公共発注機関やデベロッパーに勤めるプロはともかく、ごく普通のサラリーマンが億単位の金額の工事の発注者になることはそうそうないだろう。最近、そんな貴重な体験をした▼住まいのある住宅団地で計十数棟の共用給排水管を一斉更新する工事。管理組合の役員として施工者選びに関わった。選定方法はプロポーザル。見積金額に施工方法や施工体制、現場運営の提案、現場代理人予定者の経歴などを加味して選ぶ。プレゼンテーションにヒアリング、再見積もりなどを経てようやく契約にこぎ着けた▼結果的に価格以外の要素に大きな差はなく、金額で決着がついたが、提案内容で金額の差をひっくり返す「逆転落札」になったら説明が可能か…。後ろに500人を超す所有者がいることを思うと、かなりの緊張を強いられた▼本紙には毎日、工事発注ニュースが大量に載る。多くの発注機関の担当者が日々、納税者の目を背に同様の作業を行っているのだろう。仕事を取る建設会社の苦労にも思いは及んだ▼普段、紙面で提供している記事を、これまでよりも読者に近い視点から見られるようになったのは収穫である。
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