◇やる気スイッチ入れば伸びる◇
入社当時は建築部門の創生期。第1期生として私一人だけが採用されたのですが、組織がまだ完全にはできておらず、最初は東京本社で土木設計を担当する設計部に配属されました。新入社員研修での課題も港の桟橋を設計することでした。
ここではドラフターで図面を描いたり、先輩が描いた図面を清書したりするのが役目でした。同期と会っても、胸を張って仕事をしているとはとても言えませんでした。先輩も建築屋の自分をどう扱えばいいか、戸惑っていたように思います。
2年たったころに、スリランカの海上土木工事をJVで受注しました。現場に出たことはなかったのですが、建築も含まれるため手を挙げました。最初はプレハブの現場事務所の設営で、基礎工事を任されました。測量に使うレベルやトランシットも使ったことがなく、現地のスタッフと言葉も通じない中で、何とかやり遂げたことが記憶に残っています。
スリランカに行くことが決まった時に東京本社に建築部が設置されたため、スリランカの工事が終わったらここへ戻ると思っていたのですが、今度は九州支店への配属となります。
ここでの最初の現場は、日本住宅公団(現都市再生機構)の住宅工事で、JVのサブでした。その後、数年して九州支店にも建築部ができましたが、継続して建築の仕事があるわけではなく、空いている時は土木の応援に駆り出されました。
あるJVの現場で、他の会社の後輩が描いた施工図面を見ても分からない部分がありました。直接聞くのは年下ということもあり、嫌だったので、休日に現場事務所に行って後輩の図面を引っ張り出し、自分なりに描いて、実際の現場と重ね合わせながら勉強しました。
初めて現場で所長を務めたのは、設計事務所の新社屋の建設でした。入社して8年目のことです。RC造3階建ての規模で、すべてコンクリート打ち放し。施主からは「屋上も防水しないでいい。自社ビルなので試したい」という注文でした。しかし雨漏りをさせるわけにはいかず、作業員と一緒に必死になって締め固めをしました。緻密なコンクリートを打てば、品質も向上すると学びました。建設業界では、すぐに辞めてしまう人も中にはいますが、入ってきた人がやる気や興味を持つまでには時間差があるものです。ただ、スイッチが入るとそこからはぐっと伸びていきます。教育内容も大切ですが、周りがどうやる気にさせるかが肝心だと思います。
現場に出る若い人たちには、自分が所長だったらどうするかを常に考えて動いてほしいと思っています。やみくもにどうしましょうと聞くのではなく、自分なりに答えを出した上で尋ねるようにすることが重要です。そういう習慣を付ければ、仕事も楽しくなるし、成長も早いと思います。
(ふかい・やすしげ)1980年武蔵工業大(現東京都市大)工学部建築学科卒、若築建設入社。事業統括本部建築部次長兼工事課長兼購買課長、九州支店次長兼建築部長、建設事業部門建築部部長、建設事業部門建築部長を経て、14年6月から現職。福岡県出身、60歳。
入社5年目。スリランカの現場でスタッフと一緒に |
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