2015年11月12日木曜日

【足下は順調】受注高、15年ぶり15兆円台回復/日建連・15年版『建設業ハンドブック』より



 ◇採算重視で利益率改善進む◇

 日本建設業連合会(日建連)は、会員会社を主体にした建設業の現況を紹介する「2015建設業ハンドブック」をまとめた。工事受注額の推移、受注内容とそのシェア、環境への取り組みなどについて、独自の資料やデータから現状を整理、考察している。日建連が出所となっているデータを中心に、業界の現状を整理した。(編集部・溝口和幸)

 建設投資は、2010年度に、ピークだった1992年度(84兆円)の半分にまで縮小していたが、11年3月に発生した東日本大震災の復旧・復興をきっかけに反転。14年度まで4年連続して増加している。15年度は、現時点では国の補正予算が編成されておらず、前年度比5・5%減の48・5兆円と予想されている。補正予算が編成されなければ、6年ぶりの減少となる。

 日建連が毎月公表している会員企業の「受注実績調査」によると、会員98社ベースの14年度の工事受注額は、前年度比9・4%増の15・2兆円となった。受注額は、08年秋のリーマンショックをきっかけとした景気後退で、08年度には11兆円台に下落。09年に発足した民主党政権が公共投資を抑制したこともあって、10年度にはピークだった90年度(26・7兆円)の4割を切る9・3兆円と、10兆円を割り込んだ。

 ただ、それ以降は、震災の復旧・復興需要が高まると同時に、景気の回復傾向に伴う民間建設投資の上向きもあって増加が続き、14年度は民間工事、官公庁工事とも増加。15年ぶりに15兆円台を回復した。


 一方、会員各社が受注している工事の内容は様変わりしている。94~98年度と10~14年度の平均を比較すると、建築工事と土木工事の割合は、94~98年度が建築64・5%、土木35・5%だったのに対し、10~14年度は建築70・1%、土木29・9%に変化。民間、官公庁、海外の工事の比率も変わり、民間工事は59・0%から66・4%に上昇する一方、官公庁工事は35・4%から27・7%に低下。海外工事は5・5%から5・8%に上がった。特に官公庁工事の比率低下が目立っており、日建連は「特に自治体など地方機関からの受注割合の低下が著しい」と分析している。

 国土交通省がまとめている「建設工事施工統計」で、元請受注額に占める日建連会員企業のうち48社の割合を日建連会員の「受注シェア」として見ると、90年度に30%を超えていた国内受注のシェアは、94~09年度は18%台~23%台で推移。10年度は20%を割り込んだが、以降は上昇に転じ、13年度は21・4%と4年ぶりに21%台を回復した。13年度は、福島第1原発事故に伴う放射能除染工事など大型の官公庁工事が増加したのが一因とされ、官公庁のシェアは12年度の20・2%から23・7%に上昇した。

 会員企業のうち、非上場を含む30社の単体決算を集計した「経営状況」からは、収益力が回復傾向にあることがうかがえる。30社合計の14年度売上高は10兆7000億円、営業利益は2600億円。景気回復で民間の設備投資が上向き、公共投資も堅調なことから、売上高は4年連続の増加となった。営業利益は2年連続の増加。各社が採算重視の受注活動を徹底し、利幅の薄い工事の消化も進んでいることで、12年度に0・1%と低迷した売上高営業利益率は2・4%まで改善した。


 ハンドブックでは、会員企業の環境関連のデータも整理。13年度の施工段階二酸化炭素排出削減率は18・3%(12年度13・8%)に上昇し、20年度目標の20・0%に近づいた。
 作業所の排出削減活動や重機・車両の省燃費運転の励行、省エネ機器の採用などが効果を挙げている。

 建築物の建築環境総合性能評価システム(CASBEE)による13年度評価結果は、最高のSと、それに次ぐAの合計比率が前年に続いて50%を上回り、「環境配慮設計」が普及していることを裏付けた。

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