2016年11月18日金曜日

【今後の動向に注目】スポーツ施設整備、九州で動き活発化

九州エリアでアリーナなどスポーツ施設を新設する動きが活発化している。大分県は大分スポーツ公園内(大分市)に整備する屋内スポーツ施設の新築工事を近く、WTO(政府調達協定)対象案件として発注する。佐賀県では県総合体育館や市村記念体育館の整備について、基本的な方向性を検討していた委員会が、提言を県に提出した。全国的に見てもスタジアムやアリーナの整備構想・計画は相次いでおり、動向が注目される。

◇延べ1・6万㎡、固定席2000◇

 大分県は、大分市横尾の大分スポーツ公園内に計画している屋内スポーツ施設新築工事のWTO対象一般競争入札を近く公告する。建築と設備の分離発注とし、先行してWTO対象の本体建築工事を公告し、別途、設備工事を後日公告する。

 17年2月ごろに開札し、本年度末の議会に工事請負契約締結議案を諮り、議決を得て契約を結ぶ。17年度早々の着工、19年4月の完成を目指す。

 屋内スポーツ施設は大規模大会やトップレベルの公式戦、各国代表の合宿などが開催でき、大規模災害発生時には広域防災拠点の中核施設としての役割を果たす施設。構造はRC造を基本に屋根部分には県産木材を利用する予定。屋内競技場が3階建て、武道場が平屋で延べ床面積は約1万6000平方メートル。屋内競技場は1階に多目的アリーナ、2~3階に固定2000席の観客席を配置し、トレーニング室なども設ける。武道場は柔道場・剣道場各2面などで構成する。設計は石本建築事務所が担当し、このほど完了した。

 工事のうち建築は総合評価方式のWTO対象一般競争入札、設備は要件設定型一般競争入札で発注する。WTO対象一般競争入札は手続き期間が長いため先行して公告する。工期は約25カ月を予定している。

◇整備のポイントは「する・育てる・観る・にぎわう」◇

 佐賀県総合運動場と県総合体育館(いずれも佐賀市日の出)、市村記念体育館(同城内)の施設整備のあり方を検討していた「佐賀県総合運動場等整備基本計画検討委員会」(委員長・坂元康成佐賀大学教授)は、施設整備の方向性を盛り込んだ提言書をまとめ、県に提出した。

 提言書では「する」「観る」など四つの視点からの施設整備が必要とし、具体的にはアリーナの新設検討や50メートルプールの屋内化を盛り込んだ。県では提言書を踏まえ、本年度末をめどに具体的な施設整備の内容を盛り込んだ整備基本計画をまとめる。

 スポーツ関連施設が集中している総合運動場や総合体育館があるエリアについて、検討委は「より求心力を増すためのイメージづくりが重要」と指摘。施設整備に当たっては各施設の役割を整理しターゲットを明確にするとともに、施設の使用者・運営者を想定した整備、スポーツだけでなく県民が憩い、集える施設とすべきだとした。

 整備の方向性は「する」「育てる」「観る」「人々が憩いにぎわう」。「する」では国体対応のためのスタンドなどは仮設とし、現在の陸上競技場は諸室などが不足しているためメインスタンドを活用して整備すべきだとした。国体開催後の10月に開催される全国障害者スポーツ大会に対応するため50メートルプールの屋内化も必要とした。

 「育てる」ではボクシングやフェンシングなど未普及競技のトレーニングができる施設や合宿施設が必要と指摘。「観る」については現在の総合体育館は観客席が2000席程度しかなく、選手の動線や諸室の不足、収納の問題などがあるため、プロの試合や国内トップレベルの試合を快適な環境で観戦できる新設アリーナの検討が必要とした。

 「人々が憩いにぎわう」では子どもたちを遊ばせるなどスポーツをしない人も楽しめる空間づくりや陸上競技場と管理棟の間などに公園のような空間を設けることを提案。スタンドとペデストリアンデッキをつなげるなど一体的な空間づくりも必要とした。このほか十分な駐車スペースの確保、防災拠点としての施設整備なども必要とした。

 総合運動場は1万7000人収容のスタンドを備えた陸上競技場、50メートル飛び込みプールや1580人収容のスタンドなどを備えた水泳場、球技場などで構成。総合体育館は観客席2118席を備えた大競技場、小競技場、柔道場、剣道場などで構成しRC造2階建て延べ1万2605平方メートル。市村記念体育館は固定観客席820席などを備えRC造地下1階地上4階建て延べ4318平方メートル。

 いずれも老朽化や競技基準を満たしていないことが課題となっており、23年に国体開催を控えていることもあり、国体やその後の大規模大会などでの利用を視野に施設整備を検討している。整備基本計画策定業務は梓設計が担当した。

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