2017年12月4日月曜日

【持続可能社会の構築を意識】東京都、再生骨材コンクリを五輪会場整備に活用

 東京都は2020年東京五輪の競技会場整備で再生骨材を混ぜたコンクリートを活用する。

 本体工事を施工中の海の森水上競技場、カヌー・スラローム会場などには既に導入実績があり、今後は有明アリーナやオリンピックアクアティクスセンターなどに活用を広げる。事業費の圧縮に注目が集まりがちな会場整備だが、建設リサイクルの推進で、社会の持続可能性を意識したモデル事業としての意義を持たせる。

 解体した建築物などから出るコンクリート塊をリサイクルして製造する再生骨材コンクリートには、品質の高さに応じ、H(高)、M(中)、L(底)の3種類の日本工業規格(JIS)がある。都財務局の担当者は、「財務局所管のすべての施設で再生骨材コンクリートを使用する方針だ。設計段階から検討を進めていた」と話す。

 同局が新設・改修によって整備する恒久の競技会場は▽有明アリーナ(江東区)▽オリンピックアクアティクスセンター(同)▽有明テニスの森(同)▽大井ホッケー競技場(品川区ほか)-の4会場。
オリンピックアクアティクスセンター㊤と有明アリーナの完成イメージ
(2015年10月時点、ⓒ 東京都)
 有明アリーナは杭工事が終わり、現在は地下躯体を施工中だ。18年度は建屋の鉄骨工事を進める。アクアティクスセンターは、大屋根を支える4本の鉄骨(コア柱)の整備が始まった。両施設とも、来年度にはおおよその建屋の形が見えてくる。
有明テニスの森の改修後イメージ
(ⓒ 東京都)
 有明テニスの森は11月15日、仮囲いの設置工事などに着手。本年度は既存コロシアム改修のための事前調査、クラブハウスなどの解体も進める。未着工の大井ホッケー競技場は、12月の定例都議会で施工者との契約締結が承認されれば早期に着工する。担当者は「生コンの製造プラントの供給量、工事現場との位置関係などを考慮し、再生骨材コンクリートのLを各施設の捨てコンクリート工で使用する」という。
カヌースラローム会場の完成イメージ
(2016年5月時点、ⓒ 東京都)
 アウトドアスポーツの会場の中では、港湾局が東京臨海部に整備する海の森水上競技場の工事が先行している。再生骨材コンクリートは、水上のコースレーン脇に設ける自転車走行路(約2・3キロ)で活用した。来年には艇庫棟、グランドスタンド棟、フィニッシュタワーといった建屋(総延べ8069平方メートル)の建設に入る。担当者は「建屋のならしコンクリート工で再生骨材コンクリートのHを使う」との方針を示す。

 建設局所管のカヌー・スラローム会場(江戸川区)は、スタートプールの杭打ち、ウオーミングアップコースの構築などが進み、年度末には管理棟整備の施工者とも契約を結ぶ。再生骨材コンクリートは、ならしコンクリート工でL、基礎関係でHの計5400立方メートルを使用済みだ。管理棟への導入は今後検討する。
大井ホッケー競技場・メインスタンドの完成イメージ
(2016年6月時点、ⓒ 東京都)
 五輪の会場整備に限らず、再生骨材コンクリートの今後の活用には、骨材や生コンの製造業者らの期待も高まっている。18年初めにもH、M、LすべてのJISが改正されるからだ。

 骨材や生コンの製造業者などで組織する再生骨材コンクリート普及連絡協議会(ACRAC、柴谷啓一会長)によると、来年の改正で、再生骨材のアルカリシリカ反応の調査手法、生コンの流動性(スランプ値)の検査頻度、混合骨材の扱い、M・Lを製造できる生コン工場の条件などが変わり、業者側には使い勝手の良い仕組みになるという。柴谷会長は11月29日に東京・麹町で開いた講習会で、「JISの改正により、さまざまな形・方面で再生骨材コンクリートを普及できる機会が得られる」と期待を示した。

 老朽化した都市機能の更新を円滑に進めるためにも、建設リサイクルの推進は待ったなしの課題。五輪を契機とした発注者の独自の取り組みや、制度改正などがどのような相乗効果を生むのか、今後の動向が注目される。

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