2015年11月5日木曜日

【縁の下の力持ち】JR東日本信濃川発電所/鉄道輸送網建設・整備担う原点

宮中取水ダム。手前が魚道
 JR東日本が年間に使用する電力の約2割を供給している「信濃川発電所」(新潟県十日町市・小千谷市)。1919年に開発が決定した後、31年に第1期工事に着手。90(平成2)年に第5期工事が完了した。施設の建設だけでなく、2004年に起きた新潟県中越地震の被害の復旧工事や、河川環境と調和した魚道の整備などに従事してきたのが鉄建だ。この発電所が鉄道輸送網の建設・整備を担う同社の原点となっている。


 ◇ECL工法を国内初採用◇

 信濃川発電所は、宮中取水ダム、浅河原調整池、千手発電所、山本調整池、小千谷発電所、山本第二調整池、小千谷第二発電所で構成する。宮中取水ダムの水は浅河原調整池に送られ、千手発電所の発電機を回して電気をつくる。ここで使われた水は水路トンネルにより山本調整池に導かれ、小千谷発電所で再利用される。宮中で取り入れられた水の一部は、山本第二調整池に送られて小千谷第二発電所の発電機を回す。

山本第二調整池の0ほとりに立つECL工法のモニュメント
 戦中の1944年2月に設立された鉄建にとって、信濃川発電所の工事は初受注案件。第3期工事(43~54年)の水路トンネル(千手発電所~山本調整池、約15・6キロ)に携わった。途中、大戦のため工事を一時中止したものの、51年に発電開始にこぎ着けた。

 85年に始まった第5期工事でも水路トンネル(宮中第二取水口~山本第二調整池、約26・7キロ)を担当することになった。全長27キロのうち、軟岩・湧水区間の23・9キロをNATMで、残り3・1キロはECL工法(直打ちコンクリートライニング工法)で掘進した。山岳トンネルでECL工法を採用したのは国内で初めてだったという。

 ECL工法は、掘削と覆工とが並行して行えるため施工が速くなる。平均月進180メートル、最大月進340メートル、最大日進15・6メートルの実績を残し、NATMの倍以上のスピードとなった。さらに、ECL工法は切羽での人力作業がないため安全で、機械化による省力化も図れた。

千手発電所にある昭和12年製の発電機
◇震災復旧や魚道整備も◇

 新潟県中越地震で被災した信濃川発電所は、地震発生から508日で復旧作業を完了。この早期復旧に尽力したのも鉄建だ。発電所の放水路や調整池の堤体、土木設備、建物の応急工事のほか、水路トンネルの調査なども手掛けた。

 同社は発電所と河川環境との調和に向けた取り組みにも従事している。宮中取水ダムの魚道の機能を高めるため、大型魚道と小型魚道を改築するとともに、せせらぎ魚道を追加。3タイプの魚道をそろえ、多くの種類の魚が利用できるようにした。大型魚道と小型魚道の間に魚道観察室を設け、一般に無料公開している。

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