街づくりという仕事は発注者だけでなく、 地域住民との対話が欠かせない |
準大手の建設コンサルタントでPPP関連の支援業務に従事する大橋和音さん(仮称)は、街を活気づけるためのアイデアを出そうと日夜奔走する。地方自治体を中心に、街の将来像を描く基本構想やガイドラインを検討し、住民説明会に赴き事業効果を説明する機会も多い。自ら考えたアイデアが豊かな生活につながるよう、ひた向きに努力を続ける。
地方都市の大学で都市計画を学んだ。卒業後は大手金融機関のシステムエンジニア(SE)として5年間勤務。その後、会社の同僚と結婚することになり、社会人として自分を育ててくれた会社を退職した。その後、夫の転勤に伴い生活の場を海外に移した。転勤先の国で仕事をしようと思ったが、日本の1級建築士資格がなければ都市計画業務に携われないと知った。国家資格がなければ自分の望む仕事に就けない。資格の大切さを痛感した。
街づくりに興味があるのに、現状の自分に満足していいのか-。学生時代に学んだ都市計画で身を立てたいと思い、28歳の時に建築士資格の受験を決意した。帰国後、専門学校に通って猛勉強を重ね、念願がかなって建築士の仲間入りができた。
今の会社に入ろうと思ったのは、地方の再開発事業や地方創生に力を入れていたからだ。入社試験をパスし配属されたのは、公共と民間が知恵を出し合い土地や建物を有効活用するPPPの専門部署。プロジェクトの基本構想を立案するため、複数のアイデアを提示する仕事を任された。入札公告作成のアドバイスもこなすなど、業務内容は多岐にわたる。
1日のうち最も多くの時間を割くのが基本構想や入札説明書などの資料作成だ。SEとして培った知識と経験を生かしVFM(バリュー・フォー・マネー)を自動で算定できるプログラムを開発した。短時間で算定結果を仕上げるなど仕事の効率化を肝に銘じる。
数々のPPP事業を手掛ける中、印象深いプロジェクトの一つが地方都市で行った庁舎跡地の開発事業。高齢化が深刻な地域にどう人を集め、魅力を持たせるか必死で考えた。市民の交流機能を備えた複合施設を提案し、受注につながった。現在は完成した施設がどのように使われ、地域社会にどう貢献できるのか検証する作業に携わっている。
プロジェクトによっては住民から叱責を受けるなど、つらい場面で矢面に立つこともある。そんな時は、発注者と市民をつなぐ仕事をしているんだと自らを鼓舞する。入社して10年。会社の成長を考え、実行する立場になった。責任あるポジションに就いても初心だけは忘れない。書類作成など日の目を見ない作業が続くこともある。けれども街の将来像を想像するとワクワクする。会社と自分、そして街の成長を重ね合わせ、今日もアイデアづくりに心血を注ぐ。
0 comments :
コメントを投稿