2021年11月30日火曜日
【回転窓】備えあれば憂いなし
【会場は新宿駅西口広場イベントコーナー】東建ら、12月8~9日に建設系高校生作品コンペ展
【延べ7.5万㎡、設計・施工は鹿島】ヨドバシ仙台第1ビル開発(仙台市宮城野区)、国交省が民間都市再生事業計画に認定
ビルの完成イメージ(報道発表資料から) |
国土交通省は、ヨドバシホールディングス(HD)が仙台市宮城野区のJR仙台駅東口で建設を進める「ヨドバシ仙台第1ビル開発計画」を、民間都市再生事業計画に認定した。複合商業施設として魅力的な都市空間を形成するとともに、同ビルと接続する駅前広場の歩行空間やオープンスペースの拡充、バス発着所・待合所の整備で交通接続機能が強化される。金融支援や税制上の特例措置などを受けることができる。設計と施工は鹿島が担当。事業施行期間は11月1日~2023年4月30日を予定する。
計画地は宮城野区榴岡1の3の1ほか(敷地面積1万5430平方メートル)。施設規模はS造地下1階地上12階建て塔屋1階延べ7万4670平方メートル。1~6階にヨドバシカメラの店舗と商業施設が入り、6~9階が駐車場、10~12階はオフィスとなる。地下1階と3階部分はそれぞれ地下連絡通路(自動車専用)とペデストリアンデッキで道路を挟んだ向かい側にあるヨドバシ仙台第2ビルと接続。第2ビルの店舗が第1ビルに移り、飲食テナントやアパレル、雑貨などの複合商業施設に生まれ変わる。
計画地一帯は仙台市の都心再構築プロジェクトとともに20年9月には国の特定都市再生緊急整備地域に指定。駅東口エリアの魅力を牽引する街づくりを創出する。
【親水空間を生かしにぎわい創出】神戸市マリンピア神戸未利用地活用(垂水区)、優先交渉権者に三井不グループ
三井不動産らが提案した施設の完成イメージ(神戸市提供) |
神戸市は「マリンピア神戸土地活用事業」の事業者を決める公募型プロポーザルで、三井不動産・ポトマック(神戸市中央区)グループを優先交渉権者に選定した。事業場所は垂水区のウオーターフロント地区「マリンピア神戸」内西側の未利用地約2・1ヘクタール。事業では30年間の事業用定期借地権を設定。事業者グループは親水空間を生かし、物販・飲食などにぎわい創出につながる複数の施設を整備・運営する。年間約57万人の集客を目指す。
対象区域はマリンピア神戸内の西側にある稚魚育成ラグーンを囲む敷地2万0957平方メートル(垂水区海岸通2169の1ほか)。このうち平地が9845平方メートル、ラグーンのり面が1万1111平方メートルを占める。
用途地域は第2種住居地域で、建ぺい率60%、容積率200%。ラグーンは利活用事業の対象外となる。土地の貸し付け額は1カ月当たり550万円。
優先交渉権グループの提案によると、▽フードリゾート(6714平方メートル)▽コミュニティー(1863平方メートル)▽スイーツ&ガーデン(3480平方メートル)▽「BE KOBE」モニュメント(882平方メートル)▽アクティビティレジャー(3368平方メートル)-の5エリアにゾーニング。北西側の「フードリゾート」ではS造2階建て延べ1132平方メートルの地産レストラン・物販棟やバーベキュースペース、水景デッキを整備、ラグーンに面した砂浜をビーチに活用する。
北側の「コミュニティー」は屋外店舗やイベント活用のスペース、南東側の「アクティビティレジャー」はラグーンのり面を生かしボルダリングなどの遊具スポットとする。2022年1月ごろに市と事業者で覚書を交わした後、同6月ごろに定期借地権設定契約を結び土地を引き渡す。設計などを進めた後、23年5月までに着工する予定。
【記者手帖】身近にあるマージャン
【施工は鹿島、創建時の姿復元】旧九段会館(東京都千代田区)の保存棟の復元工事が最終段階に
国の登録有形文化財に指定されている歴史的建造物「旧九段会館」(東京都千代田区、1934年竣工)の一部を保存・復元する工事が最終段階を迎えている。戦前の職人技や素材を可能な限り保存しながら、現代の工法や技術も活用して創建当時の姿を復元。耐震性も高め、安全と保存の両立を実現する。旧九段会館部分(保存棟)の工事は12月に完了。17階建ての新築部分を加えたプロジェクト全体では2022年7月の竣工を予定している。
保存棟の外観(東急不動産提供) |
皇居のお堀端に立つ九段会館は竣工当時、「軍人会館」として建設された。RC造の現代建築に和風の瓦屋根をのせる和洋折衷の建築様式「帝冠様式」の代表作。建築家の伊東忠太(1867~1954年)らが設計に携わった。S・RC造地下1階地上4階建て延べ約1万4000平方メートルの規模。国産大理石など貴重な建材を随所に利用し、総建設費は現在価値で約65億円とされている。
終戦後は連合国軍総司令部(GHQ)が接収した。その後、日本遺族会に無償で払い下げられ、名称を「九段会館」と改めて結婚式場やコンサートホールなどに活用された。2011年の東日本大震災で起こった天井部分の崩落事故を機に廃業し、土地と建物を国に返還。17年に東急不動産と鹿島が土地(定期借地権)と建物を落札し、建て替え計画がスタートした。
建て替え計画のコンセプトは「水辺に咲くレトロモダン」。旧九段会館の一部を保存棟として残しつつ、新築する17階建てのオフィスビルと一体化。歴史的建造物と現代建築が融合するデザインを目指している。
旧九段会館は内堀通りと靖国通りに面した部分をL字状に保存。既存の約1万4000平方メートルのうち、7000~8000平方メートルを再活用している。東急不の岡田正志社長は「建物の一部ではなく、2面をほぼ完全に保存している。前の形をそのまま復元できていて、迫力のある施設になると思う」と自信を見せる。
九段会館のエントランスは、正面玄関ホールのブロンズ製の扉が印象的だった。この大きな扉は風雨による劣化が進んでいたため、ステンレスで新たな下地を作り、ブロンズ仕上げ材で組み直して復元した。北東の玄関は創建時から壁面に使用されていた大理石をそのまま活用。鹿島の担当者は「当初は新たな石に貼り替える予定だったが、模様が美しく保存状態も良かったので残すことになった」と話す。壁の剥落を防ぐため現代技術も活用。打ったピンを樹脂で固定する「FST工法」を採用した。
工事では現代工法を取り入れた保存作業が進む(10月29日撮影) |
外壁の「擬石」や「スクラッチタイル」は、創建時の状態で残されており大部分を残すことにした。温水高圧洗浄にかけて創建当時の風合いをよみがえらせた。屋根瓦は状態の良いものを転用し、足りない部分は新たに製作して補っている。瓦の色彩にばらつきを出すため古い釜を使用。40色以上試作し、再現度の高い4色を採用している。
内装の保存・復元にもこだわっている。刀剣や陸軍勲章などをデザインに取り入れた金属製装飾が、柱や壁などに施されている。腐食がないかを確認しながら、きれいに磨き上げ再び活用している。2階にあった応接室と役員室は補修・復元し、90年前の雰囲気を感じさせる貸し会議室として整備する。工事中、応接室の壁面から正倉院宝物殿にある銀壺(つぼ)と類似した模様のクロスを発見。壁面塗装を丁寧に除去し、歴史的価値が高い模様のクロスを復元した。
状態を確認し半数を再利用した屋根瓦(東急不動産提供) |
2階と3階にあった宴会場は創建時の姿を復元し、大規模な会議などを開催できる会議室としてリニューアルする。2階の「鳳凰」では壁や天井に施されたしっくいによる唐草模様のデザインを再現。専用のこてを独自に開発し、左官職人の手作業で復元している。3階の「真珠」では天井が改修されていたため、戦前の絵はがきや創建時の資料を基に、内装の雰囲気をよみがえらせた。
