクションマネジャー(CCMJ)資格者が在籍する設計事務所や積算事務所、CM専門会社ら374社と、建設コンサルタンツ協会(建コン協、中村哲己会長)のPM(プロジェクトマネジメント)専門委員会所属企業18社の計392社が対象。49社の回答を得た。  CM業務を受託した企業は35社だった。直近の決算期でCM業務の売上高が前期比で大きな変化がなかった企業と、増加した企業の合計は90%超と、23年度調査の約70%を大きく上回り、過去最大となった。  用途は「事務所(民間)」が最多で、「生産・倉庫・物流施設」と続いた。データセンターや半導体工場などが含まれる「生産・倉庫・物流施設」は21~24年度の4年間で2倍弱に拡大しており、製造業などの旺盛な投資意欲を反映した結果となった。  普及に向けた課題は、建築分野、土木分野ともに「担い手不足」が90%を超えた。「発注者のCMに対する認知度」や「CM業務以外の本業の繁忙」が障害になっているとの回答も目立った。 from...

熊本市/新庁舎基本計画策定・基本・実施設計等、日建設計・太宏設計事務所JVに

 熊本市は4日、「熊本市新庁舎整備基本計画策定及び基本設計・実施設計等業務委託」の公募型プロポーザル(WTO対象)で5者を対象にヒアリングを行い、契約候補者に日建設計・太宏設計事務所JVを選定したと公表した。28日までに契約締結する。  業務では新庁舎整備に向けた基本計画の策定と、新庁舎の基本・実施設計などを一括で行う。履行期間は2028年3月15日まで。  本庁舎と中央区役所庁舎を2棟整備する。予定地は本庁舎がNTT西日本所有地(中央区桜町3の1、敷地面積9987平方メートル)、中央区役所庁舎が市役所花畑町別館跡地(花畑町3の1、2749平方メートル)。  基本計画策定では、▽建設予定地や隣接地といった諸条件の整理▽整備コンセプト▽必要な機能▽適正な規模や施設の配置計画の検討▽概算事業費の算定-などを行う。基本計画の策定期間は25年度まで。  基本・実施設計は本庁舎と区役所庁舎に分けて行う。基本・実施設計はいずれも建築、設備を一括で実施。業務期間は基本設計が26年度まで、実施設計が27年度までを予定。  基本構想によると、新庁舎の必要延べ床面積は、本庁舎延べ5万2200平方メートル(市役所延べ4万5700平方メートル、議会棟延べ6500平方メートル)、中央区役所延べ7800平方メートル。駐車場面積は1万0300平方メートル。  24年度中に実施設計の契約を締結していることが合併推進債の活用条件であるため、実施設計までを一括で発注する。  プロポーザルの次点は、久米設計・桜樹会・古川建築事務所JV。 from...

