◇人にスポット、高い外部評価◇
鹿島が、社内報・広報誌として毎月発行している「月報KAJIMA」が、今年で創刊57年目を迎えた。
この間、一度も発行が途絶えることなく、社内外のコミュニケーションツールとして人気を集めてきた。2013年からは全国社内報コンペに参加し、連続して上位入賞を果たすなど、一段と存在感を増している。広報室の月報KAJIMAグループを取材し、魅力を探った。
同社の社内報のルーツは、1921(大正10)年にまでさかのぼる。鹿島組(当時)の鹿島精一組長の下に創刊された「鹿島組月報」で、内容は会社の通達や人事異動などが中心だった。戦時中の一時休刊を経て、戦後に発行を再開。その後、「鹿島組社報」「鹿島建設社報」と改称した。
社報と並行して51年に発行した季刊「鹿島建設」を発展的に解消し、復刊したのが59年11月にスタートした月刊の「鹿島建設月報」。これが91年1月に現在の「月報KAJIMA」に名称変更された。
59年に鹿島建設月報を復刊した際、当時の鹿島守之助会長はその目的について、巻頭言で「社員相互のコミュニケーションや知識の啓蒙、生産性の向上に役立つものとする」と記した。この編集方針は今も脈々と受け継がれているという。12年6月から編集長を務める財部浩司広報室次長は、月報KAJIMAの目的について、「当社は国内外で建設現場を中心に2000カ所を超える拠点を持っている。多くはプロジェクトが終了するとなくなる有限の職場。毎月手紙のように届けることで、一体感や帰属意識を共有したい」と話す。
月報グループのメンバーは、財部氏(写真右端)のほか、木皿美子担当主任(右から2人目)、橋本啓見(左から2人目)、高橋壮(左端)の各氏。取材、記事の選定・執筆、写真撮影は基本的にこの4人が担当し、紙面レイアウトは専門のデザイナーに依頼している。
「ほとんどの作業を内製化しているため、毎月締め切り間近は大変だが、抜群のチームワークで欠かさず発行できている」と財部氏は胸を張る。
32~36ページ建てで、主なコンテンツは、施工中現場での取り組みや技術、人を紹介する「THE SITE」、完成プロジェクトをまとめた「Kworks」のほか、「つくる」ことをテーマにした著名人によるエッセーや、「鹿島の見える風景」のタイトルを付けた読者投稿コーナーもある。中でも人気が高いのが、同社の取り組みや技術を紹介した特集だ。14年3月号の特集企画「鹿島紀行 復興を支える人を訪ねて」は、東日本大震災の津波で流された小学校の校舎の再建と災害廃棄物処理業務という二つの異なる切り口で東北の復興と同社の関わりを紹介。月報グループのメンバーが現地に足を運び、入念に取材した。
「社外からの評価がどの程度か知っておきたい」(財部氏)と、ナナ総合コミュニケーション研究所が主催する「全国社内報企画コンペティション」に13年から毎年参加している。
社内報や広報誌の企画を評価する国内唯一の催しで、毎回、100前後の応募が集まる特集・単発企画部門(8ページ以上)では、13年に「人と振り返る5年半~東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」(13年2月号)、15年に「輝ける旬の女性たち」(14年6月号)が1位に選ばれた。ナナ総合コミュニケーション研究所の富加見智子主任研究員は、「『登場者』の魅力を余すところなく書き上げており、一気に読みたくなるものばかり。ヒューマンドキュメントのような記事が多く、読みごたえがある」と高く評価する。
女性社員の活躍にスポットを当てた特集「輝ける旬の女性たち」は、安倍晋三首相が女性活躍推進を掲げたタイミングもあって好評で、この特集だけを別刷りにした特別版も発行した。さまざまなシーンで活躍する女性をその後も不定期で取り上げている。
財部氏は、「『社外に配布できる社内報』を心掛けている。社外に誇れることを紹介することは、社内のコミュニケーションや社員のモチベーション向上につながる。紙やネット、映像など広報が持つさまざまな媒体を組み合わせ、効果的な広報活動を展開していきたい」と力を込める。
□最新号で通巻687号□
発行は毎月1日。土木、建築、技研、エンジニアリングなど各部署から選出された広報担当者も加わり、月1回の編集会議で3カ月先の企画を討議している。最新の2016年11月号で通巻687号となった。発行部数は約3万部。同社とグループ会社の役職員に約1万部、関係得意先、官公庁、自治体、学校など「当社に関心を寄せられる皆さま」(財部氏)に約2万部を配布している。ウェブサイトでも特集など一部を公開している。
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