歴史的建造物の躯体を安全に活用するには、耐震性を高めなければいけない。免震レトロフィット工法を採用し、地下1階に免震装置を組み込み、保存部分への影響を最小限に抑えつつ耐震性を高める。柱の傾きに細心の注意を払い施工し、今後60年以上は耐震性能を維持できるという。
新築棟を含めた建物全体はS(CFT)・RC・SRC造地下3階地上17階建て延べ6万7738平方メートルの規模。新築棟は感染症対策やBCP(事業継続計画)対策を施したオフィスビルになる。牛ケ淵に面する敷地の北側には広場を設け、憩いの空間を創出する。
【事業概要】
事業名称=(仮称)九段南一丁目プロジェクト
事業主体=ノーヴェグランデ(東急不動産、鹿島の合同会社)
建設地=東京都千代田区九段南1の5の1ほか
建物規模=S(CFT)・RC・SRC造地下3階地上17階建て延べ6万7738㎡
設計=鹿島・梓設計JV
施工=鹿島
竣工=22年7月(予定)
2021年11月29日月曜日
【回転窓】次の獲物
【新水門で減災防災と地域活性化】新安治川水門アイデアコンペ、最優秀賞に川村宣元氏の「海の大手門」
安治川河口は千石船の停泊地で大阪の海の玄関口だった歴史を踏まえ、風格と防備機能を備える大阪城大手門が水門に通じると解釈、「洗練・風格・堅ろう」と歴史を新水門デザインに反映。周辺エリア案では現水門の保存公園案や近隣商店街の活性化策を示した。
新水門の上部・下流側の幕板は、大手門のひさしのようなデザインとし、太陽光発電パネルを設け夜間照明の電源を確保。柱頂部のゲート巻き上げ機構を設ける機械室には大きな明かりを設ける照明室を加える。上部・上流側は「優しく透過性のある表情」とし、新水門の管理棟は「安定感のある台形」を採用。
弁天町エリア整備は、水門と弁天埠頭公園、オーク弁天商店街を関連付けた。現水門管理棟跡地に水門を見る公園を、弁天埠頭公園にはアーチ型の現水門を保存する安治川水門記念公園を提示。オーク弁天商店街は街区ごとに植える木を変えリズムをつくる。安治川護岸は地域に根付くスケール「隠れたるスケール」に基づき堤体を分割し、端部は角度を付けて重ね合わせる。川の駅も提示した。
川村氏のプランに対し、コンペ審査委員は「川の駅のデザインなどがユニーク。大胆さと現実性を兼ね備えたランドスケープが地域全体の活性化につながることを期待させる」「隠れたるスケールという概念を利用した護岸デザインも具体的で秀逸」と評価。
「新安治川水門アイデアコンペ」(後援=土木学会)は新水門と管理所敷地、港区弁天町周辺エリア、安治川水域(北区中之島~此花区夢洲)を対象に実施。9点の作品が寄せられ、1次審査で6点に絞った。
最優秀賞以外の入賞作・提案者は次の通り。
【優秀賞】守り、干渉する、すいもん=桝谷英弥、畑喬介、渡瀬遣太、毛利祐輝(京都大学大学院)
【奨励賞】帰ってきた「まちみなと」 Benten Biennale=水野裕介、近藤美沙希、坂元泰平(大日本コンサルタント)▽NEW GATE ベイエリアと都心部を結ぶ場所=長谷川夏輝、上埜由美子、王永成(富山大学)▽BENTEN2050=小林諒(佐藤総合計画/yuureibool)、宇田川剛(同)、田中達大(トライコーン/yuureibool)、木下翔太(ケーティーマシナリー/yuureibool)
【審査員特別賞】木村昌弘(大阪大学)、岡崎善久(岡崎善久建築設計事務所)、加藤創一(近畿大学)、河西茂行(地球デザイン研究所)。
【21年度補正予算案に6170億円】経産省が半導体生産工場の整備支援、データセンターの地方誘致も
半導体産業の基盤を早急に強化する政策パッケージに基づき、工場整備の資金補助を行う「先端半導体生産基盤整備基金」の財源として6170億円を計上。データセンター新設に必要となる電力・通信インフラ整備費用を補助し、東京圏以外の地方での新規拠点設置を後押しする。=1面参照
基金を設置し先端半導体の生産基盤整備計画に必要な資金の最大2分の1を補助する。安定供給の必要性が高い半導体(マイコン、アナログ、パワーなど半導体)の既存設備の脱炭素化・刷新事業にも470億円を配分し、製造設備の入れ替えや増設にかかる費用の3分の1、最大150億円を補助する。
レジリエンス(強靱性)確保の観点から、データセンターの地方拠点整備を誘導する。関連経費71億円を計上し、民間事業者の新規拠点整備に必要なインフラ整備などにかかる準備費用の2分の1を補助する。長期のインフラ整備には22年度以降の4年間で総額455億円を国庫債務負担行為で支出する。
蓄電池の国内製造基盤の確保にも注力。蓄電池・材料の生産・リサイクルに関する大規模製造拠点を設ける事業者に対し、建物や設備、研究開発の費用を補助する。関連経費1000億円を充てる。
補正予算案の総額は5兆4290億円。コロナ禍の影響で売上高が50%以下に落ち込んだ中小事業者や個人事業主に地域・業種を限定しない形で支給する「事業復活支援金」に2兆8032億円を配分する。
中小企業の業態転換や事業再編を支援する「事業再構築補助金」には6123億円を計上し、従来より売上高減少要件を一部緩和するなど、使い勝手を高めとした。
【福良港(兵庫県南あわじ市)に設置へ】日立造船、国内2例目の海底設置フラップゲート製作
日立造船は堺市西区にある堺工場で26日、福良港(兵庫県南あわじ市)に設置する「フラップゲート式水門」を公開した。県が整備している湾口防波堤で使用。津波や高潮が発生すると海底に沈めた扉体が浮力で起き上がり、港の開口部を閉鎖する。12月中旬に堺工場から福良港まで海上輸送し設置工事に入る。同じ形式の水門は岩手県の大船渡漁港(大船渡市)に設置している。
県が2019年に発注した「福良港煙島水門設置工事(機械工)」の受注額(税抜き)は23億円。水門は純径間25メートル、有効高11メートルで2枚の扉を備えている。直接基礎で海底に固定。函体内にコンクリートを打設し、自重で津波や高潮に対応する。20年4月に工事着手した。来月中旬に総重量3800トンの水門本体を福良港まで約80キロえい航し、クレーン船で据え付ける。工事完了は来年3月25日を予定する。
水門は海底に倒れた状態で函体に扉体を格納している。津波などが発生した場合、係留フックを解除すると2~3分程度で扉が起き上がる。緊急時は人為操作なしで自立閉塞(へいそく)する。景観に影響がなく船舶なども航行できる。扉体の設置枚数を増やせば長径間のエリアが守れる。
同社の鎌屋明執行役員は「南海トラフ巨大地震や首都直下型地震などの発生が予想されている。海底設置型フラップゲート式水門は防災・減災のための設備として貢献できる」と話した。
【五輪の雰囲気体感】東京都、五輪競技会場のカヌー・スラロームセンターで見学会開く
激流の中、華麗なパドル裁きで下流へと突き進むカヌーイストたち--。東京都は26日、東京五輪のカヌー競技会場となった江戸川区のカヌー・スラロームセンターの見学会を開いた。東京五輪で活躍した羽根田卓也選手らが参加しカヌーの動き方を実演した。
カヌー・スラロームセンターは都立葛西臨海公園の隣接地に2019年完成した。国内初の人工スラロームコースを備えている。五輪終了後は水上競技の国際大会やレジャー施設として利用する。来夏に予定する再開業に向け、都民らに五輪会場を体感してもらおうと都が見学会を企画した。
当日は午前、午後に分かれ合計約100人が集まった。担当者から競技コースなど施設の説明を受けた後、選手から競技の魅力などを聞いた。競技コースは長さ200mで幅10m、勾配2%。左右に配置した障壁ブロックが大きくうねる水流を生み出している。22年夏に一部開業し、23年春のグランドオープンを予定する。
【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】戸田建設「動きやすさと機能美を追求」