スコープ/リバスタの技能者向けポイント付与サービス、建設現場で「ポイ活」広がる

 リバスタ(東京都江東区、高橋巧代表取締役)が提供する現場技能者向けポイント付与サービス「ビルダーズポイント」の採用件数が順調に増えている。昨年12月時点で、約15社が一部の現場に導入し、技能者による専用アプリケーションの登録件数も増えている。ポイントを付与される技能者だけでなく、元請会社も「技能者とのコミュニケーションツールとして利用できる」とし、双方にメリットがあるという。同サービスを元請である建設会社はどんな目的で、どのように使っているのか。現場で採用している西松建設の森田正登所長に話を聞いた。  ★貯まったポイントはPayPayに★  同サービスは、建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードタッチや日々の入退場認証、安全講習会への参加など、元請会社(ゼネコン)が設定した条件を満たせば専用アプリケーションを通じて技能者にポイントが付与される仕組み。専用アプリは「App Store」や「Google Playストア」で、技能者個人のスマートフォンにインストールできる。  サービスの大きな特徴は、元請企業から付与されたポイントをPayPay(ペイペイ)マネーライトに変換でき、PayPayと提携する加盟店やサービスが利用できること。いわば換金性のあるポイントで、技能者は貯まったポイントを自由に使える。リバスタが開発し、2023年10月から鹿島、戸田建設、西松建設の3社と共同で実証実験を実施。その効果を確認した上で、昨年6月に本格的なサービスを開始した。    ★毎日のタッチで50ポイント付与★  では、ゼネコンはどういう目的で、何を対象にポイントを付与しているのか。一昨年の実証実験にも協力し、昨年8月から本格導入した西松建設中部支店滋賀竜王出張所の森田所長は「本社のDX部門から実証実験への協力要請があり、短期間だったが下請企業5~6社に限定して20~30人の技能者に登録してもらった。毎月1回行っている安全大会の参加者に1000ポイントを付与したが、登録していない周りの技能者から“いいな”という声が多数あり、これは面白いと思い、昨年4月に始まった物流施設の現場に本格導入した」。  導入に当たり、現場の職員だけでなく、本社や中部支店と打ち合わせを実施。ポイントの付与を〈1〉毎月行う安全大会の参加者に1000ポイント〈2〉安全大会での優良表彰者(2人程度)に3000ポイント〈3〉CCUS登録者の現場タッチ1回当たり50ポイント-とした。  対象は現場で働く全技能者。新規入場者教育の際、ビルダーズポイントや専用アプリのインストール方法などを説明し、利用を促した。昨年12月現在で現場に入場する技能者は100~120人。このうち40~50人が専用アプリを登録したという。  森田所長は「もっと多くの技能者が登録するかと思ったが、PayPayを使っていないなどの理由で、利用率は半分程度にとどまった。本社や支店にはポイントによる支出を1カ月当たり15万円程度として了承を得たが、その金額には達していない」。  ★働く者同士の距離感縮む★  このポイントサービスで元請企業は新たな金銭的な負担が生じる。これまでも安全大会でクオカードを配布するなど、安全意識の醸成に向け、技能者に対し一定の支出をしてきた。ただ、CCUSの登録者に毎日タッチするだけで50ポイントとなると、その負担は膨らむ。  森田所長は「技能者の安全意識が高まり、CCUSの加入が増えて現場のタッチ率が高まれば、それは大きな意義がある」と強調する。さらに「これまで元請企業は1次、2次下請などの企業と企業同士のお付き合いという感じだったが、このサービスは現場で働く者同士の新たなコミュニケーションツールの一つになり、距離感が縮まる。最終的には技能者不足の解消にもつながるのではないか」と指摘する。  一方、ポイントをもらった技能者はどう思っているのか。リバスタの調査によると、「この仕組みがある現場に行きたいとなるだろう」「ノベルティなどをもらうよりも、自分で好きなものを買えるのがうれしい」などの声のほか、「何をすればポイントをもらえるのか、自分たちでも考えてみたい」という意欲的な意見もあったという。  ★ささやかな楽しみが現場選び左右?★  現場はこれまでは躯体関係の技能者が多かったが、1月以降は仕上げ関係の技能者が増え、毎日200~250人になった。「これから100人程度は登録してくれるのではないか。ポイントがPayPay以外のサービスでも使えるようになれば、もっと利用率が高まるだろう」(森田所長)。  毎日現場に行けばポイントが付く現場と、付かない現場。技能者はどちらの現場に行きたいと思うのか。給与とは別にもらえるポイントで現場の帰りがけに飲み物やお弁当が買える。家族にお土産を買って帰る人もいるかもしれない。現場での「ポイ活」を通じたささやかな楽しみが、技能者にとって現場選びの理由の一つになる日が来るかもしれない。 from...

