◇近所の方からの差し入れがうれしい思い出◇
高速道路の耐候性鋼板の鋼橋の一部を塗装して補修する工事を施工したときのことです。
その橋梁は山の中にあり、橋脚の高さは40メートルもあるため容易には近づけません。しかも補修する箇所が橋桁の長さ300メートルの中に点在しています。当初設計では補修箇所ごとに点在した足場が計画されていますが、足場間の通路は見込まれておらず、移動するには空飛ぶ絨毯でもなければできません。利益があまりでない現場であることは着工前からわかっていました。
資材費の低減や施工方法の工夫により、少しでもコストを下げようと考えました。それでもまだ不足するので、私は自分たちの宿泊代も削ることを会社に申し出たのです。通常は旅館などに寝泊まりするのですが、それを止め、現場事務所の会議室に布団と調理道具を持ち込んで自炊することにしました。
風呂は偶然近くに銭湯がありました。毎日仕事が終わると、スーパーに買い出しにいき料理をして食事をしました。職住が近接しすぎているため、悲しいことに食事が終わったあともまた仕事をしてしまうことも多く、メリハリがつかずに情けないと感じてしまう日々を過ごしていました。
そんなある日のこと、現場事務所に近所の方がいらっしゃいました。「毎日工事ご苦労様です。男ばかりでたいへんでしょうから、これ食べてください」と言って、枝豆、ぶどう、カレーライスなどを差し入れていただいたのです。近所の方々が、私たちの様子を見て、現場事務所に住んでいることに気付いたようでした。私はその気持ちが涙が出るほどうれしく、ありがたくおいしくいただきました。
銭湯は、沸かし湯でなく温泉だったので、毎日温泉に入れて幸せだなと、と思うと段々楽しくなってきました。他ではできない経験ができ、今では良い思い出になりました。
0 comments :
コメントを投稿