ベースカラーは日本古来の「勝ち色」とされる濃紺。デサント独自のタフネス素材を採用したジャケットとパンツはストレッチが効き、はっ水機能も抜群だ。暗い場所でも視認しやすいリフレクター、静電気を防ぐ帯電防止糸など建設業ならではこだわりも満載だ。
夏用上着はポロシャツとワイシャツタイプ、防寒着はダウンジャケットとキルティングコートを用意。ポロシャツは吸汗速乾の機能や紫外線(UV)カット機能などを持たせた。キルティングコートは体の熱を逃がさず湿気は通す断熱中綿素材を使っている。
「従来とは異なる働く姿をイメージした。目指したのは動きやすさと機能美」と池端裕之建築工務部生産システム推進1課長。ユニホームから始まる働き方改革にも期待する。
【駆け出しのころ】応用地質取締役常務執行役員経営企画本部長・中川渉氏
◇データとオリジナリティーが大切◇
子供の頃に特殊な岩石を集めるのが好きで、地質にも関心があり、大学では火山の研究をしていました。今後の進路を考えた時、経済が成長を続けている時期だったこともあり、研究を続けるよりも学んだことを社会に生かしたいという思いが強かったです。当社が当時掲げていた「地質工学の創造」という経営ビジョンに引かれました。
入社後は静岡営業所に配属。岩盤(プレート)の動きからさまざまな地学現象を解釈しようとするプレートテクトニクスや津波などで関心の高いエリアだったことから、配属先での業務には研究者という観点も含めて期待していました。
しかし、そうした思いは初日から改めることに。いきなり手伝うことになった地滑りの現場は、徹夜になりました。1年目は地滑りの変位予測の式に基づき、手計算で懸命に入力し予測していたのを覚えています。
トンネル関係の業務に携わりたいと思っていた5年目ごろに異動した神戸は当時、NATMの中心地。本州四国連絡橋公団(現本州四国連絡高速道路会社)が道路トンネルにNATMを初導入した「舞子トンネル」は思い出深い案件の一つ。掘削による地山の変位を計測・解析する業務を担当し、現場に張り付く毎日。施工者と一緒になって細心の注意を払いながら作業を進めました。
新しい計測技術を海外から導入し、国内の現場に展開することが盛んな時期でもありました。日々の業務は大変でしたが、面白さを感じながら仕事をしていました。
先輩技術者に言われた「自分が取ったデータを信用しろ」という言葉は大切にしています。既にあるデータや決まりごとをうのみにせず、現場に赴き、自分の目で見たものを信じることの大切さを学びました。
入社12年目、自宅マンションを買った1カ月後に発生した阪神・淡路大震災は、やはり忘れられない出来事です。ひどい惨状の市街地は移動もままならず、混乱を極めた環境下で次々と舞い込む事案に必死に対応していました。
震災以前は技術士の資格取得にそれほど関心はなかったのですが、非常時では所属する会社・組織に関係なく、資格を持っていれば一人の技術者として信頼してもらえるのだと実感。すぐに受検しました。震災を機に、技術者が社会から必要とされている存在なのだと真に理解できたことも、自分にとって大きな転機となりました。
やはり自ら行動して経験しないと、技術者の責務は果たせず、自身の成長にもつながりません。若手にはデータと自分のオリジナリティーを大切にするよう伝えています。先入観で事実だと思い込んでいることが実際に本当なのか。自身の感性を尊重しつつ、多角的な目線で物事を判断してもらいたいです。
入社12年目ころ、阪神・淡路大震災から数カ月後の神戸支店で |
(なかがわ・わたる)1984年富山大学大学院理学研究科地球科学専攻修了、応用地質調査事務所(現応用地質)入社。関西支社長、東京支社長、メンテナンス事業部長、経営企画本部長(現任)などを経て、2020年から現職。兵庫県出身、62歳。
2021年11月26日金曜日
【回転窓】宇宙貢献で魅力アップも
リーダーシップがあって適応能力が高く、極限環境でも柔軟な思考と着眼点から適時的確な判断と行動ができる。明確な目的意識を持ち、達成意欲が強い--▼そんな人材は、どこの世界でも引く手あまただろう。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、13年ぶりとなる宇宙飛行士の募集に向けて発表した求める人物像のイメージだ▼将来を担う後継者の育成は宇宙分野でも喫緊の課題。「国際宇宙ステーション(ISS)への単身赴任や、月面基地への長期出張もあるかもしれない」と多数の応募を呼び掛ける▼選抜に当たっては豊かな表現力と発信力も評価する。宇宙飛行士は、超一流のエンジニアであると同時に、発信者としてのイメージも強い。ミッション参加で得た体験などを世界中の人々と共有することも重要だ▼国土交通省が、月面での活動拠点建設を見据え、技術開発に集中投資する対象案件を選定した。ゼネコンらの10件が選ばれ、国際的な宇宙開発プロジェクトへの貢献を目指す。宇宙飛行士の募集は若干名だが、こうした建設会社は門戸が広い。夢ある若者を引き付ける魅力の一つとして花開いてもらいたい。
【未利用地の複合機能誘致など促進】東京都、ベイエリアの街づくりに注力
水辺や緑地を生かした2040年代の都市イメージ (報道発表資料から) |
東京都が東京湾岸エリアの街づくりにより力を入れる。基盤整備と並行した低未利用地への複合機能の誘致や民間開発を促す制度導入、研究機能の集積などを検討。2040年代に向け海辺や緑地の環境と調和しながら、気候変動などのリスクに対応する持続可能な都市構築を目指す。
25日に意見募集を始めた「東京ベイeSGまちづくり戦略(ドラフト)」で方向性を示した。22年3月の策定を予定する。50年後、100年後の臨海副都心などの将来像を盛り込んだ「東京ベイeSGプロジェクト(Version1・0)」(4月策定)の実現に向け、40年代まで必要な施策の在り方を示す。
ドラフトによると、築地から臨海副都心まで貫く「都心部・臨海地域地下鉄構想」の開通を見据え、未利用地の活用に注力する。豊洲や晴海で土地を高度利用し、スポーツやエンターテインメント、宿泊などの機能が融合した拠点を形成する。
民間事業者の提案を生かす仕組みを構築し、公共空間も含む広いエリアで開発の検討を後押し。変化し続ける社会ニーズを的確に捉えた開発事業を誘導する。最先端の研究施設を集積した「海上都市」はイノベーションを促す拠点になる。技術革新に併せ、建築物の木造化や都市再生特別地区制度を活用した脱炭素化などに取り組む。
水辺空間の確保では葛西臨海公園周辺の干潟を保全していく。東京五輪・パラリンピックの大会会場周辺が散策できる親水空間を創出。スーパー堤防や船着き場の整備など防災性を高める施策も推進する。
2021年11月25日木曜日
【フォトジェニックな構造物、ぜひ投稿を!!】長野建協青年部会、インスタ活用のフォトコン開催
青年部会のインスタグラム公式アカウント「@choken_young」をフォローし、「#(ハッシュタグ)長建インスタ」「#建設フォトコンテスト」を付けて作品を投稿する。審査結果は2022年1月末、青年部会が運営するウェブサイト・長建ヤングマンと公式インスタグラムで発表する。
グランプリ(1点)に5万円分のQUOカードを贈る。優秀賞(6点)には精巧な重機ミニチュアモデル、入選(20点)は重機のミニカーをプレゼントする。コンテストは建設業の魅力・役割を幅広く発信し、若年者の入職促進につなげるため開催する。
【渋谷駅東口に近接、延べ4.5万㎡】渋谷二丁目17地区再開発(東京都渋谷区)、竹中工務店で12月着工へ
再開発ビルの完成イメージ(報道発表資料から) |
