2015年6月2日火曜日

【復興に一歩前進】JR仙石線が全線運行再開

野蒜駅での出発式の様子(代表撮影)
◇仙台~石巻駅結ぶ仙石東北ラインも新たに開業◇

  東日本大震災での被災を受け、JR東日本が復旧工事や一部区間の移設を進めてきたJR仙石線で5月30日、全線運行が再開され、宮城県東松島市などで記念式典が開かれた。新たに整備した短絡線で仙石線と東北本線を接続させ、仙台~石巻間の時間短縮を図る仙石東北ラインも開業。震災復興とともに地域の産業・経済の発展に大きな力になると期待されている。工期の短縮で、当初の想定より約4カ月前倒しての再開となった。沿線各地では待ちに待った鉄路の復活に喜びの声が上がった。
  仙石線は、仙台市中心から太平洋沿岸部を通って石巻市までを結ぶ約49キロの路線で、段階的に復旧・運行再開が進められてきた。特に被害が大きかった陸前大塚~陸前小野駅間では、内陸部への高台移転に合わせて線路を山側に約500メートル移設し、新たな野蒜駅と東名駅を整備した。東松島市は、新野蒜駅を含む野蒜北部丘陵地区の被災市街地復興土地区画整理事業の推進に当たって、都市再生機構に支援を要請。都市機構は、CM(コンストラクション・マネジメント)方式により、大成建設・フジタ・佐藤工業・国際開発コンサルタンツ・エイト日本技術開発JVに設計・施工を委託している。鉄道用地については先行的に整備を進め、昨年6月に引き渡していた。
  仙石線の復旧では、土木構造物の設計をジェイアール東日本コンサルタンツが、駅建物の設計をジェイアール東日本建築設計事務所が担当。工事は東名工区を鹿島が、野蒜工区を鉄建がそれぞれ手掛けた。軌道工事は仙建工業と第一建設工業が、電力設備工事は日本電設工業が担当した。

関係者によるテープカット
◇鉄道開通は「復興やさらなる発展につながる大きな原動力」◇

 野蒜駅前で開かれた記念式典で、村井嘉浩宮城県知事は「仙石線は、石巻圏と仙台圏の交流活性化に大きな役割を果たす重要な幹線だ。沿線地域の産業や経済、観光の振興に大きな波及効果をもたらし、地域の再生と発展をけん引する大きな力になる」と語った。
  冨田哲郎JR東日本社長は「沿線の皆さま方とともに、地域の経済発展や地域の再生に全力を尽くしたい。移設した野蒜駅と東名駅が、新たな街の中心となり、にぎわうことを祈念している」と述べた。来賓として出席した西村明宏国土交通副大臣兼内閣府副大臣兼復興副大臣は、運行再開を喜ぶとともに「復興を実感してもらえるよう全力を尽くしていく」と語った。
 沿線自治体からは「JR東日本の技術力はもちろんだが、野蒜の工事現場でベルトコンベヤーを採用するなど時間短縮の努力がなされたことで、今日の日を迎えることができた」(阿部秀保東松島市長)、「県全体の復興やさらなる発展につながる大きな原動力になる」(亀山紘石巻市長)といった声が上がった。式典には地元関係者や花岡洋文都市機構副理事長、近藤昭二大成建設常務執行役員東北支店長、林康雄鉄建社長、増永修平鹿島専務執行役員土木営業本部長ら97人が参加した。近藤支店長は「工事を順調に進め、4カ月くらい前倒しできた。役目を一つ果たせたと思う。(野蒜北部丘陵地区の)2次造成にも全精力をかけ、良い町ができるよう努力していく」と語った。

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