高層ビルが林立する現在の名古屋市中心部 |
東京・霞が関の中央官庁で都市政策を担当する40代の山田春夫さん(仮名)。小学生の時に訪ねた名古屋の高層ビル群に感じた「未来都市像」が今の仕事の原点という。
東海地方の片田舎で海と山に囲まれた自然豊かな環境で生まれ育った。地元には見上げるような高層建築物はなく、両親の買い物で名古屋のデパートなどに連れていってもらうのが一番の楽しみだった。
そこで見たのが高層ビル群。中でも当時、最上階でフロアが回転するレストランを営業していた中部日本ビルディング(名古屋市中区)には衝撃を受けた。「誰でも子どもの頃に未来の都市の姿を想像したことがあると思いますが、自分にとってはそれが、現実に存在した名古屋の高層ビル群だったんです」。
中学、高校と進んでいく過程で、都市づくりをしてみたいという夢はどんどん膨らんでいき、大学では都市計画を専攻した。そうした「自然の成り行き」で、現在は中央官庁で都市づくり政策の制度設計に携わる。担当する地域の関係者とほぼ毎日のように意見交換したり、都市計画区域図を眺めたりする日々だ。
当面の課題は、2020年の五輪開催を控えた東京の魅力とポテンシャルを最大限高めるための都市開発誘導。中長期的な課題は、人口減少時代に対応した効率的な都市づくり手法として全国の地方都市を中心に推進しているコンパクトシティーの普及だ。
東京の都市開発誘導では、規制を従来より大幅に緩和する国家戦略特別区域制度を活用し、より大規模な建築物の開発を可能にする。コンパクトシティーの普及に向けた取り組みも法制度や予算・税制を総動員して推進中だ。
五輪を間近に控えた最近の東京は、新しいビルの建設が相次いでいる。都市が発展・変貌していくスピードは高まる一方だが、都市政策に長く関わってきた立場から、「都市づくりの原点は地元の思いと歴史にある」と思っている。「事業によっては特に急がないといけない場合もあるが、これだけはいつまでも忘れないようにしたい」。
仕事の大きなヒントになると思い、欠かさず見ているテレビ番組がある。タレントのタモリさんが全国各地を歩きながらその地域の歴史や人々の暮らしに迫るNHKの人気番組「ブラタモリ」。現在の都市の姿から、もともとの地形や昔の人が立案した都市計画などを解明していくタモリさんのマニアックな視点に注目するファンの一人だ。
「タモリさんの姿を見て自分でも街歩きをするようになった。いつもよりちょっと視野を広げ、ゆっくり歩くだけで街の見え方は全然変わってくる。仕事で地元の人と意見交換する時にも役立ちます」。その楽しさと効果から、後輩にも勧めている。
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