東京都渋谷区の渋谷二丁目17地区市街地再開発組合は、12月1日に延べ約4・5万平方メートルの再開発ビルの新築工事に着手する。設計は東急設計コンサルタント・三菱地所設計・パシフィックコンサルタンツJVが担当。竹中工務店が施工する。2024年度上期の開業を目指す。
再開発の対象となるのは渋谷2の100(施行面積約0・5ヘクタール)。渋谷駅東口に位置し、渋谷ヒカリエと青山通りに隣接する。建設するビルは地下4階地上23階建て延べ4万4500平方メートルの規模となる。高さは約120メートル。低層部に商業、オフィス機能を中高層部に配置する。
外装材の断熱性能を高めるなど、省エネルギーに向けた技術を導入する。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)で最高ランクを取得した。都内の超高層複合用途ビルで初の「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)Oriented」の認証も取得した。組合には▽塩野義製薬▽南塚産業▽NANZUKA▽東宝▽太陽生命保険▽東急-の6社が参加組合員として参画している。
【ご冥福をお祈り申し上げます】岡山大名誉教授・阪田憲次氏が死去
1943年、中国天津特別市生まれ。69年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。88年岡山大教授、99年環境理工学部長、2003年大学院自然科学研究科長などを務め、09年岡山大名誉教授。学会では日本コンクリート工学協会会長や日本ダム工学会会長、土木学会会長などを歴任した。
コンクリートダムに精通し国内外の多くのダムを視察。気象変動による再生可能エネルギーの必要性を早くから指摘し、水力発電の可能性を主張していた。土木学会長を務めていた時に東日本大震災が発生、被害調査の陣頭指揮を執った。学術団体と共同で出した緊急声明で「われわれが想定外という言葉を使う時、専門家としての言い訳や弁明であってはならない」と技術者の在り方を示すとともに、「技術者には想定外を想定する想像力が求められる」と訴えた。
本紙最終面の「所論諸論」の執筆者に11年10月から加わり、19年2月まで60回近く執筆した。誠実であることの大切さや、時には聖書や文学から言葉を借り、技術者としての人生観や倫理観を説いた。正義感が強く、人間味あふれる文章は多くの読者を引き付けた。
【投資額500億円、クレーン最大揚程158m】清水建設の世界最大級SEP船、進水迎える
進水を迎えた建造中のSEP船 |
清水建設が約500億円を投資し建造している世界最大級の自航式SEP船(自己昇降式作業台船)が約7割完成し、24日にジャパン・マリン・ユナイテッド呉事業所(広島県呉市)のドックから進水した。今後はクレーンなどの艤装(ぎそう)や船員居住区の整備などを進め、22年10月の完成を目指す。完成後は船員の運航訓練を行い、23年春に初弾案件の施工を予定している。
SEP船には短縮時の揚重能力2500トンのメインクレーンを搭載する。クレーン揚程は最大158メートルに達し、12~14メガワット級大型風車のナセル取り付けも可能。洋上風力発電の開発が旺盛な欧州では、2000~2500トンクラスのSEP船を建造している。欧州と同等以上の揚重能力を備えることで風車の大型化に対応する。
黒潮や台風などで海象条件が厳しいとされる太平洋での施工にも対応できる点が特長。船体が142メートルと大型で、太平洋特有の長周期波浪の揺れも影響が小さい。一般的に施工の稼働率が低くなるとされる千葉県沖や茨城県沖でも高効率に稼働できるという。
SEP船は清水建設が単独保有する。清水建設エンジニアリング事業本部新エネルギーエンジニアリング事業部の白枝哲次事業部長は「単独で保有することで建設に対する判断のスピードが速くなる」とメリットを説明する。自社で保有することで欧州のSEP船を日本まで持ってくる必要がない。航海コストを削減でき受注時のコスト競争力で強みが発揮できる。
SEP船完成後の課題は「人材の確保」(白枝事業部長)になる。国内には洋上風力発電施設建設のノウハウを持つ作業員が少ない。今後洋上風力開発が活発化するにつれ、人材確保が難しくなる可能性がある。
2021年11月24日水曜日
【回転窓】どうなる黄金色のトンネル
【歴史的建築物の保存・活用を検討】鴻池組旧本店(大阪市此花区)、有形文化財登録へ
鴻池組旧本店の洋館㊨と和館(報道発表資料から) |
鴻池組旧本店は創業者の鴻池忠治郎(1852~1945年)が企業の近代化策の一環として1910年に建設した。木造2階建ての洋館と和館が連接した形式で、扉を隔てて行き来できる。
洋館は大正期に流行したセセッション様式の外装が特徴。2階応接室の暖炉や調度品の装飾はアール・ヌーヴォー様式でまとめている。和館は大阪の伝統的な町家の表構え。室内の欄間などに彫刻が施された繊細な意匠が特徴的だ。
鴻池組は答申を受け、歴史的建築物の保存・活用に関する研究開発を促進。地域資産として活用してもらえるよう、建物の維持・保存と情報の発信に努めていく考えだ。
【戦後庁舎建築の到達点】文化審、香川県庁舎旧本館・東館(高松市)など10件の重文指定答申
文化審は旧本館・東館を「戦後の庁舎建築の到達点の一つとして、歴史的価値が高い」と評価した。
旧本館と東館は、1958年に建設された丹下氏の初期の作品。RC造で木造建築の木組みの美しさを表現した建物として知られる。1階を階高のピロティとロビーにし、県民に開かれた庁舎とした。旧本館の中央にコンクリートの耐震壁を配置。建物の核とし、内部にエレベーターや設備などを集中させた。その後全国に整備した庁舎建築の模範になった。
文化審は併せて、豊かな建築装飾で彩られた「霧島神宮本殿・幣殿・拝殿」(鹿児島県霧島市)の国宝への指定も答申した。
2021年11月22日月曜日
【回転窓】旅の思い出を集めに行こう
ふるさとの道の駅で「マンホールカード」を配布していることを知り、帰省時に立ち寄った。その時に係の人から同時に勧められたのが「LOGet!CARD(ロゲットカード)」▼初めて見るカードで調べてみたら、全国の観光スポットを統一フォーマットで紹介する、いわゆる“ご当地カード”だった。発行する自治体や企業などが厳選した写真、公認の解説文で観光スポットの魅力を伝えている▼2020年7月に52種類の配布が始まり、21年4月には28種類が加わって今では80種類になっているという。動物園や山、城、タワーなどさまざまな観光資源がカードになっている。その中から好きなジャンルのカードを集めるのもなかなか楽しそうだ▼「ロゲット」とはLOG(足跡)とGet(得る)を組み合わせた造語。“旅の思い出を集めに行こう”がコンセプトのようだ。コロナ禍で始まったこの企画は旅に出掛ける動機付けの一つになるかもしれない▼新規感染者数の減少とともに経済活動も徐々に回復し始めた。うがいや手洗い、マスクの着用など感染防止対策を怠らず、少しずつ行動範囲を広げていきたいと思う。
【多関節アームなど忠実に再現】ヤマコン(山形市)、コンクリポンプ車の小型模型発売
多関節のアームを展開したヤマコン仕様のコンクリートポンプ車 (トミーテック提供) |
コンクリート圧送や設備配管を手掛けるヤマコン(山形市、佐藤隆彦社長)が同社仕様コンクリートポンプ車の小型模型を発売する。玩具メーカーのトミーテック(栃木県壬生町、岩附美智夫社長)とコラボレーション。建設機械をモチーフにした小型ジオラマシリーズの一つとして製品化した。発売は2022年3月を予定している。
コンクリートポンプ車の小型模型は、多関節のアームや伸縮・展開するアウトリガーなどを再現した。150分の1スケールでは再現が難しい複雑な部位も精巧に作り込んだ。「建設業のPR手法として小型模型の製品化が長年の夢だった」(ヤマコン)という。
