2017年3月6日月曜日

【薬師寺食堂の曲面屋根再現】竹中工務店、伝統建築に設計施工一貫BIM適用

竹中工務店が奈良市西ノ京町の薬師寺食堂(じきどう)復興事業に「設計・施工一貫BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」を適用した。

 白鳳時代の木造寺院建築特有の3次元曲面がある屋根などの外観を表現するためBIMを改良し、堂宮大工が培ってきた伝統的技法と、内部大空間を実現できるS造構造計画を融合させた。

 食堂の遺構調査や、大修理中の国宝・東塔など現存する同時期の建造物を参考に作成された復元図を基に、大工の作図技法「規矩術(きくじゅつ)」をBIMモデルの作成プロセスに組み込み、曲面屋根の反りや各部材の細部をモデル化した。

 白鳳時代の寺院建築の屋根は構造上、軒裏と屋根面の間の「軒懐(のきふところ)」が狭いため、伝統様式部材と鉄骨部材の納まりを新たに考える必要があった。BIMモデルを適用することで、狭い軒懐に鉄骨を納まり、木造寺院建築の曲面屋根も再現できたという。

 意匠や構造骨組み・設備をモデル化したBIMを使うことで、建築主や監修者、設計者、堂宮大工、鉄骨ファブリケーターなどの協力会社が設計意図や施工手順などの情報を共有でき、活発に意見交換して伝統技術と現代技術を融合した施工を高いレベルで実現した。

 生産性の向上にも貢献。内部の仕上げ部材間の干渉チェックなどを事前に詳細に行うことができ、施工後の調整作業に削減に役立った。屋根工事でも工程の圧縮を可能にした。食堂の規模はS造平屋649平方メートル。竹中式波形鋼板耐震壁を使用した。

 食堂復興事業では、監修を鈴木嘉吉氏(元奈良文化財研究所所長)、食堂内仏画を田渕俊夫氏(東京芸大名誉教授)、復元基本設計・実施設計監修・監理監修を文化財保存計画協会、内部基本設計・実施設計監修・監理監修を伊東豊雄建築設計事務所、構造設備設計・実施設計・監理・施工を竹中工務店が担当。15年7月に着工し、今年5月に完成する予定。同社は今後、設計・施工一貫BIMを他の設計・施工案件にも積極的に適用する方針だ。

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