クリコン/安全性と耐久性高めた低炭素コンクリを開発、製品展開へ研究会発足

 住友大阪セメントグループのクリコン(滋賀県愛荘町、池ノ内基士社長)は従来の低炭素型コンクリートに比べ、耐久性や製造時の安全性を大きく高めたコンクリートを開発した。アルカリ源を、劇物を用いる水溶液から粉体に置き換え作業工程を簡略化。ヒューム管を試作し性能を実証した。4月に任意団体「GEPC(ジオエレメント・プレキャストコンクリート)研究会」を設立し、製品展開へ参加企業を募る。  「ジオエレメントコンクリート」はセメントの代わりに、二酸化炭素(CO2)排出量が少ない高炉スラグ微粉末やフライアッシュ(石炭灰)を使用。アルカリ源に劇物のカセイソーダを用いる高アルカリ性水溶液ではなく、オルトケイ酸ナトリウムを主とする粉体「ジオエレメント」を使い安全性を高めた。試作したヒューム管ではセメントコンクリート製に比べ耐酸性、耐凍結性に優れることを確かめた。日本下水道協会が定める規格も満たした。  セメントコンクリートと同様の工程と設備で製造可能。製造コストは1・2~1・3倍程度を見込むが、1トン当たりのCO2排出量を約80%削減できるという。ジオエレメントの基本技術は住友大阪セメント、大阪産業大学、ケミカル工事の3者で特許を出願している。  研究会ではヒューム管以外の適用や、アルカリ活性材料製品の性能基準の策定などを目指す。事務局はクリコン本社に置く予定。建材メーカーを中心に20社以上の参加を見込む。  4日に東京都港区の住友大阪セメント本社で開いた記者会見で、クリコンの池ノ内社長は「特性を生かした製品開発へ、専門家と企業の橋渡しをしたい。幅広い業種に参加してほしい」と説明。研究を主導する大分工業高等専門学校の一宮一夫教授は「社会実装の加速には学術だけでは難しく、企業の力を借りたい」と述べた。 from...

寿建設、トヨタ/工事現場のCN推進へ実証実験、燃料電池車からの給電でクリーンに

 寿建設(福島市、森崎英五朗社長)とトヨタ自動車が工事現場のカーボンニュートラル(CN)でタッグを組んだ。福島県二本松市の国道4号沿いにある「道の駅安達(上り線)」で寿建設が担うトイレ改修工事の現場で、電動工具の給電にトヨタの燃料電池車「MIRAI」を使う実証実験を始めた=写真。  改修工事は寿建設が担当する国道維持補修の一環。現場ではグラインダーやジェットヒーター、電動ハンマーなどの工具を使用。2日弱程度はMIRAIからの給電で工具が動かせるという。通常の発電機と違い騒音が出ず、二酸化炭素(CO2)も排出しない。  「環境に優しい新たな工事現場として業界のイメージアップにもつながる」と森崎社長。建設業界でCNを実現する具体策として両社は実証実験に大きな意義があるとし、自動車メーカーと協力しながら水素活用の可能性を探る。トヨタは福島県で水素技術を活用した未来のまちづくり活動を展開している。 from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171183 via 日刊建設工業...

2025年2月4日火曜日

九州整備局/本明川ダム建設(長崎県諫早市)に着手、本体着工式開く

 九州地方整備局と長崎県、同県諫早市は2日、「本明川ダム本体工事着工式」を同市本野町の本野小学校で開いた。洪水調節と流水の正常な機能の維持を目的に本明川水系本明川に計画され、本体ダムとしては九州整備局管内初の台形CSGダムとなる。総事業費は約730億円。2032年度の完成を目指す。建設(一期)工事は大成建設・熊谷組・西海建設JVが担当。  着工式には大石賢吾知事や大久保潔重諫早市長、森田康夫九州整備局長、大成建設の田中茂義代表取締役会長らが出席。関係者が鍬入れを行い、1日に行った工事着手の号令の映像を流すなどして着工を祝った。  式典で森田局長は「着工式を迎えられたのは関係各位の多大なるご支援、ご尽力のたまものであり、深く感謝申し上げたい。施工者と協力して地元優先、安全第一で工事を進め、早期事業完了に向けて全力で取り組む」と式辞を述べた。  大石知事は「早期完成が切望される中で、いよいよ本体工事に着手した。地域の方々の生命、安全を守るため県としても皆さんと力を合わせて早期完成に取り組んでいく」とあいさつした。  地元を代表して大久保市長は「安全確保に万全を期されるとともに、地域住民の生活環境に十分配慮いただき、無事故・無災害で素晴らしい施設が完成するようお願いする」と述べた。  諸元は堤高約60メートル、堤頂長約340メートル、天端高151・5メートル、堤体積(減勢工を含む)約62万立方メートル、総貯水容量620万トン。基礎掘削、転流工、CSG製造設備の整備などを27年度をめどに進め、28年度から堤体打設を開始し29年度中に完了する予定。30年度から試験湛水を実施するとしている。  1期工事の内容は、基礎掘削約34万立方メートル、材料採取約24万7000立方メートル、CSG打設約13万立方メートル、コンクリート打設約5万6000立方メートル、補助カーテングラウチング延長約1万4000メートル、カーテングラウチング延長約4000メートル。  長井健二作業所長(大成建設)の話  「地元に迷惑を掛けないよう地域ファーストで仕事をしていきたい。台形CSGダムの技術を継承するための技術者育成も使命と思っている」。 from...

