2016年11月15日火曜日

【回転窓】富とは厩肥である

手元の辞書(角川必掲国語辞典)で「富裕」を引くと〈財産があって、生活が豊かなこと〉とある。この言葉自体に悪い意味は全く無いのに、下に「層」が付いた途端、嫌みに満ちたよそよそしい言葉に変わるから不思議である▼先日、直近1年間の富裕層の所得の申告漏れが前年比32%増の516億円に上ったとの国税庁の調査結果が報じられた。1件当たりの申告漏れ額は1179万円にも上るそうだ。先月には、富裕層の購入が多いタワーマンションの高層階の資産課税を見直す検討を政府が始めたとの報道も▼資産価値の高い高層階住戸の税金が低層階と同じでは不公平という理由である。相続税の節税目的で高層階を買う富裕層も多いらしい。資産など無縁の身からすると、よくそんな節税策を考えつくものだと感心させられる▼先の米大統領選でのトランプ旋風の背景には米社会の深刻な格差と分断があったと分析されている。程度の差はあれ、富の偏在の問題は日本社会も無縁ではあるまい▼トルストイの箴言(しんげん)を一つ。〈富は厩肥(うまやごえ)と同じように、一箇所に積んであると悪臭を放つが、撒布(さんぷ)されると土地を肥やす〉。

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