候補者が提案したIRの完成イメージ(和歌山県提供) |
和歌山県がカジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致活動に積極的に取り組んでいる。2日に全国で初めて、設置・運営事業者の公募で優先交渉権者候補を選定した。仁坂吉伸知事は同日会見し「建設が始まれば、経済効果が高まる。依存症といった弊害は極小化し、成長因子としてのIRに取り組んでいきたい」と強調。人工島に施設を整備するに当たり、南海トラフ地震による津波にも万全の対策を講じる考えだ。
建設地は和歌山マリーナシティー(和歌山市毛見)。1994年にヨットなど海洋レジャーの拠点として民間が整備した人工島で、開発総面積は約65ヘクタール。現在はテーマパークやリゾートマンション、自動車販売店などが立ち並ぶ。
海抜が低く、県が公表しているハザードマップによると南海トラフ地震による津波で島内全域が2~3メートル程度浸水する。県は浸水時の孤立を防ぐため、事業者に対してヘリポートの設置を求めるという。施設内にはペデストリアンデッキを多用し、歩行者動線を2階以上の高さにかさ上げしてもらう考え。詳細な構造は今後事業者と詰め、区域整備計画の中で明らかにする。2014年度以降、マリーナシティーと市街地をつなぐ橋梁の耐震化にも取り組んでいる。
優先交渉権者候補に選んだのはカナダのトロントに拠点を置くIR投資会社「クレアベスト」の日本法人「クレアベストニームベンチャーズ」(東京都品川区)。1月に提案審査書類を提出したのは同社を含む2者だったが、残る1者はコロナ禍の影響で5月に撤退を決めた。
競争相手がいなくなったIR事業には、主導権を事業者側に握られる懸念が付きまとう。県の担当者は「県に選ばれて終わりではなく、国が選ぶ3カ所に選ばれるのが目標。今後は国の審査をクリアするため、事業者と力を合わせる構図になる。引きずられて公益を損なうといったことは起きない」と自信を見せる。
県は建設地の売買契約を地権者と締結済み。今後は事業者と基本協定を締結し、共同で区域整備計画を作成する。22年4月ころ国に申請する予定だ。認定を受ければ土地を事業者に売却。以降に着工してもらい、27年秋ころの開業を見込む。
提案によると整備する施設は総延べ約56万9000平方メートルの規模。うちカジノ施設は約3万8000平方メートル、宿泊施設が約21万平方メートル。MICE(国際的なイベント)施設(約18万8000平方メートル)や観光資源をPRする魅力増進施設(約2万4000平方メートル)も建設する。初期投資額は約4700億円を見込む。約2600億円の経済効果をもたらし、約2万人の雇用を生むと試算している。
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