回転窓/誰もが楽しむスポーツ

 大人になってから始めたという人が多いゴルフ。子どもたちにその楽しさを伝えようと、東急不動産グループが関東圏で運営するゴルフ場を中心に「ジュニアゴルフレッスン会」を定期的に開いている▼川崎市内で先日行われたレッスン会は雨天ながらも、地元の小学生や保護者らでにぎわいを見せた。今回は初めてクラブを振る子どもたちが多く、手軽に楽しめるスナッグゴルフでプロのコーチらが指導。自然あふれるコースで人生初のゴルフを楽しんでいた▼クラブをそろえ、打ち方を学び、コースまで出かけてプレーするゴルフは、気軽に始められるスポーツとは言い難い。レッスン会の関係者は「プロを目指す人たちは一握り。子どもから大人まで誰もが楽しめるスポーツとして普及に取り組む」と思いを明かす▼少子高齢化や人口減少はゴルフ場業界にも深刻な問題となっている。キャディー不足のほか、猛暑で芝の生育管理が難しくなり維持費も増加。ゴルフ場も生き残りに必死だ▼コロナ禍で復活の兆しが見えたブームも今は落ち着いた感がある。地域密着のイベントなど地道な活動がゴルフ人口の増加につながろう。 from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171140 via 日刊建設工業...

八潮市の道路陥没事故/運転手の救助難航、復旧工法の検討開始

 1月28日に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故から1週間が経過した。重機搬入用のスロープは完成したものの、内部へ水の流入が続き、転落したトラックドライバーの救助は難航。現場では救助支援や復旧のため建設会社が懸命の作業を続けている。県は事故原因究明と本格復旧に向けた検討委員会を2日に立ち上げた。崩落の原因は地下の下水道管路破損とされ、全国で下水道幹線の緊急点検が始まるなど影響が広がっている。  救助や復旧が技術的に難しいことから、県下水道事業課は国土交通省や日本下水道事業団(JS)、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)、埼玉県建設業協会(埼玉建協、小川貢三郎会長)、日本下水道管路管理業協会(長谷川健司会長)などに協力を要請。このうち日建連加盟社からは鹿島と大成建設が作業員や建設機械を派遣した。  現場では2日からの雨もありスロープ完成後も救助活動は進んでいない。土砂やがれきの撤去を進めるとともに、さらなる地盤崩落を防ぐため穴の周辺に薬液注入を実施した。県は救助と復旧の方法を検討するため「復旧工法検討委員会」を立ち上げ、2日に現場近くの八潮新都市建設事務所(八潮市)で初会合を開催。委員会には国、県のほか日建連や埼玉建協も参加した。  事故を受け県では周辺で別の空洞がないか調査を実施。県下水道事業課の担当者は「同様の被害が発生する恐れもあるので、他の下水道管の調査などを行うための予算計上も必要」と話している。国交省も全国の下水道管理者に対し緊急点検を要請した。中野洋昌国交相は1月31日の閣議後会見で「今後、事故原因の調査結果等も踏まえて強靱な下水道確保のため必要な対応をしっかり検討していく」と強調した。  下水道管路を巡っては以前より老朽化が指摘されてきた。国交省の調査によると、全国下水道管路のうち6・5%に当たる約3万キロ(22年度時点)で、耐用年数を超えているとされ、対策を完了した管路の割合も63%(同)にとどまる。今後、下水道管路を含めたインフラ老朽化の対策に注目が集まることになりそうだ。 from...

