本体工事を施工中の海の森水上競技場、カヌー・スラローム会場などには既に導入実績があり、今後は有明アリーナやオリンピックアクアティクスセンターなどに活用を広げる。事業費の圧縮に注目が集まりがちな会場整備だが、建設リサイクルの推進で、社会の持続可能性を意識したモデル事業としての意義を持たせる。
解体した建築物などから出るコンクリート塊をリサイクルして製造する再生骨材コンクリートには、品質の高さに応じ、H(高)、M(中)、L(底)の3種類の日本工業規格(JIS)がある。都財務局の担当者は、「財務局所管のすべての施設で再生骨材コンクリートを使用する方針だ。設計段階から検討を進めていた」と話す。
オリンピックアクアティクスセンター㊤と有明アリーナの完成イメージ (2015年10月時点、ⓒ 東京都) |
有明テニスの森の改修後イメージ (ⓒ 東京都) |
カヌースラローム会場の完成イメージ (2016年5月時点、ⓒ 東京都) |
建設局所管のカヌー・スラローム会場(江戸川区)は、スタートプールの杭打ち、ウオーミングアップコースの構築などが進み、年度末には管理棟整備の施工者とも契約を結ぶ。再生骨材コンクリートは、ならしコンクリート工でL、基礎関係でHの計5400立方メートルを使用済みだ。管理棟への導入は今後検討する。
大井ホッケー競技場・メインスタンドの完成イメージ (2016年6月時点、ⓒ 東京都) |
骨材や生コンの製造業者などで組織する再生骨材コンクリート普及連絡協議会(ACRAC、柴谷啓一会長)によると、来年の改正で、再生骨材のアルカリシリカ反応の調査手法、生コンの流動性(スランプ値)の検査頻度、混合骨材の扱い、M・Lを製造できる生コン工場の条件などが変わり、業者側には使い勝手の良い仕組みになるという。柴谷会長は11月29日に東京・麹町で開いた講習会で、「JISの改正により、さまざまな形・方面で再生骨材コンクリートを普及できる機会が得られる」と期待を示した。
老朽化した都市機能の更新を円滑に進めるためにも、建設リサイクルの推進は待ったなしの課題。五輪を契機とした発注者の独自の取り組みや、制度改正などがどのような相乗効果を生むのか、今後の動向が注目される。
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