2016年11月21日月曜日

【駆け出しのころ】東洋建設取締役常務執行役員経営管理本部長・河瀬伸幸氏

 ◇一つの出会いが場面変える◇

 入社1年目、最初に配属されたのが福井県内の現場です。河川の浚渫工事でした。先輩に仕事を丁寧に教えていただきましたが、24時間体制の現場で交代要員がそれほどいるわけでもなかったため、なぜこんなに拘束時間が長いのかと思っていました。先輩と車に乗って「どこかに行ってしまおうか」などと話した思い出があります。

 年末年始の休みで福井から実家のある大阪へ帰省する日、記録的な大雪に見舞われました。「五六(ごうろく)豪雪」です。車で立ち往生してしまい、大阪まで3日もかかりました。やっとたどり着いた実家から、正月明けに福井の現場へ戻る時は嫌で仕方がなかったのを覚えています。

 2年目に入った頃、所長から「働いていないよね」と言われました。拘束される時間と頭を働かせる時間とは違うという意味で、一つのことをするにもなぜするのか、どうすれば効率的になるのかを考えなさいとの教えです。数年たってから言葉の意味がよく理解できました。

 ここでは忘れられない出来事がもう一つあります。夏の暑い日、現場の前を通学する小学生から「水を飲ませてほしい」とお願いされたので、飲ませてあげながら一緒にいろいろ話したことがありました。後日、現場のことでクレームのあったお宅に伺うと、何とその小学生の家でした。私の前に出てきて「このお兄ちゃんはちゃんとやるから大丈夫だよ」と言ってくれ、こちらの説明を聞いていただける場面をつくってくれたのです。いろいろな出会いがある中、ちょっとしたきっかけで変わる場面もあるんだと実感した時でした。

 入社から10年ほどたち、本社に異動して設計の担当となります。当時は設計に現場のことを知っている人が少なかったため、私に声が掛かったようです。ある日、横に座っておられた課長から技術士の試験を受けるよう勧められました。それまではどういう資格かも分からなかったのですが、背中を押してもらい、試験の半年前に勉強を始めました。

 試験勉強で書いた文章を先輩にチェックしてもらい、仕事を終えてから書き直し、翌朝にまた読んでもらうという日々でした。1日の睡眠は3、4時間ほどだったでしょうか。資格取得のきっかけを与えてもらえたこともそうですが、私は上司や先輩に恵まれました。

 ソクラテスに「無知の知」という言葉があります。知らないということを知ればこそ、勉強して覚えていけるのだと思います。会社の若い人たちには明るく元気に、いろいろな視点から物事を考えられるよう早く成長していってほしいと期待しています。

 (かわせ・のぶゆき)1980年大阪府立工業高等専門学校土木工学科卒、東洋建設入社。大阪本店土木技術部課長、執行役員経営管理本部副本部長兼経営企画部長、常務執行役員経営管理本部長などを経て、14年6月から取締役常務執行役員経営管理本部長兼CSR担当。大阪府出身、56歳。

新人時代、背伸びをして買った車の前で

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