2015年6月3日水曜日

【早期復興の願い込めて】宮城・女川復興まちづくりの現状は

駅周辺地区を担当する野村さん。
本社勤務時代に復興現場への配属を志願し2年前に赴任した。
 東日本大震災からの復興へと基盤整備が進む宮城県女川町。今年3月には、JR石巻線の全線運行再開に合わせ、女川駅周辺で初弾のまちびらきが盛大に行われた。復興のトップランナーとして注目が集まる同町だが、復興事業のピークは実はこれから。コンストラクションマネジメント(CM)方式により設計と施工を担う鹿島・オオバJVでは、早期復興を願う地域の思いを胸に、日々工事にまい進している。広範囲にわたる工事にどう立ち向かっているのか。

 ◇パズル解くように作業調整◇

 女川町の震災復興事業では、同町と都市再生機構がパートナーシップ協定を結び、東日本大震災の被災地では初となるCM方式の導入を決定。調査・測量・設計・施工業務を一体で鹿島JVが受託し、12年10月に工事をスタートさせた。
 対象となるのは、女川駅周辺など中心市街地(226ヘクタール)と、離半島部の14地区(37ヘクタール)。津波対策で土地をかさ上げするための土工事や、防災集団移転の宅地整備、道路や橋梁の建設、既設構造物の撤去などが各地区で同時並行で進んでいる。全体の9割程度で工事に着手済みとなっており、想定される土工量(約700万立方メートル)に対する完了率は40%程度だ。
 周辺で住民が生活している『生きた町』での工事のため、道路や水道といった各種インフラの切り回しも欠かせない。切り土箇所と盛り土箇所の土砂のやり取りなどを含め、「複雑なパズルを解くようにして作業を進めている」と宮本久士所長は話す。
 総契約額は現時点で約350億円。最終的な事業規模は確定していないが、鹿島JVでは、この2倍程度になると見込んでいる。

離半島部の高白浜地区。引き渡しへの最終段階に
 最初に引き渡したのは、なりわいの拠点となる宮ケ崎水産加工団地。その後、荒立西・東地区や離半島部の出島地区、女川駅周辺など完成した場所から順次、引き渡しが進んでいる。施工側とすれば、効率的な順番で工事を進めることが望ましいが、すべての被災者が同じように早期復興を望んでいる状況もある。離半島部の施工に当たっては、全面的に同時並行で工事を行うこととし、主要な協力会社や資材の手配をかけたという。今後は、漁業集落防災機能強化事業(漁集事業)の基盤整備も始まる予定だ。
 自然が相手だけに、予想外の事態も起きる。女川駅後背部の高台の施工箇所では、掘削を進めていく段階で、軟岩とみられていた層に中硬岩・硬岩が出てきた。重機を使った作業だけでは工期に間に合わなくなる恐れが生じ、発破工法の導入を提案して5月から作業に入った。

 ◇「被災者が原点」思い胸に◇

 工事を円滑に進めるためには、わずかな変化にも敏感に反応し、先手を打って調整していくことが不可欠だ。女川駅周辺地区を担当する野村浩駅周辺グループ長代理(鹿島)は、「協議事項がある際は、『いつまでに返事がほしいのか』『それが遅れるとどのような影響が出るのか』を明確に伝えるよう気を付けている」と言う。
 工程の遅れが被災者の生活再建に影響を与えるという意識は、関係者すべてが共有している。「完成を待つ被災者が原点」と野村氏。地域住民からの期待や評価の声を直接耳にする場面も多いだけに、常に気を引き締めて日々の業務に当たっている。

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