セメント・生コン産業の行方・上/過去にない転換期、体制見直す動き顕在化
◇需要減に石炭高・円安が追い打ち
セメント・生コン業界が苦境の渦中にいる。国内需要が低迷する状況下で、セメント製造に欠かせない石炭価格などが高騰、そこに円安が追い打ちを掛け、企業経営に大きな痛手を与えている。老朽化設備の更新やカーボンニュートラル(CN)への対応も不可欠な中、値上げを急ぐとともに、生産体制を見直す動きも顕在化してきた。持続可能な産業への道筋を見いだしていけるのか--。(編集部・牧野洋久)
「これからの20年間、30年間は過去にはない大きな転換期になる可能性がある」。セメント協会の不死原正文会長は業界の行く末をこう指摘する。セメント産業は日本の近代化や高度経済成長を支えていく過程で需要を伸ばしてきた=グラフ参照。
内需のピークとなった1990年度には8629万トンに達したが、バブル経済崩壊やリーマンショックなどを経て2010年度には4161万トンに半減。東日本大震災の復興や都市部での大型再開発などで一時期は持ち直したものの、21年度は3788万トンと55年ぶりの低水準に落ち込んだ。今後も人口減少を踏まえると右肩上がりは望めない。
20年には1トン当たり100ドルを切っていた石炭価格は、二酸化炭素(CO2)排出規制の強まりを受けた投資抑制とコロナ禍からの需要回復などを背景に上昇基調が顕著となった。最大手の太平洋セメントによると、21年度上期には200ドル程度になり、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻後は一時500ドルに迫る勢いに高騰。現状は400ドル台程度で推移している。円安も重なり、「2年前の7~8倍で信じがたいコストアップ」(セメントメーカー幹部)と悲鳴が上がる。
未使用資源の有効活用をきっかけに1954年からセメント製造事業を展開してきたデンカは10月、2025年にセメント事業から撤退すると発表した。老朽化設備の更新やCNへの大型投資が必要な状況下で、単独での事業維持は困難と判断。石灰石鉱山の開発に共同で取り組んできた太平洋セメントに譲渡する。
UBE三菱セメントは、23年3月末をめどに青森工場(青森県東通村)の操業を停止するとともに、伊佐セメント工場(山口県美祢市)の生産を縮小すると9月に発表した。宇部興産(現UBE)と三菱マテリアルのセメント事業を統合して4月に本格始動したUBE三菱セメントは、生産体制見直しや物流効率化などを進める方針を掲げていた。主要需要地から遠い青森工場は、生産量がピーク時の8分の1に落ち込み、赤字状態が続いていた。
青森県内で開いた記者会見で同社の小山誠社長は「全体の抜本的な体質強化は最重要課題だ。深く検討を重ねた結果、やむなく青森工場の操業を停止する」と苦渋の決断を説明。同社の平野和人代表取締役副社長は「このようなことが今後起こらないようにしていきたいというのが今の思い」と吐露した。青森工場は1979年の竣工で、国内では最後に建設された。最も新しいセメント工場が逆風下に姿を消すことになる。
source https://www.decn.co.jp/
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