パソコン内で建物の3次元モデルを作り出すBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)。3次元化は建物の内部に至るまで可能で、計画や構造の検討、配管などの干渉チェックを容易に行うことができ、依頼者(発注者)にも立体的な画像を使って設計内容を分かりやすく伝えられる。海外では約8割の技術者が活用しているといわれるが、日本は大手ゼネコンで導入が先行する。日本の建築設計事務所での認知度、普及状況はどうなっているのか。
日本建築士会連合会の情報・広報委員会情報部会がまとめた「建築士のBIM認識度調査」の結果が、10月30日の建築士会全国大会「金沢大会」の情報交流セッションで公表された。
調査は、昨年8月19日~9月17日にウェブアンケート形式で行われ、各都道府県建築士会に所属する中小規模の建築設計事務所関係者(約1100アドレス、30~70代)が回答した。有効回答数は328。
質問は、▽BIMを知っているか▽BIMへの関心度▽BIM導入状況▽採用に至らない理由▽業務での有益性▽BIMの普及に必要と思われる事柄-など17項目。
「BIMを知っているか」の質問に対し、回答は「導入済み(未使用の事務所を含む)」が16%、「名前は知っている」が54%、「よく分からない」が21%、「聞いたことがない」が9%だった。「導入済み」と「名前は知っている」を合わせると7割はBIMの存在を認識していた。
「BIMへの関心度」の質問では、「大いにある」が19%、「少しある」が47%。合計7割近くが関心を持っていることが分かった。
一方でBIMの導入状況を見ると、「未導入」が91%。このうち、「具体的に検討」との回答は2%にとどまり、「検討していない」が51%を占めた。「採用に至らない理由」については、「BIMが分からない、現業務での有益性の判断ができない」(回答数100)が最も多く、▽費用対効果(93)▽使いこなせる物件がない(93)▽現況で問題がない(83)▽ソフトの価格(81)▽習得時間への不安(78)-の順となっている。
BIMを導入した事務所のうち、74%が「有効」と回答しているが、導入して不都合に感じた点として、「データをどこまで入れるべきか」「ソフトの違いによる互換性」「価格面で所員全員にインストールできない」などの意見があった。
「BIMの何が魅力的か」(複数回答)の質問には、▽各図面の一括整合(回答数199)▽優れた3Dによるプレゼン機能(179)▽事前チェックによるトラブル軽減(145)▽配管・躯体との干渉チェック(102)▽温熱環境解析によるコスト提案(91)▽営業ツールとして成約率の向上(72)-などが挙がった。
「BIMが将来主流になるか」との質問に対しては、「思う」との回答数が95、「思わない」が23に対して、「分からない」が207と多く、判断に迷う設計者も多いことが分かった。
「BIMが普及していくために必要だと思う事柄」(自由記述)の上位には、「ソフトの低価格化」「CADとの連携性の向上」「業界全体の普及度合い」「操作性の向上」などが並んだ。
アンケートでは価格に対する懸念も浮き彫りになった。中小事務所にとっては多額の投資が負担になったり、フリーソフト使用者にとっては今までかからなかった費用が発生したりするという現実的な問題もある。業務を抱える中で新しいソフトをマスターするために現業務が滞るといった不安を訴える意見も出ている。
0 comments :
コメントを投稿