2015年6月23日火曜日

【記者手帖】男性技術者の朝の参拝


 出勤途中に通り掛かる神社の前で、作業服の初老の男性をよく見掛ける。ヘルメットを抱え、左腕には「監理技術者」の黄色い腕章。参道には入らない。安全靴のかかとをそろえ、いつも鳥居の前で境内に向かって頭を下げている。現場が動きだす前のひととき、引き締まった表情を見ると、こちらも背筋が伸びる思いがする◆全国安全週間を前に建設会社の安全大会の取材が続いている。これまでの取材を振り返ると、労働災害を防ぐための対策は作業手順の順守や指差し呼称、リスクアセスメントなどさまざまだが、結局はお互いへの思いやりや気配り、優しさに尽きるように思う◆今朝も例の男性技術者を見掛けた。真剣な面持ちで頭を下げる姿から、現場の全員が一日を安全に過ごし、無事に家に帰れるようにと願う思いが伝わってくるようだった◆男性技術者の家族や仲間は、毎朝の参拝のことを知らないかもしれない。でもきっと、そんな見えない思いのようなものがものづくりの現場や社会を支えているのだろう。現場へ向かう技術者に心の中で「ご安全に」と声を掛けた。

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