2018年8月24日金曜日

【回転窓】現場で見られる名人技

百貨店で人気の催事の一つに、熟練職人の手による一品を販売する物販展がある。その魅力は販売する商品だけでなく、職人技が間近で見られる実演にもある▼都内の百貨店で行われたある物販展。老齢の銀細工職人の仕事を見ていた客の一人が「簡単に彫るのに(値段が)高いんですね」と話した場面に遭遇した時、陶芸界の巨匠の逸話を思い出した▼民芸陶器の人間国宝、故濱田庄司は晩年、ひしゃくですくった上薬を一瞬で垂らし大皿に文様を描いた。その様子を見ていた客が「これだけの大皿にたった15秒ほどの模様付けではあまりに速すぎて物足りないのではないか」と話す。すると濱田は「60年と15秒と考えたらどうか」と返した▼技の習得には長い年月がかかる。簡単そうに見える仕事の裏にどれだけの修練があったのか。建設の世界も同様で、現場でこてを使って壁にしっくいを塗る左官職人や、鉄筋を結束する鉄筋工などによるよどみのない手技には、修練のたまものと呼ぶにふさわしい匠(たくみ)の技能が込められている▼夏休みもあとわずか。各地で行われる現場見学会に足を運んで名人技をぜひ見てほしい。

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