2016年11月28日月曜日

【回転窓】文化を街づくりの中心に

浮世絵師・葛飾北斎の作品を集めた東京都墨田区の「すみだ北斎美術館」が22日にオープンした。開館記念展は100年余りも行方知れずで昨年海外で発見された幻の絵巻や区がこつこつ収集してきた名品を展示し、大盛況のようだ▼美術館の設計者はこの秋に紫綬褒章を受章した建築家の妹島和世氏。地域に溶け込むデザインを追求し、大きな1棟ではなく建物全体をスリットで緩やかに分割。周辺の街並みのスケールと調和を図ったという▼北斎は世界的に知名度が高いが、専門の美術館は少なく、すみだ北斎美術館と長野県小布施市の「北斎館」だけ。北斎館は建築家の宮本忠長氏の設計で、小布施町並修景事業のきっかけになった▼二つの建物は姿形は全く違うが、地域に親しまれる美術館を目指した点は同じ。集客力による経済効果より、建築を通じて文化を街づくりの中心に置いた▼妹島氏は西沢立衛氏とのユニット「SANAA」で手掛けた「金沢21世紀美術館」など美術館建築に定評がある。新作の美術館が建築界でどう評価されるか気になる。地域の人たちが求める場になれるかどうか。真価はそこにあろう。

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