油圧ショベルなどの建機を小型模型化したトミーテックの「GJ(グッジョブ)!はたらくのりもの百景 002 未来を築く建設現場」にラインアップされる。価格(税込み)は1760円。
【延べ1.1万㎡、固定席1000席程度】静岡県富士市総合体育館等PFI、三菱HCキャピタルグループに
新体育館の完成イメージ(報道発表資料から) |
静岡県富士市は19日、PFIを導入する「富士市総合体育館等整備・運営事業」の優先交渉権者に三菱HCキャピタルを代表とする企業グループを選定したと発表した。提案価格は99億4520万9580円(税込み)。2022年3月に本契約を締結する。
代表企業以外の構成員は大建設計、大成建設、静岡ビル保善、東京ドームスポーツ。協力企業はゆたか建設設計事務所、石井組、ニュータウンビルサービス、東京ドーム、エイワンスポーツプラザ、SBSプロモーション。22年4月に設計を開始し、25年3月までに建設を終える。同4月に供用を開始するほか、管理棟(旧温水プール)を解体する。事業期間は40年3月まで。
富士総合運動公園内に新体育館を整備し、既存の野球場や運動広場など公園全体を一体的に維持管理・運営する。事業方式はBTO(建設・移管・運営)。新体育館の規模は延べ1万1850平方メートル。固定席1000席程度のメインアリーナやサブアリーナ、トレーニングエリアなどを設ける。事業場所は大淵254の1ほか。
市は整備・運営事業者を選定するため4月に公募型プロポーザル手続きを開始。9月30日までに2グループから提案があり、審査委員会の審査を経て三菱HCキャピタルグループに決まった。
【グラブ浚渫船など紹介】白海(北九州市若松区)、八幡工高生招き工事講習会開く
講習会の対象は、九州地方整備局北九州港湾・空港整備事務所が発注し、同社が施工する「令和3年度新門司沖土砂処分場(II期)地盤改良工事(第3次)」。地盤改良土量が2万3097立方メートルに及ぶ工事で同社は、受注者希望型でBIM・CIMを活用したICT(情報通信技術)施工を実践している。
グラブ浚渫船に乗り込み、現場を束ねる杉山淳現場代理人による工事概要説明を現地で行った以外は、密を避けるためにリモートを利用。同社本社から石橋社長の主催者あいさつ、北九州港湾・空港整備事務所から大波多昌志副所長の事業説明が行われ、海上・港湾・空港技術研究所の松本さゆりインフラDX研究領域ビッグデータ研究グループ長による技術講演「ICT施工と音響技術」の映像も流した。
現地の見学と講習を聞いた生徒たちからは、「天候などで工事を中止する判断基準は」「陸上と海の工事で使うコンクリートの違いは」といった技術的内容に加え、「土木の魅力を教えてほしい」と率直な質問も寄せられた。
【凜】東日本高速道路関東支社谷和原管理事務所・佐々木弘恵さん
◇情熱忘れず何でも取り組む◇
24時間365日にわたって安全で快適な高速道路空間を、電気や照明など設備面から支える。老朽設備のメンテナンス計画の立案や、更新や修繕などの工事発注を主に担当。設備が新しくなれば故障が減り、保守などを手掛けるグループ会社の負担も軽減できる。「良い走行環境を作り維持することが仕事。最終的には利用者の安全、安心につながる」。
多くの人に貢献できる仕事がしたいと、関東以北から北海道まで広範の高速道路網を支える東日本高速道路に入社した。大学で学んだ電気設備に関する知識が生かせる「施設職」。研修後に配属された北海道支社施設課で難解な設備図面に向き合いながら発注業務に従事。悪戦苦闘の日々の中、上司や先輩のスケジュール確認、グループ会社との調整といった段取りの大切さが身に染みた。
昨年7月から現職。事務所は現場に近く、グループ各社とのやりとりも多い。「人の予定をまず確認する。先を見通す段取り力は今も生きている」。
民営化後、施設職の女性技術者は増えているが全社的には少なく、目指す女性技術者像はまだ描けていない。しかし「情熱をこのまま忘れずに、これからもおごらず業務に当たっていきたい。やらなければできないし、何でも取り組んでみる」と笑顔で語る。
趣味は音楽鑑賞。ライブハウスに行くのが難しい状況が続く。小説を読む冊数が増えている。
(ささき・こうえ)
【中堅世代】それぞれの建設業・302
今も世界のどこかで水に困っている人がいる |
◇水の力で世界を笑顔に◇
「自分の知識を生かして環境問題を解決したい」。世界規模で対応が急務となっているSDGs(持続可能な開発目標)は、企業を成長させるチャンスといえよう。膨大な社会インフラを整備してきたゼネコンや建設関連会社も例外ではない。大手建設コンサルタントの研究職に従事する七瀬五月さん(仮名)は、世界が抱えるさまざまな水問題の解決を目指し、孤軍奮闘している。満足に飲み水が供給されないアジアやアフリカの人々を笑顔にする取り組みに心血を注いでいる。
自然界で起こるあらゆる現象に興味を持っていた子どもだった。「火は一体何でできているのだろうか」。純真無垢(むく)な疑問を投げ掛けては、よく家族を困らせていたものだ。大学で物理を学び、その後は大学院に進学。昔から関心のあった気候変動をテーマに選び、研究に没頭した。「自然環境を扱う企業に就職したい」。自然と建設コンサルを就職先に選んだ。
大学院を修了した2005年、温室効果ガスの排出削減などの目標値を定めた京都議定書が発効された。地球温暖化に対して真剣に向き合うムードが各国で広がり始めていた中、配属先は防災に関連したシステム開発を担う部署だった。降雨量を基に、ダムや河川に流入する水量を解析する業務に従事。新人時代に研修を担当した上司は大変気さくな人柄で、「入社して良かった」と心から思った。
4年を経て、技術開発の中枢を担う技術研究所への配属が決まった。研究所員は砂防や土質などを扱う専門家ばかり。自分の力がどれだけ役に立つのかという不安もあった。「社会に貢献したい」一心で必死に食らいついた。
研究チームに入り、任されたのが水環境を扱った水文解析。気候変動や都市化の影響で、アジアやアフリカ地域は深刻な水資源不足に陥っている。労働賃金の安さなどを理由に東南アジア諸国連合(ASEAN)地域に工場を構える飲料メーカーも多い。国内外の企業にとって、水資源の不足は死活問題だ。水量を安定供給するにはダムの適正配置が鍵を握り、その計画に欠かせないデータ解析という自分の仕事に誇りを持っている。
入社して10年以上がたった。グローバル企業を目指す自社の経営理念を具現化するため、常に自己研さんを怠らない。仕事をしながら、2人の子どもを育てるのは一筋縄には行かず、ふいに心が折れそうになる。そんな時は、研究所長から掛けられた「所内で一番期待している」という言葉が心の支えになっている。
国民に行き渡るだけの水資源を抱えている国は少ない。ある統計調査の試算によると、地球上で人間が使用できる水の量はわずか0・01%という。自分の研究成果によって、どう世界が変わるかは分からない。「会社の期待に応え、地球規模で物事を解決したい」。その気持ちをずっと胸に秘めている。
【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】日本体育施設「左胸に50周年記念の刺しゅう」
5月に50周年を迎えたことを受け、50周年記念としてブルゾンの左胸の刺しゅうには前に向かって走っている人を描いた。刺しゅうのデザインには日本から世界に向けて飛躍していく同社のイメージを込めている。背面には大きくNTSのロゴマークを配置しており、黒地にカラフルなロゴを目立たせている。ポケットはスマートフォンやメモ帳がしっかり収まる大きめのサイズにした。
