2018年11月15日木曜日

【施工は清水建設JV】八ツ場ダム本体建設工事(群馬県長野原町)、完成に向け総力を結集

 首都圏の治水対策や都市用水供給、発電などを目的に、国土交通省関東地方整備局が群馬県長野原町で進めている八ツ場ダム建設事業。本体工事を担う清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム異工種JVは、さまざまな工夫を凝らしながら、工事を進めている。堤体が約9割まで立ち上がった今も、約500人が昼夜で作業に当たり、完成に向け力を結集している。

 ◇大型設備や並行作業で工期短縮◇

 同ダムは堤高116メートル、堤頂長290・8メートル、堤体積約100万立方メートルの重力式コンクリートダム。総貯水量は1億0750万立方メートルに達し、東京ドームを約87個分満水にできる。現在は堤頂部のピア構築のほか、遮水のためのセメントミルク圧入なども展開中だ。

 ダム本体の構築に当たっては、スランプゼロのコンクリートをブルドーザーで敷きならし、振動ローラーで締め固めていく「巡航RCD工法」を採用。ピーク時には1カ月で約6万立方メートルを打設した。打ち継ぎ部をバキュームなどで清掃するなど、品質管理も徹底した。

 工期短縮を狙いに、ダム監査廊や放流設備などでプレキャストを積極的に取り入れており、そうした箇所には高流動コンクリートを採用した。表面部分は水を止める機能が求められるため、セメント量の多いコンクリートを打設した。清水建設JVの平塚毅統括所長は、「機能に応じてコンクリートを使い分けて、縫い合わせるように一体化させている」と説明する。

放流管の組み立ては上流側に設けた構台の上で実施。設置位置まで堤体コンクリートが打設されたタイミングに合わせ、横引きして据え付けた。これにより堤体コンクリート打設を極力止めずに設置することができたという。設備の大型化なども図り、工期短縮につなげている。

 ◇3Dスキャナーなど駆使し施工品質確保◇

 円滑な資材搬入もカギとなる。旧吾妻線跡を活用して、原石山から現場まで延長約9キロをベルトコンベヤーで結び、搬入効率を高めた。多種多様なコンクリートを用いる中で、使用する骨材を間違えないよう3次元(3D)スキャナーで骨材粒径を判別する新システムも取り入れた。

 清水建設らによるコンソーシアムとして、国交省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」を受託して、新技術開発も進めている。

 平塚所長は「コンクリートダムで一番怖いのはストップすること」と話す。1日当たりの設備損料や人件費は約2700万円。作業が止まれば出来高が上がらないまま、コストが積み上がっていく。

 ベルトコンベヤーにトラブルが生じたこともあったという。その際は長崎県から部品を取り寄せ、深夜に作業を進めて早朝に復旧させた。「絶対に止めないという緊張感を皆が持ってくれている。その積み重ねがあって今がある」と平塚所長。たすきを渡してゴールを目指す駅伝の姿に重ね、「そういうところがコンクリートダムの良いところ」と笑顔で話す。工期は20年3月まで。一体感のあるチーム力を武器に、完成へと突き進む。

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