2021年6月4日金曜日

【回転窓】電子市民制度の可能性

  石川県加賀市が電子上の市民を募り、さまざまな分野で官民サービスを提供する「e-加賀市民制度」を始める。法令上の市民とは別に電子市民を位置付けて、同市に来てもらう動機付けにつなげる。日本初の試みだ▼加賀温泉郷で知られる古くからの観光地だが、近年は人口と観光客の両方が右肩下がり。1980年代に約400万人だった観光客は、2019年に約180万人となり、コロナ禍の影響を受けた20年は約100万人と4分の1に落ち込んだ▼電子市民へのサービスには、宿泊費への支援やコワーキングスペースの無償貸し出し、移住時手続きのワンストップ支援などを予定する。湯治客や多拠点居住者、リモートワーカーを呼び込み、関係人口増加を狙う▼コロナ禍で多くの観光地が苦しんでいる。選ばれるためには、地域の魅力に加えて、つながりや物語が求められるのだろう。同市では24年春ころに北陸新幹線の新駅が開業する予定だ。せっかくのハードを十二分に生かすには、一歩先を見据えた工夫や仕掛けが不可欠▼アフターコロナへ地域間競争は既に本格化している。地域発の多様な挑戦に期待したい。

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