経営企画本部技術管理グループの阿部共美グループリーダーは「男性社員は家族に『かっこよくなったね』と言われ好評のようだ」と話す。現場の社員からは、「ユニホームがスリムなデザインになった。自分の体もキュッと絞らなきゃと鼓舞している」との声が。新しいユニホームが社員のモチベーションアップにつながっている。
【駆け出しのころ】日本道路取締役兼常務執行役員営業本部長兼海外事業担当・伊藤馨氏
◇何事も目標を持って挑戦◇
小さい頃からものづくりに興味があり、大学進学で迷わず土木を専攻しました。就職活動では大学推薦でゼネコンと道路会社、建設コンサルタント会社の紹介を受けました。デスクワークは性格に合わないと思い、道路会社大手で将来性を感じた当社に入社しました。
配属先は東京23区を管轄する当時の東京営業所。夜間工事が多く全国で一番過酷な職場と聞いていました。先輩から「ここで耐えればどこでも働ける」と言われ、不安と同時に頑張るぞという気持ちになりました。1年目に本格的に担当した工事は首都高速3号線の切削オーバーレイ。夜間の1車線規制工事で現場の真横を車が猛スピードで駆け抜けていきます。命懸けでしたが、初めての経験に楽しさも感じました。「技術は現場で学ぶ」が当時のスタンス。先輩の姿を見たり仕様書を読んだりして、どうすればいいかを考える。分からなければ先輩に聞くという毎日を過ごしました。
次に担当したのは渋谷駅前を走る国道の舗装打ち換え工事です。当時は協力会社の作業員と一緒に泥だらけになって仕事をする機会も結構ありました。仕事のつらさや段取り、作業員に指示する上でも実体験がないと分からないことが多く非常に勉強になりました。
夜間規制工事は仕事の段取りが全てです。当時は携帯電話などなく、業者に材料を手配するにしても場所や時間などを綿密に計画しなければなりません。材料の搬入が遅れると規制解除時間に影響し大問題になります。とにかく段取り最優先で工事に当たりました。
過酷な都内の工事に7年間従事することになります。段取りを優先するあまり技術や品質に関わる仕事が十分経験できず、技術者として不安を感じ始めました。「春先の閑散期に短期間だけでも試験所で品質管理を経験したい」と支店長に直談判したところ、8年目に技術研究所へ異動となりました。材料の研究開発などを担当し物事を客観的、多面的に捉え考察する大切さを学びました。技術部門の方々とつながりができたことも財産になりました。
4年後に旧横浜支店で現場復帰しました。所長として携わった小田原競輪場の全面改修が思い出に残る工事です。技研時代にマレーシアで同様の工事を経験したおかげで、難易度が高い工事がスムーズに行えました。段取りだけでなく技術や品質も考察する気持ちのゆとりもできました。そういった意味でも技研での経験は大きな転機です。
入社当時から支店長になることが目標でした。そこにたどり着くまで苦労の連続。辞めたいと思ったことは何度もありますが「途中で挫折すれば負けだ」と自分に言い聞かせてきました。若者もしっかり目標を定め、今の立場で何をすべきかを考え挑戦してほしい。そうすれば一見つまらなそうに思える仕事も楽しみが見つかります。最近は明確なビジョンを持った若者が多く頼もしく思います。
入社12年目、現場復帰した旧横浜支店で |
(いとう・かおる)1985年横浜国立大学工学部土木工学科卒、日本道路入社。東京支店千葉営業所長、東北支店工事部長、同支店次長、生産技術本部工事部長、執行役員中部支店長、常務執行役員営業本部長、2019年6月から現職。東京都出身、58歳。
2021年11月19日金曜日
【回転窓】その連絡、本当に急ぎですか?
【夢の島総合運動場から世界へ】東京・江東区のスケボーパーク整備、来春にも工事発注
夢の島総合運動場の全景(江東区提供) |
東京・江東区は、夢の島総合運動場にスケートボード練習場を整備するプロジェクトで、2022年4月にも施工者を決める一般競争入札を公告する。同区出身の堀米雄斗選手が東京五輪のスケートボード男子ストリート競技で初代王者になった後、山崎孝明区長がスケートボードパークの整備を表明していた。
夢の島総合運動場の所在地は夢の島1の1の2(敷地面積2万6800平方メートル)。練習場の面積は2000~2500平方メートル程度を見込む。競技人口の増加に向け初・中級者向けの練習場を造る。来年10月の完成、同11月の利用開始を目指す。
12月中旬にも堀米選手を指導する早川大輔コーチや日本スケートボード協会の関係者にヒアリング。施設配置や構造を固め、年度内に区が設計する。設計業務は東京五輪・パラリンピック組織委員会に出向していた建築・土木職員を中心に行う。
【新たなエンタメ拠点に】新宿ミラノ座跡再開発、ビル名は「東急歌舞伎町タワー」に
建設地は14年に閉館した新宿ミラノ座跡地の歌舞伎町1の29の1、3(敷地面積4604平方メートル)。西武新宿駅の東側に近接する。建物は地下5階地上48階建て塔屋1階延べ8万7400平方メートルの規模。高さは約225メートル。設計は久米設計・東急設計コンサルタントJVが担当した。清水建設・東急建設JVが施工し、23年1月の竣工を予定している。
「“好きを極める場”の創出」をコンセプトに娯楽施設を充実させる。地下1階~地下4階には1500人を収容する新宿最大級のライブホールを設置。6~8階は客席数約900席の劇場を整備する。8スクリーンを備える映画館を9~10階、17~47階は計635室のホテルとなる。
【1人1枚、21日から幕張観光情報センターで】千葉市、初音ミクデザインのマンホールカード配布へ
音声合成技術のボーカロイドで人気のバーチャルアイドル「初音ミク」と千葉市章が似ていると話題になったことを機に、市はコラボレーションデザインを製作。初音ミクデザインのマンホールふたを幕張メッセ付近の歩道に設置した。
今回配布するマンホールカードは表面にマンホールふたの画像と設置場所の座標を表示。裏面ではデザインの由来を紹介している。
【BTO+コンセッションを想定】等々力緑地再編、球技専用スタジアムなど3施設はPFIで整備へ
パースは球技専用スタジアムのイメージ(川崎市提供) |
川崎市は中原区にある等々力緑地の再編整備事業に関連し、「球技専用スタジアム」など3施設の整備・運営にPFIを採用する方針を固めた。事業方式はBTO(建設・移管・運営)とコンセッション(公共施設等運営権)を想定。18日の市議会まちづくり委員会に「等々力緑地再編整備実施計画改定案」を報告した。22日から意見募集を実施し寄せられた意見も踏まえ、2022年2月に同計画を改定する。事業者公募は同4月からを予定し、同年度内に決定する予定だ。29年度の整備完了を目指す。
PFIを導入するのは等々力陸上競技場を改修する球技専用スタジアム以外に「新とどろきアリーナ」と「駐車場」の2施設。球技専用スタジアムの収容人数は3万5000人規模を想定する。サッカーJリーグ・川崎フロンターレのホームスタジアムとして、地域のシンボル施設を目指す。とどろきアリーナは現在市民らの利用が飽和状態であることから、緑地全体の再編に合わせて新とどろきアリーナとして移転・再整備する。駐車場は緑地内に分散配置し970台以上を確保する。
等々力補助競技場は現在地で第2種公認相当陸上競技場に改修する。トラックを拡張しメインスタンドの収容人数を5000人以上にする。浸水被害を受けた市民ミュージアムは、被災リスクの少ない場所に移転・新設する方向で検討していく。
再整備では19年10月の台風災害で大規模な浸水被害を受けたことなどを考慮し、公園全体のゾーニングや防災・減災対策なども見直している。防災機能として釣り池やグラウンドなどに雨水貯留機能、現陸上競技場メインスタンドや球技専用スタジアムサイド・バックスタンドに緊急避難機能を備える。
