机の中を整理していると手のひらサイズの建築模型が出てきた。約10年前に取材した建築家からの頂き物。モダニズム建築の巨匠、前川國男(1905~86年)のデビュー作「木村産業研究所」(青森県弘前市、32年)を精巧に再現している▼模型には資料復元と注釈がある。建物を実測して図面を描き、凍害により数年で取り除かれたバルコニーも含め竣工時の状態が復元されている▼取材当時、前川建築を大切にしたいと願う地元市民らが、バルコニーの再建を目指し募金活動などを展開していた。市も研究所の修繕に対する補助金を予算化した。多くの人たちの思いが結実し2013年にオリジナルの姿を取り戻した▼白亜の外装、水平を強調した外観などモダニズム建築の特徴を随所に残す。文化審議会が先日、重要文化財(重文)に指定するよう文部科学相に答申したのもうなずける。前川建築が国の重文に指定されるのは初めてという▼建物の復元や修繕は所有者が担うのが一般的だが、弘前では市民が動き、その思いに行政も応えた。この街には前川のほぼ全時代の建築が残っている。訪問できる日を楽しみに待ちたい。
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