2015年6月11日木曜日

【若い頃の経験が大切】大林組・建築生産部門の教育プログラムが成果着々

富士教育訓練センターで現場作業を学ぶ
 大林組が建築生産部門の若手社員を対象に8年前に始めた「描かせる教育」が成果を上げている。入社から2年の間に、生産設計の実務を半年以上学ばせる教育プログラムだ。効率化の観点から作図業務を分業化したことで、「施工管理担当者が施工図をしっかり読めないためのトラブルが発生するようになった」(建築本部)ことの反省から始めたこの取り組み。若手に図面を見る習慣が身に付き、現場の手戻り防止に役立っているという。

 ◇「描かせる教育」、現場の手戻り防止に一役◇

 同社の建築系技術職の新入社員は従来、1カ月の研修を終えて5月の大型連休明けから現場に配属され、日々の仕事の中で建築生産について学んでいくというスタイルが取られていた。
 一方、生産設計業務と現場の施工管理業務の分業化も浸透。業務の効率化は進んだものの、「現場の若手に図面を読まない習慣が付いてしまい、図面が変わったことにも気付かないようなことに起因する不具合、トラブルが発生するようになった」(中島芳樹建築本部本部長室副部長)という。
 こうした課題に対応しようと07年に始めたのが「描かせる教育」と呼ぶ新たな教育プログラムだ。入社後2年間のジョブローテーションの中で、常設教育として「生産設計教育」と「工事教育」をそれぞれ半年程度、現場事務所に配属されての「現場教育」を1年、いずれもOJTで実施するカリキュラムを組む。本配属は3年目以降となる。
 施工図を描くためには、関係各部署と打ち合わせを行い、関連製作図などと調整しながら品質・コスト・工程・安全などの面から生産情報をまとめるという作業が必要だ。生産設計教育では、東京と大阪でそれぞれ100人以上の職員が働く生産設計部に配属させ、上司や先輩の手ほどきを受けながら施工図をまとめる業務に専念させる。どのような生産情報がどのようなプロセスで施工図にまとめられていくのかを知ることで、施工図から多くの情報を読み取ることができるようになるという。

 

 ◇建築生産部門で実践8年◇

 生産設計教育は、毎年100~120人の新入社員が実践。8年の間に800~900人ほどが経験した。その結果、「現場の施工管理の中で図面のミスを見過ごすことがなくなり、自ら修正できる社員が増えてきた」(建築本部)。生産設計教育に加え、同社は14年度に、富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を活用した建築系社員の研修も開始した。14年度は9月(1回)と12月(2回)の計3回行われ、合わせて120人の新入社員が合宿形式の研修に参加。講師の手ほどきを受けながら、鉄筋や型枠、足場の組み立て、測量や墨出し、生コンクリートの試験練りといった現場作業を体験した。
 中島副部長は「実際にものに触って行う作業の面白さや職人たちの大変さを実感してもらいたかった。現場監督としてしっかり指示を出さないと、後で大変なことになることも身をもって学んでほしかった」と同センターを活用した研修の狙いを語る。同時期に研修を受ける専門工事会社の職人とも寝食を共にすることで、あいさつなど日常のコミュニケーションの大切さも学べる。同センターでの新入社員研修は今後も継続的に実施していく考えだ。

 ◇若手に「図面見る習慣」根付く◇

 このほか、入社3年目までの若手技術者を指導する主任~工事長クラスの先輩技術者を対象に、コミュニケーション能力を醸成する体験型リーダーシップ研修も取り入れている。若手への指導を習得させることが現場の活性化につながり、コミュニケーション不足に起因するトラブルの回避につながるとみているためだ。現場に従事する社員にとっては1級建築施工管理技士の資格取得も必須。この資格を持っていなければ監理技術者になれないため、できるだけ若いうちに取得できるよう、奨励資格として受験料なども会社が負担する。取得した資格や能力の維持も重視。忙しい仕事の合間にも自己啓発が行えるeラーニングの取り組みも始めている。
 「若手に対してはある程度強制力を持たせるような手立ても考えている」と中島副部長。建設業振興基金が取り組み始めたような外部機関による継続教育制度(CPD)の活用なども視野に入れ、社員が率先して自分の能力を高められる仕組みを今後も検討していきたいという。

0 コメント :

コメントを投稿