現在都市公園として告示している面積は36・3ヘクタール。新たに公園として6・9ヘクタール、事業化検討エリアとして12・9ヘクタールを加え、計画対象区域面積を56・4ヘクタールに広げる。
2021年11月18日木曜日
【回転窓】努力と天才
【厳冬期に高速本線で動作試験へ】東日本高速会社、自動除雪車22年度の完成めざす
東日本高速道路会社は自動化したロータリー除雪車を2022年度に完成させる。今冬に高速道路本線で自動化技術を試験。ドライバーが乗車した状態でアクセルなどに触れず自動で走行操舵(そうだ)する「除雪車の自律走行」と、切り崩した雪を路外に飛ばす筒状装置(シューター)の角度などを自動制御する「除雪装置操作の自動化」を検証する。来冬の最終試験を経て実用化する計画だ。
北海道支社は昨冬に北海道夕張市のテストフィールドでロータリー除雪車の自律走行に成功した。今冬は車両の自律走行と除雪装置の自動操作を本線で試験する。厳冬期での本線試験に先立ち、17日に道央自動車道下り線(岩見沢IC~岩見沢SA間)の一部区間で、ロータリー除雪車の自動化実演を報道陣に初めて公開した。
自動化技術は、北海道大学大学院の野口伸教授の協力を得て開発している。日本の準天頂衛星システム「みちびき」を活用した位置情報と除雪車の作動制御装置が連動。本線や非常電話、標識、集水ますといった構造物の高精度な地図情報に基づき自律走行し、除雪装置を自動操作する。運転席には地図情報との誤差などを表示するモニターを備える。作業時は時速2~3キロで自律走行する。
ロータリー除雪車は、除雪トラックが路肩に寄せた雪を前方のオーガーでかき込み、方向や高さを変えられるシューターから排出する。通常車両の場合、運転の担当者とシューターなどの操作担当の2人が乗車するが、自動化車両は1人が乗車。基地から作業場所までの運転や現場の安全確認・確保などを担う。
雪深い厳冬期での本線試験では、車両左側に雪の負荷が掛かる中で自律走行できるかどうかなどを確認。自動操作しているシューターが大量の雪を的確に排出できかなども試験する。
【重量350t、施工は東亜建設工業JV】横浜港新本牧ふ頭第2地区埋め立て、鋼板セルの1函目を据え付け
据え付けた円筒状セルの重量は350tに達した(関東整備局提供) |
国土交通省関東地方整備局は17日、横浜市中区の本牧ふ頭沖公有水面を埋め立てて整備する「横浜港新本牧ふ頭(第2地区)」の岸壁になる鋼板セルの第1函を据え付けた。横浜港国際海上コンテナターミナル再編整備事業(整備期間は2031年度までの予定)の一環。
新本牧ふ頭コンテナターミナルが完成すれば日本最大級の岸壁(水深18m、岸壁延長1000m)となり、世界最大級のコンテナ船の2隻同時着岸が可能になる。
同事業の第1期地区(埋め立て面積約38ha)は横浜市、第2期地区(約50ha)は関東整備局が事業主体。第1期地区は10月に埋め立てを開始している。
17日に大型起重機船で直径24・5m、高さ25・0mの円筒状セルを改良した地盤に据え付けた。施工は東亜建設工業・若築建設・大本組JVが担当。鋼板セルは年度内に計4函据え付ける予定だ。
2021年11月17日水曜日
【回転窓】紅葉と生き物のさが
【総合部門1位は横浜国大大学院チームに】土木学会関東支部、コンクリートカヌー大会に9校11チーム参加
総合部門で1位になった横浜国大大学院のコンクリート研究室 |
土木学会関東支部(樫山和男支部長)が主催する第26回「コンクリートカヌー大会」が13日にオンラインで開かれ、大学と高等専門学校、高校を合わせて9校11チームがプレゼンテーションでカヌーのデザインや技術を競った。
新型コロナウイルスの流行を踏まえ、埼玉県戸田市の荒川第一調節池にある彩湖での競技は見送った。プレゼン後の審査で横浜国立大学大学院コンクリート研究室の「Salty sluDGes(ソルティ スラッジーズ)号」を総合部門の1位に選定。日刊建設工業新聞社賞(チームワーク賞)は祐誠高校の「C-hawks(シーホークス)2021」に贈った。
大会は若者にものづくりの楽しさなどを学んでもらう目的で1995年から開催している。関東地方整備局が後援し、日刊建設工業新聞社などが協賛している。
各賞受賞チームは次の通り。
▽総合部門=1位横浜国大大学院コンクリート研究室、2位群馬工業高専、3位日本大学理工学部交通システム工学科
▽日刊建設工業新聞社賞(チームワーク賞)=祐誠高校
▽日刊建設通信新聞社賞(インパクト賞)=栃木県立宇都宮工業高校B
▽セメント新聞社賞(セメント賞)=栃木県立那須清峰高校
▽プレゼンテーション賞=栃木県立宇都宮工業高校A。
【小学生がドリルジャンボなど見学】福島県県北建設事務所、泡吹地・関場トンネル(川俣町)の現場見学会開く
小学生らはドリルジャンボなどを見学(寿建設提供) |
見学会は寿建設(福島市)が協力。富田小学校の3年生15人と飯坂小学校の1~4年生13人の計28人が参加し、トンネルが完成するまでの工事や地元で発掘された前田遺跡について学んだ。
地域にある身近な土木施設への愛着や理解を深めるとともに、地域の守り手である建設業の魅力を広くアピールし担い手確保につなげることが狙い。「現場見学会にやってきた川俣町の小学生が現場のダイナマイトが盗まれるという事件に巻き込まれた」との設定で行われ、児童らは犯人を捜す過程でクイズなどを取り混ぜながらトンネルの役割や作業員の仕事内容を見学。最後は犯人を捜し当て、事件を解決した。
国道114号山木屋工区の泡吹地トンネルは寿建設が本体工事を施工。延長203メートル、幅員9・75メートル。2016年に貫通し、来年春の供用を目指す。
同関場トンネル(小綱木)は寿建設・小野工業所(福島市)JVが施工を担当。工事内容はNATMによるトンネル工243メートル、幅員9・75メートル。来年の貫通を予定している。
同事務所の白石正俊主幹兼企画管理部部長は「子どもたちに地域を守る建設業の仕事を知ってもらう良い機会になった。これからも情報発信しながら建設業の理解促進を図りたい」と語った。今後、一般向けのトンネル見学会も予定している。
【設計・施工は橋本店JV】福島県双葉町、仮設庁舎の建設工事に着手
仮設庁舎の完成イメージ(橋本店提供) |
福島県双葉町は仮設庁舎の起工式を15日に建設地(長塚町西73の4ほか)で開いた。設計・施工は橋本店(仙台市青葉区)と関・空間設計(同青葉区)の2者JVが担当。伊澤史朗町長、西銘恒三郎復興相、内堀雅雄福島県知事らとともに佐々木宏明橋本店社長、渡邉宏関・空間設計社長が盛り土に鍬を入れ、工事の無事完成を祈願した。2022年8月末の開庁を予定している。
伊澤町長は「町内に仮設庁舎を整備し本体機能を戻すことは、帰還を考える町民や新たに定住・移住を考えている方々が安心して町に住めるという思いを共生するもの。町の復興を加速させていくことになる」とあいさつ。西銘復興相は「いまだに避難が続く困難な状況の中、復興を目指し一歩一歩取り組みを進めている。地元の皆さまに寄り添い復興・再生を全力で支援していく」と語った。
施工者を代表して橋本店の佐々木社長は「町を訪れる多様な人々の交流、防災拠点として、さらに復興の司令塔の役割も担う重要な施設。これまで培ってきた技術と英知を結集しクオリティーの高い、安心して利用できる施設の完成に全力で取り組んでいく」と力強く決意を述べた。
仮設庁舎はJR双葉駅の東側駅前広場に整備する。建物は軽量S造2階建て延べ3145平方メートル。工期は22年6月30日まで。敷地にはにぎわい創出の場「エンガワ広場」などを整備するほか、太陽光パネルを屋根に設置し防災機能も備える。
