2015年6月22日月曜日

【水中ロボでダムの健康チェック】五洋建設が大水深構造物調査ロボ開発

開発した水中調査ロボ「CETUS-V」
 五洋建設は、大水深構造物の点検用に遠隔操作無人探査機(ROV)を用いた水中調査ロボットを開発した。計測用の光学カメラや音響カメラによる画像取得機能に加え、調査箇所を清掃(ケレン)した上で鋼材の肉厚測定やコンクリートの打音検査を行える機能も搭載し、高精度の点検を実現する。国土交通省の公募事業として、最深部約140メートルの宮ケ瀬ダム(神奈川県)で実証試験を行い、性能を確認した。濁り対策などの改良を加え、海洋・港湾構造物にも展開していく。
 開発した「CETUS―V」は、長さ80センチ、幅50センチ、高さ48センチ。検査面をケレンする清掃装置、コンクリートの健全度を把握する打音検査装置、鋼材の肉厚を計測する肉厚計測装置を備える。
 前後、左右、上下の移動は6個のスラスターで行う。計測用光学カメラで対象構造物のクラックの長さや幅を把握し、音響カメラは濁った水中での画像取得に使う。最深150メートルまで対応できる。
 汎地球測位航法衛星システム(GNSS)によるブイを水面に浮かべ、超音波測位と合わせて機体の位置を検出する。遠隔操作は1人で行い、通常3~5人のチームで調査に当たる。計測データはリアルタイムでパソコンに取り込み、画面で確認。調査後に詳細な解析をし、構造物の健全性を評価することも可能だ。

宮ヶ瀬ダム堤体面を清掃後に撮影した画像
 昨年11月に宮ケ瀬ダムで行った実証実験では、国交省が設置した試験体や堤体の鮮明な画像を取得。高位、低位の洪水吐きや水深127メートルの水底付近まで潜航した。試験体のクラックの大きさなどを正確に把握でき、高い評価を得たという。
 15年度の国土交通省の公募事業「次世代社会インフラ用ロボット 現場対象技術(水中維持管理技術)」に参加を予定。ダムの堤体やゲート設備などをターゲットに技術の改良を検討する。将来的にはROVに搭載する検査装置の高度化や自律航行技術の開発も進め、さまざまな大水深域の構造物に適用していく。
 水深40メートル以深になると、潜水士による調査は安全性や効率の面で難しいとされる。従来の水中調査ロボは、点検用の機能として、構造物の状態を把握するための画像取得に特化したものが大半で、効率的でより高度な点検技術が求められている。

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