大阪港湾局/CNP推進へ新規事業/CCS価値連鎖構築など脱炭素化計画に追加

 大阪港湾局は港湾・臨港地区での脱炭素化に向けた新規の取り組みとして、「CCS(二酸化炭素〈CO2〉の回収・貯留)バリューチェーン(価値連鎖)の構築」「荷役機械の照明LED化」「南港発電所の更新計画」「アンモニア供給拠点形成の検討」などを推進する方針を示した。いずれも2025年度以降での実現を目指す。  1月27日に開いた「大阪“みなと”カーボンニュートラルポート(CNP)推進協議会」の第3回会合で、「大阪港・堺泉北港・阪南港・港湾脱炭素化推進計画」にこれらの新規事業を追加した変更案を提示し、大筋で了承を得た。3月末までに策定し公表する。  現行の推進計画は大阪市(大阪港湾管理者)と大阪府(堺泉北港・阪南港港湾管理者)が港湾の脱炭素化を進める指針として24年3月に策定した。CO2を直接削減する「削減事業」と、間接的に削減する「貢献事業」の二つのカテゴリーがある。今回の追加で削減事業が全8事業、貢献事業が全2事業となった。  削減事業のCCSバリューチェーン構築は、堺泉北港堺5・6区(堺市西区)で工場や火力発電所から排出されるCO2を分離・回収し、液化した上で海外の貯留地へ輸送・貯蔵する施設、仕組みを構築する。実施主体は関西電力とコスモ石油の2社。現在、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の「先進的CCS事業」として設計作業を進めており、26年度に最終的な投資判断を行い、30年度の本格運用を目指す。年間25万トンのCO2処理を想定する。  荷役機械の照明LED化は大阪港咲洲地区(大阪市住之江区)のターミナル内にあるタイヤ式門型クレーン5基16灯が対象。実施主体は日東物流。実施期間は25~28年度。  一方、貢献事業では南港発電所更新計画として関西電力が大阪港咲洲地区で出力180万キロワット級(60万キロワット級×3基)の新型火力発電設備を導入し、CO2排出係数を約3割低減する。29年度の運用開始を予定している。  アンモニア供給拠点は堺泉北港泉北1区(高石市)で三井物産、三井化学、IHIの3社が連携し、貯蔵タンクや受け入れ・払い出し設備を整備する。年間約20万トンのアンモニア供給を想定。非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(水素等供給基盤整備事業)を活用し、30年度に事業を開始する。  変更案では30年度の温室効果ガス排出量46%削減(13年度比)、50年の実質ゼロを目指す。 from...

国交省/建築GX・DX推進事業2月上旬から補助申請受付、BIMモデル作成にも

 国土交通省は建築プロジェクトへのBIM導入とライフ・サイクル・アセスメント(LCA)実施を一体的に支援する「建築GX・DX推進事業」に関する補助金の交付申請を今月上旬から受け付ける予定だ。申請前にプロジェクトを主導する設計事務所やゼネコンなどの元請事業者が「代表事業者」として登録する必要がある。「BIM活用型」と「LCA実施型」にメニューを分け、それぞれ単独での実施と、組み合わせての実施の3パターンを補助対象とする。  2024年度補正予算で関係経費5億円を充てて創設した同事業の着手準備が整った。25年度当初予算案でも65億円を計上。これまで単年度で実施していた前身の「建築BIM加速化事業」とは異なり、27年度までの3カ年の想定で継続的に事業展開する方針だ。  BIM活用の場合は、設計調査費や建設工事費でのかかり増し費用の2分の1を補助する。前身事業から補助対象経費を拡充し、従来のソフト利用費やコーディネーター委託費に加え、導入初期や高度活用時のBIMモデル作成に必要な「BIMモデラー」の人件費にも新たに充当可能。建築プロジェクトの補助要件を緩和し、公共的通路などの整備は求めない。  新たな要件として下請を含めた全事業者による「BIM活用事業者登録制度」への登録と、補助事業完了後3年間のBIM活用状況の報告を求める。補助を受けた後もBIM活用を定着させるのが狙い。専用サイト上でBIMの活用方針や工程計画を入力してもらう。前身事業ではBIM活用の「宣言」だけで足りていたが、より踏み込んだ対応が必要になる。  LCA算定を実施する場合の補助対象経費や補助要件は詳細を検討中。月内にも決定する。 from...

