2016年11月18日金曜日

【ひと】秋の叙勲で瑞宝単光章を受章した田浦光氏


 ◇愛情なくして人は育たない◇

 富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で1998年から16年間、非常勤講師を務め、型枠、足場の実技・学科、作業主任者の資格取得講習を受け持ってきた。センターでの職人育成の礎を築いた一人だ。

 16歳で郷里・長崎で船大工となり、19歳で型枠大工に。27歳で上京。第一線の職人として数々の現場を踏んだ。大成建設の下で「東京23区内で携わった新築物件は30カ所ほど」という。

 高校を出たばかりの若者を相手にするセンターでの教育は、思った以上に難しい。当初、「どうすれば自分の話を集中して聞いてもらえるか苦心した」と振り返る。一度に教える相手は7~8人。日々の訓練の様子を事細かにメモしておき、一人一人の性格を見極めながら授業を進めるなどさまざまな工夫を取り入れた。訓練生が巣立つ日、それぞれの「良いところ、悪いところ」を紙に記し、手渡すことも欠かさなかった。

 かつての教え子たちの状況を見てみようと各地を回ったことがある。「頑張って仕事する姿を見るのは何よりうれしかった」と目を細める。

 卒業間近の訓練生たちから贈られた寄せ書き、地下足袋、甚平などが宝物。「愛情なくして人は育たない」が変わらぬ持論だ。

 (たうら・ひかる)元有明工務店社長。長崎県出身、83歳。


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