2021年6月1日火曜日

【駆け出しのころ】JFEエンジニアリング常務執行役員(社会インフラ本部)・三井田洋介氏

  ◇前に進めていく姿勢で◇

 高校時代から建物のデザインや海外のプラントなどに興味があり、建築学科を選びました。建築というとデザインが花形ですが、大学時代に構造設計の方が向いていると感じ、いろいろな選択肢がありそうだと、建設会社ではなくNKK(現JFEエンジニアリング)に就職しました。

 入社当時の当社は鉄骨事業を手掛けていて、海外のビル鉄骨を担当する部署に配属されました。香港のエキシビションセンターの設計を担当することになりましたが、条件変更が多く、先輩に教わりながら、変更を踏まえた再設計をやりました。学卒でほとんど素人の状態だったので、ゼロからのスタートだと思って勉強しましたが、当時の業務で習得したことは今でも生きていると思います。

 入社3年目にそれまで設計を担当していた現場に赴任し、設計変更した点の確認業務や仮設の計算なども担当しました。本設の設計と違って、仮設の設計はすぐに答えが出るので非常に緊張しました。

 現場ではその場で判断しないと時間ばかり過ぎてしまいます。問題があったらすぐに軌道修正して、とにかく前に進めていくことが大事だと学びました。忙しさでぐちゃぐちゃになった時期もありましたが、担当した案件が竣工した時は感動しました。

 中堅時代に手掛けた香港の超高層ビル建設ではプロジェクトマネジャーとして地下部分を担当しましたが、これまでで最も大変な仕事でした。柱を支える5×6メートルの巨大なベースプレートの下に無収縮モルタルを充填しなければいけなかったのですが、なかなかうまくいかず本当に苦労しました。

 暑いとモルタルがすぐに固まってしまうので、氷水を使って調合したり、注入ポンプを交換したり、現地在住のベテランにアドバイスをもらったりなど試行錯誤しました。材料が不足して急きょシンガポールから空輸したこともあります。

 苦労もありましたが始まった工事は必ず終わりが来ると、腹をくくって必死に取り組みました。嫌なことも含めて人生の勉強、きつい事でも次に生かせば良いという気持ちでやることが重要です。

 やはり何事も経験することが大事。経験した上で判断することと、経験せずに情報を集めて判断することは、結果は同じでも重みが全く違います。失敗した経験があって判断する方が圧倒的に信頼性が高いと思っています。

 今の若い人は優秀ですから、すぐに結果を求めるような所があるように感じています。貢献したいという気持ちは大切ですが、地道にコツコツとやることが、最終的に自分のため社会のためになります。肩の力を抜いて長い目で考えてほしいですね。

香港に赴任していた2000年、夕食時に撮影した一枚(左端が本人)

 (みいだ・ようすけ)1985年東北大学工学部建築学科卒、NKK(現JFEエンジニアリング)入社。2017年製作本部津製作所長、19年から常務執行役員(社会インフラ本部)。趣味は映画鑑賞と愛犬の散歩で、ステイホームも満喫している。58歳。群馬県出身。

0 コメント :

コメントを投稿