◇全体のことを考えながら現場を見る◇
「大学1年の専門課程選択時に考えたのが、手に職が付き大学でしか学べない勉強をしよう。人の営みの中で衣食住は必要で、職業として選ぶとしたら“住”だ」と思い、建築学科を選んだ。
ただ、実際に建築の勉強をしてみると「デザインの仕事は自分には向いていないのでは」と思うこともあった。悩んでいる頃にたまたま挑戦したのが、佐久島アート(愛知県西尾市)への出展。日本庭園から着想を得て、見せたい景色をさりげなく誘導して見せるアートを大学研究室の仲間と制作した。
「どうすれば美しい景色を見せたい角度で見てもらえるのか、みんなで考えて制作しました。この時にものづくりの楽しさ、チームで動く面白さを知りました」。それをきっかけに建築の仕事でも、ものづくりを直接行う「施工」に行くことを決めた。
大学卒業後、09年に鉄建建設に入社。研修後に名古屋支店に配属され、マンションやホテルなどの建築現場に従事した。「支店で初めて現場に出る女性技術者ということもあり、皆さんに気を使っていただきました。仕事も工事写真の撮影から始まり、少しずついろいろなことを教えていただき、のびのび仕事をさせてもらいました」。
現場での経験を重ね、責任のある仕事を任されるようになると、精神的にも肉体的にも「きつい」時期もあったが、入社6年目に東京に転勤。積算業務に従事し、将来の選択肢を増やしてもらえた。「この世界での自分の生かし方も見えてきたころ、大学時代から付き合っていた人と結婚し、最初は東京と名古屋で離れて暮らしていましたが、1年後に名古屋に戻してもらいました」。
現在、知立駅前(愛知県知立市)の再開発工事現場に勤務。現場を回る時にいつも心掛けていることがある。「新入社員の頃に先輩に教わったのですが、工事に関わる全ての人が稼げるようにするには、段取り良く進めることが大切。全体のことを考えながら、いつも次の工程を考えて現場を見るようにしています」。
これから仕事と家庭の両立で苦労することもあるかもしれない。「両方とも犠牲にしたくありません。いまは主人の支援もあり、仕事に集中させてもらっています。将来に少し不安もありますが、その時はその時に考えるしかありません。とにかく今は、現場の仕事をできるだけ吸収したい」。
(知立作業所主任、よしだ・ひとみ)
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