2021年6月17日木曜日

【プロジェクト・アイ】船橋競馬場大規模改修(千葉県船橋市)、設計・施工は大成建設

商業施設側から見た完成イメージ。開放的な空間が特徴だ
(よみうりランド提供)
  千葉県船橋市にある船橋競馬場で、競馬の開催を続けながらスタンドを全面的に建て替える工事が進んでいる。築50年以上が経過し躯体や設備が老朽化したため、既存スタンドを2期に分けて取り壊し近代的な新スタンドを建設する。入退場口も新設し敷地内の動線も合わせて整備する。設計・施工は大成建設。工事は最盛期を迎えている。

 ◇レース開催止めずにリニューアル◇

 全面的な改築は70年を超える同競馬場の歴史で初めてとなる。佐川順一場長はリニューアルのコンセプトを「街との共生」と説明。同競馬場は周辺に大規模商業施設があり駅からも近い。恵まれた立地条件を生かし「競馬ファンの裾野を広げる施設にしていきたい」と意気込みを語る。

 まず来場者が入場しやすいように動線を変える。これまで場内への入り口は京成電鉄船橋競馬場駅側の北側入退場口だけだった。この動線に加え、JR京葉線南船橋駅や大規模商業施設がある西側にも入退場口を新設する。スタンド西側の装鞍(あん)所や競馬組合ビルなどは撤去し、新設するスタンド1階に機能を集約する。跡地は開放的な芝生広場とし、商業施設側のある西側からの眺望や動線を改良する。

 既存スタンドは2期に分けて解体。跡地にS造5階建て塔屋1階延べ1万5440平方メートルの新スタンドおよび付属棟を建設する。スタンド1階部分に管理機能を集約し、2階以上に観客席を配置。ボックス席やテラス席など親子連れから1人客までさまざまな需要に対応できる客席を設ける。来場者と競馬運営、管理部門の動線を分けることで、セキュリティーを強化する。

パドックの完成イメージ。改修で最も大きく変わる部分の一つだ
(よみうりランド提供)

 レース前に競走馬が周回するパドック(下見所)も変わる。パドックの観覧席はこれまで小さなコンクリート製ひな壇があるだけの素っ気ないものだったが、大型のデッキを連ねた劇場型観覧席に改修する。大型ビジョンを設け、迫力ある競走馬の生き生きとした姿を映す。

 レースに勝利した競走馬と騎手が間近に見られるウイナーズパークをスタンド前に新設し、競馬を楽しめるさまざまな仕掛けをつくる。佐川場長は「競馬場の主役は競走馬と騎手。施設面からも主役をアピールできるよう工夫していきたい」と述べるとともに、「馬券はインターネットの売り上げが好調だが、ファンには競馬場に来てもらい画面だけでは伝わらない面白さを味わってほしい」と、設備面も充実させる。

 ◇競走馬に配慮、振動や騒音を最大限抑制◇

 レース開催中は工事を止めているが、それ以外は時間を決めて工事を行っている。競馬場内の厩舎(きゅうしゃ)で飼育される600頭以上の競走馬は毎朝、レースと同じ馬場を使って調教を受ける。このため、工事開始は午前9時30分以降に制限され、馬が嫌う振動や騒音を最大限抑制しながら、細心の注意を払って工事が進められている。大成建設の担当者は「どの施工段階でも競馬が開催できるよう計画を組んでいる。これから順次、厩舎に近い部分の解体に入っていく。施工時間を調整し、競馬関係者と調整した事項を順守しつつ、慎重に工事に当たりたい」と話す。

敷地西側で新スタンドの建設が進む

 現在、西側の新スタンド第1期を建設中。今後、東側既設スタンドの解体と新スタンド第2期の建設へと進む。スタンド建て替えと並行して出入り口新設やパドック周辺の整備も行っていく。新スタンド完成後に西側の管理施設を解体する。新たな競馬場が姿を現すのは2024年春になる。

 最寄りのJR南船橋駅南口では大型再開発プロジェクトやアリーナ建設計画も浮上、街が大きく変貌しようとしている。佐川場長は「競馬場も一緒になって地域を活性化させ、まちを盛り上げていきたい」と力を込める。

 施設概要

 【発注者】   よみうりランド

 【建設地】   千葉県船橋市若松1の2の1

 【敷地面積】  33万2045平方メートル

 【規模(スタンド棟および付属棟)】S造5階建て塔屋1階延べ1万5440㎡

 【設計・施工】 大成建設

 【工期】    20年12月~24年3月

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