2018年8月2日木曜日

【回転窓】未来に開かれる本

ノルウェーで2014年から「未来の図書館」というプロジェクトが進行している。毎年異なる作家に作品を提供してもらい、100人分の原稿を100年後に公表するという試み。未来の人たちに対する文学の贈り物となる▼集まった作品は書籍として出版する予定。紙の原料となる樹木も育てているそうだ。デジタル化の進展などを背景に、印刷物としての本の存在感は薄まりつつある。多種多様なエンターテインメントがあふれるデジタルの世界。その波は文学も決して無関係ではない▼「紙の本はあと20年くらいで無くなると思う」。作家の石田衣良さんが話していた。全国出版協会の統計によると、紙を使った出版物の国内推定販売金額は13年連続で減少している。たとえ本離れが加速しても、石田さんは作品を書き続けていくという▼未来の図書館に、どのようなメッセージが込められた本が収められ、22世紀の人たちはそれをどう受け止めるのか▼数世代にわたって引き継いでいかなければプロジェクトは実現できない。本や文学を継承したいという思いは、果たして100年後の人たちに届くのか。興味は尽きない。

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