◇幅広い分野で土木に貢献、流域治水の礎築く◇
河川工学が専門で流域治水の礎を築いた高橋裕(たかはし・ゆたか)東京大学名誉教授が5月26日に死去した。94歳だった。葬儀は近親者で済ませた。有志によるお別れの会が検討されている。1927年に静岡県で生まれ、55年に東大大学院(旧制)研究奨学生課程を修了。東大や芝浦工業大学で教授を務めた。数多くの水害被災地を回り、都市化の影響を研究。構造物だけに頼るのではなく、遊水池などを含めた流域管理による総合治水対策を提唱した。環境影響への考慮や住民参加の重要性を訴え河川法改正にも影響を与えた。
土木学会の初代広報委員長として87年の「土木の日」創設に尽力。土木と一般市民をつなぐ活動に力を注いだ。土木史の編さんや土木計画学の確立、技術者倫理規定の制定など幅広い分野で功績を残した。2015年には土木分野で初めて日本国際賞(主催・国際科学技術財団)を受賞した。著書が多く河川への哲学を持った文化人でもあった。後進の育成に尽力し数多くの研究者を指導した。
高橋氏の訃報に、土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センターの小池俊雄センター長は「数多くの現地調査を通じ洪水流を河道内に閉じ込め海に早く排出することは、洪水規模の増大と河川環境の悪化を招くと実証された。革新的概念は河川管理の基本的な考えに組み込まれ文化に昇華し、国際的な総合技術へ発展する礎を築かれた」と功績をたたえた。
虫明功臣東大名誉教授は「戦後の河川災害や渇水、環境問題など幅広い視点で施策をリードされ、日本の河川の施策を海外に発信した。昨年まで精力的に活動され、先生の考え方は多くの後輩がきっと受け継いでいくだろう」とコメント。宮村忠関東学院大学名誉教授は「幅広い引き出しをたくさん持ち、その組み合わせも整理されていて話を広げる名人だった」と恩師をしのんだ。
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