現場で購入したデジタル一眼レフカメラを使い 事務所のスタッフと撮影した一枚 |
入社して3年目ごろまでは、現場で何も分からずに働いていました。でも、自分で一つだけ決めて実践していたことがあります。それは、先輩や職人さんから何か言われたらすぐに行動すること。それも、「もう行ってきたのか」「もう取ってきたのか」と言ってもらえるくらいに早く動こうと心掛け、10階建てぐらいの建物なら1階から駆け上がってすぐに戻ってきていました。そんなことしか目立つことができず、当時はそれだけ体力もあったのだと思います。
ようやく少しずつ仕事が分かってきたのは、4年目ぐらいからです。現場の所長が先生のような方でして、私たち若い社員を集めて安全管理や品質管理などに関わるいろいろなことを教えていただきました。まるで学校の授業を受けているかのようで、この方から学んだことは大きく、今も感謝しています。
これまでにいろいろなことを経験しましたが、20代後半にこんなこともありました。自分が施工を担当したビルの店長さんと、年が近いこともあって仲良くさせていただき、ある晩、そのビルの近くで食事をご一緒していた時のことです。外から消防車のサイレンが聞こえたため、気になってビルを見に行くと、隣の建物からものすごい火柱が立っていました。
道路には既に消防の指揮所となる机が並べられてあり、消火活動のために店のシャッターがチェーンソーで壊されているところでした。私たち二人は慌ててビルの中に入って屋上に行き、自家発電機を回して火が燃え移らないように放水しました。危ないので止められましたが、店長さんは自分の店に、私は自分が建てたビルに何かあってはいけないという一心での行動だったと思います。
しばらくして隣の建物の火は消されましたが、店の中には煙や水が入ってしまい大変な状況でした。このため、翌日も平常通り営業できるよう店の皆さんと夜を徹して復旧に当たりました。
高校や大学を卒業して会社に入ってきた人に、私は同じ社会人として一緒の目線で話すようにしています。会社の一員になれば、新人であろうと建築のプロと見られます。
例えば家を建てる親戚がいる人からは、建設会社に入社したのだから何かためになることを教えてほしいとお願いされるかもしれません。その時に分からないといって門前払いしてはいけません。社会人としてしっかり対応する意識を持ってもらいたいものです。分からなければ私たち先輩に聞くなどすればいいのです。そして若い人たちには建築のプロとして、技術とセンスを伸ばしていってほしいと期待しています。
(さとう・まもる)1973年小樽工業高校建築科卒、岩田建設(現岩田地崎建設)入社。建築部建築課工事長、建築部次長、建築部部長、建築部長を経て、13年6月から現職。北海道出身、61歳。
0 comments :
コメントを投稿