◇下水道施設の復興着々/JS、被災自治体を支援◇
日本下水道事業団(JS、谷戸善彦理事長)が東日本大震災で被災した自治体の要請を受けて実施している復旧・復興事業。仙台市は、南蒲生浄化センターの復旧事事業が年度内の完成に向けて仕上げの段階に入ったほか、宮城県岩沼市では地盤沈下した地域での雨水ポンプ場や排水路の建設事業が進む。現場を訪ねた。
工事が大詰めを迎えている南蒲生浄化センター(仙台市宮城野区) |
津波で破損した南蒲生浄化センターの建屋 |
復旧工事では、既存の反応タンクや最終沈殿池を撤去した跡地(6ヘクタール)に水処理施設(2系列、処理能力1日当たり40万立方メートル)を新築する。今月2日から半系列(処理能力1日当たり20万立方メートル)が稼働。16年3月の完成と同4月の全面運転開始を目指し、残り半系列の設備工事が進む。
施工中の南蒲生浄化センターの反応タンク |
復旧事業は、既存施設の原状回復が原則だが、東日本大震災と同規模の地震と津波が発生した場合、再び同様の被害を出さないよう、設計にはさまざまな災害対応策を織り込んだ。例えば、津波で設備が浸水するのを防ぐため、最初沈殿池に建屋を設置。最初・最終沈殿池を2層構造にし、施設を多層化することですべての棟の高さを東日本大震災時に同施設で記録した津波の高さ(10・4メートル)以上とした。
JSによると、同センターの復旧は、通常なら10年はかかる大掛かりな建設事業だが、土木・建築工事を担当したフジタ・鴻池組・丸本組・後藤工業・皆成建設JVは、工夫を凝らして工期を圧縮。3年半で完成させる。砂状の地盤を改良するため、地中にセメントミルクを注入してかき混ぜる「パワーブレンダー工法」を採用し、改良時間を短縮。鉄筋工事では機械式継ぎ手を導入し、天候の影響を受けずに迅速な施工を実現した。人手不足も顕在化したが、人員の増強や昼夜2交代制の導入などで乗り越えた。
コスト削減にも力を入れ、コンクリートを粉砕する機械「ガラパゴス」を導入し、既存施設の解体で発生したコンクリートを砕石にし、場内の盛り土に再利用している。
二野倉排水ポンプ場(宮城県岩沼市)で進む鉄筋組み立て作業 |
「岩沼市二野倉排水ポンプ場復興建設工事」では、2棟(いずれもRC造地下1階地上3階建て)で構成する二野倉排水ポンプ場を整備する。第1ポンプ場は主に市街地の雨水を、第2ポンプ場は近接する工業地域の雨水などを川に排水する。
現在はポンプ場の鉄筋や型枠の組み立て、一部でコンクリート工事が行われている。工事の進ちょく率は42・5%(11月12日現在)で、早期完成に向け、急ピッチで施工を進めている。
施工を担当する鴻池組・上の組JVは、工期短縮に向け、120トンの大型クレーンの導入や掘削前に地盤に含まれる水分を強制排水する「スーパーウェルポイント工法」の採用などを提案。「工期を2カ月程度短縮することを前提にさまざまな案を提示した」(鴻池JVの担当者)という。
二野倉排水路に敷設したボックスカルバート |
宮城県内では着実に復旧・復興事業が進んでいるが、被災3県(岩手、宮城、福島)全体を見渡すと、JSに支援を要請した27自治体・93施設のうち整備が完了したのは11団体・26施設(6月末現在)にとどまり、「災害復旧の象徴の南蒲生浄化センターが完成すれば雰囲気が変わるが、現状では事業が思ったほど進んでいない」(日高所長)。復興に向けた建設事業はこれからが本番と言える。JSは「東北の復興無くして日本の発展は無し」(松浦將行理事)との方針の下、復旧・復興の取り組みを一段と加速させる考えだ。
《工事概要》
【南蒲生浄化センター災害復旧工事】 発注者=JS、施工者=フジタ・鴻池組・丸本組・後藤工業・皆成建設JV、工事場所=仙台市宮城野区蒲生八郎兵エ谷地第二、工期=12年9月~16年3月末
【岩沼市二野倉排水ポンプ場復興建設工事】発注者=JS、施工者=鴻池組・上の組JV、工事場所=宮城県岩沼市押分、工期=14年7月~未定
【岩沼市二野倉排水路復興建設工事その2】発注者=JS、施工者=飛島建設・春山建設JV、工事場所=宮城県岩沼市押分、工期=13年12月~16年3月末
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