東日本大震災の原発事故により、現在も双葉町の役場機能はいわき市内の双葉町いわき事務所に置かれている。仮設庁舎は段階的な復興に向け、町内での役場機能の再開を目指して建設。JR双葉駅周辺の避難指示解除は22年6月ごろを目標にしている。
【工高生にものづくりの魅力紹介】関西鉄筋工業協組ら、大阪市の都島工高で出前講座開く
ものづくりの魅力や鉄筋工事の重要性を知ってもらおうと2010年度から実施している取り組みで、本年度初となる今回は同校建築科の2年生約60人が参加、鉄筋の結束作業や圧接作業を通じて、鉄筋工事やRC構造への理解を深めた。
出前講座では、最初に同校建築科の矢倉鉄也科長が「授業で学んだようにRC造の柱には必ず鉄筋が入っている。それをイメージしながら取り組んでほしい」とあいさつした。関西鉄筋工業協組の森山直樹副理事長は「鉄筋工事がどのような仕事かを知ってほしい。技能検定3級実技試験の課題を体験してもらうが、在学中に取得できる資格であり、ぜひ挑戦してほしい」と話した。
この後、生徒らは3班に分かれて基礎・柱の鉄筋結束やガス圧接を体験。鉄筋の結束作業では初めて手にするハッカーに悪戦苦闘しながらも、現場の第一線で活躍する職人の指導に耳を傾け、熱心に取り組んだ。ガス圧接作業では、圧接用バーナーの着火・消火時に生じる大きな音やバーナーの火口から吹き出す炎の勢いに驚きながら、原子レベルで鉄筋を接合する技術を体験した。
授業を終えて森山副理事長は「誰もけがをすることなく終わって良かった。われわれが安全最優先で仕事をしていることも知ってほしい」と講評。関西圧接業協組の浜崎仁副理事長は「完成後、私たちの仕事は見えなくなるが、その中に圧接という技術があることを覚えておいてほしい」と総括した。謝辞を述べた生徒は「通常の実習では体験できないことばかりで非常に良い勉強になった」と話した。
両組合では今後、12月中旬までに京都府立宮津高校、大阪府立西野田工科高校、同布施工科高校、修成建設専門学校での出前講座を予定。このうち、宮津工高は関西鉄筋工業協組単独で、西野田工科高校は大阪府左官工業組合(邑智保則理事長)との3職種合同で、布施工科高校と修成建設専門学校は3職種に近畿建設躯体工業協同組合(山岡丈人理事長)を加えた5職種合同で開催するとしている。
【建コン各社、働き方改革を推進】建コン協テレワーク実態調査、会員の5割以上が通年実施
建設コンサルタンツ協会(建コン協、野崎秀則会長)が、会員企業を対象に行った「テレワークの実態調査」の結果をまとめた。コロナ禍で社員の安全・安心を最優先に、半数以上の社が緊急事態宣言の有無を問わず通年で対応。通勤時間の削減に伴う作業効率の改善などに効果を実感しているようだ。一方、対話不足を理由に孤独を感じる社員も少なくない。心をケアし、人材育成をどう進めていくのか。各社が知恵を絞る。
◇効率アップ進むも社員の心のケアが課題◇
回答企業の内訳は、売上高が▽5億円未満20%▽5億~10億円未満22%▽10億~50億円未満34%▽50億~100億円未満9%▽100億円以上15%。社員数が100人未満の企業が半数以上を占める。100~300人は22%、500人以上は16%だった。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、会員企業の82%がテレワークを実施。うち52%が通年で実施し、残る38%は緊急事態宣言の期間のみ行った。「実施しなかった」と回答した企業は「コロナの感染者が少ない」や「特に必要ない」点を理由に挙げるなど対応が分かれた。
(建コン協の資料を基に作成) |
労働管理方法で多数を占めたのが「社内システムへリモート入力」(66社)。「メールなどで時間申告」(54社)と続いた。仕事場所は自宅を利用するケースが最も多かった。在宅勤務の導入効果を聞いたところ、「作業に集中できる」や「移動時間の減少による作業時間の確保」を挙げた。職種ごとに違いはあるが、時間を有効活用できる点や通勤中のストレス軽減にメリットを感じているようだ。
ただ中には、効率低下を指摘する社員も存在する。在宅勤務下では情報通信機器が充実しているとは言いがたく、「印刷できない」や「2画面作業ができない」など設備面に不満を抱える社員は多い。対面が当たり前だったコロナ禍以前と違い、ウェブ会議を使用した発注者協議が拡大基調にあるが、社外との調整に難しさを感じる社員も存在する。
情報漏えいに対しては、これまでよりもシビアに向き合っている。建設業界でも被害が続出するランサムウエア(身代金要求型ウイルス)は、企業活動を脅かす存在となっている。被害を懸念する各社は個人が所有するPCの使用を禁止したり、社内のPCを遠隔地から接続できる「リモートデスクトップ」を導入したりと、あの手この手の対策を講じている。
押印廃止やペーパーレス化に取り組む社も多い。スムーズな精算方法や意思決定を目指し、各社が領収書の電子化や電子稟議(りんぎ)・決裁システムを導入。効率化に努めている。
セキュリティー対策以外で課題となっているのが人材育成だ。対面と違い、リモート下では上司と部下がコンスタントに対話できる機会が限られている。回答企業の90社が「人材育成、若手への指導の難しさ」を課題に挙げた。
◇「孤独感を助長」心のケアが課題◇
若手社員が自宅で黙々と作業する環境は、「不安や孤独感を助長させる」可能性もある。仕事と私生活の切り替えも難しく、「精神衛生上良くない」と説く経営トップも少なくない。産業医による面談やオンラインツールを利用した定期的な面談を実施するなど、心のケアを進めながら人材育成にどう取り組むかが重要事項となっている。
実態調査では、各社が展開する独自の取り組みも聴取した。ある社は「在宅勤務手当の制度」を創設したり、プロジェクトの進捗(しんちょく)状況を可視化する管理ツールを導入したりして好事例の水平展開に努めている。ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)を活用し、煩雑な作業を省力化するなどのバックアップ体制も敷いている。
多様な働き方へと転換する契機にもなった新型コロナ。建設コンサルにとって欠かせない存在である発注者に理解を求める意見は多い。特に基礎自治体の場合、オンライン会議やテレワークへの環境整備は道半ばの状況。コロナ収束後も、ウェブ会議による受発注者協議の継続を求める声は根強い。
建コン協は実態調査の結果や意見をホームページなどに掲載。会員の意識啓発や発注機関への理解促進に活用していく考えだ。
2021年11月16日火曜日
【記者手帖】設備も年を取る
取材先に行くために階段を上ると息が切れ、記事を書こうとパソコンの画面を見つめているとなんだか目がかすむ。30代になったばかりなのだが、以前聞いた父の「年を取った」というぼやきが、少し分かった気がする。新聞記者に転職し、建設機械や資機材のメーカーなどの取材を担当するようになって半年。聞き慣れない言葉が飛び交う環境にまだついていけていない◆取材先の会見で「設備年齢」という言葉を耳にした。設備はどんどん古くなっていき更新やメンテナンスが必要になる。時間の経過とともに不調が出てくる様子が、体調不良を感じるケースが増え始めた自分と、なんだか重なって見えた◆会見では設備を長く使おうとする顧客が多いとの話題も出た。専門業者が不調の原因を見抜き、時間をかけてメンテナンスなどをして初めて設備の延命化ができる。いわば病院のようなものだ◆人間も医者の診断を基に自分の体をメンテナンスしていく。以前よりも医療機関で検査する機会が増えた。血液検査の数字には毎回ひやひやしている。健康状態をチェックする大切さは人も設備も同じということか。(ご)