関東整備局/発注事務に3Dモデル活用/総合評価方式の提案内容検討など業務効率化

 関東地方整備局が、公共工事の発注事務にBIM/CIMで設計した3Dモデルを活用する取り組みを始めた。総合評価方式の適用工事で設定する技術提案の内容を検討したり、競争入札参加資格を決定したりする際に3Dデータを活用。視認性の高い3Dモデルは従来の2D図面よりも工事内容がイメージがしやすくなり発注担当者の業務効率化にもつながりそうだ。  BIM/CIMデータを使って発注事務を効率化する取り組みは2024年度に開始した。自由自在に視点が変えられる3Dモデルは、構造物の形状や位置関係が一目で分かるのが特徴。施工で工夫できる点などを踏まえた課題設定が可能になるため、総合評価の技術提案の内容を検討したり、入札参加資格を決定したりする際に活用している。  これまで発注事務では2D図面を使用していた。構造物の状態を3Dで可視化することで、「技術職以外の職員も工事内容がイメージしやすくなる」(小宮山隆企画部技術調査課長)などのメリットがある。  同局は発注事務の効率化に加え、施工場所周辺の住民に短時間で分かりやすく伝える点でも3Dモデルは有効と見る。関東整備局は後工程を見据え、「使い勝手の良い3Dモデルの作成」(小宮山課長)を設計業務を受託する建設コンサルタントに期待している。  BIM/CIMデータは23年度の原則適用以降、工事受注者が施工手順の検討などに利用していた。技術提案の課題設定など発注事務の効率化に役立つことが分かり、3Dモデルの利用幅は一層広がりそうだ。 from...

清水建設/新村達也次期社長が会見、原点回帰し揺るぎない成長へ

 清水建設のトップが交代する。4月1日付で社長に就任する新村達也代表取締役副社長兼副社長執行役員建築総本部長が1月31日に東京都中央区の本社で会見し、「井上和幸社長が築き上げてきた経営基盤をさらに強化し、持続的成長を揺るぎないものにする」と抱負を語った。「その上で建設事業の品質やコスト、工程に徹底してこだわっていく」と力を込めた。=3面に会見要旨  同社の社長交代は2016年4月1日以来9年ぶり。同席した井上社長は「24年度にスタートした3カ年中期経営計画の歩みを着実に進め、十分な成果が出るめどが付いた」と経緯を説明。新村氏を「バランス感覚にたけ社内外からの人望が厚い」と評価した。  新村氏は当面の課題として「前期業績を踏まえ当社の原点である建設事業の立て直しが急務だ。まずは現場を大切にしたい」と訴えた。受注時の採算管理を徹底していくことで「中期経営計画の業績目標を達成できる」との見方を示した。  創業220年超の歴史で培ってきた技術にこだわる原点回帰と、井上社長が提唱する「超建設」の考え方を融合する姿勢も打ち出す。「目まぐるしい技術の進歩や顧客の考え方の変化などを適宜的確に把握し、期待される以上の価値を提供していきたい」と話した。  新人時代にクウェートで火力発電所建設の現場管理を担当して以降、さまざまな立場で多種多様な業務を経験。「いろいろな人の気持ちや当事者意識が分かっている。一番の武器はコミュニケーション力」という自身の強みを生かし、「グループ全員の力を結集し持続的成長と企業価値の向上を目指す」と述べた。 from...