タイで指導する生徒らが作ったアプリ機能を紹介する平田さん(中央) |
12カ所のうち、チェンライ校で16年3月からコンピュータープログラミングの授業を補佐する平田和基さん。昔から青年海外協力隊に関心を持っていたが、自分には技術・技能がないからと憧れにとどめていた。
大学卒業後は、システムエンジニアとして携帯端末のアプリケーション作成などに携わった。短期間で目標の成果物を作り出す日々に充実感はあったが、物足りなさも感じていた。そんな日常が漫然と過ぎていく中、通勤途中の電車内で青年海外協力隊の募集広告に目が留まった。
「殻を破り、これまで以上の充実感を得て心の底から笑いたい」。そんな思いが高まり、協力隊への参加を決めた。赴任先ではコンピューター関連の授業を補佐するほか、同僚教員との知識共有などに取り組む。日本語クラスや課外活動で日本文化の紹介も行う。教員経験のなかった平田さんだが、「会社で部下にプログラミングを教えてきた経験が役立っている」という。タイ語でのコミュニケーションなどで苦労は多いが、現地の職場や暮らしの中で得られる充実感は得難く、「心の底から笑えるようになった」と話す。
平田さんの赴任期間は18年3月まで。チェンライ校から継続派遣を要請されているが、タイにはまだボランティアを未派遣のサイエンスハイスクールが数カ所あり、現地ニーズに対応し切れていないのが実情だ。
学校側はICT関連のほか、次世代領域としてアースサイエンス(地球科学)の授業に力を入れる方針を掲げ、ボランティアの技術力・技能レベルに対しても一定水準を求める。
◇Win=Winの関係が重要◇
JICAタイ事務所の関係者は「さらなる発展を目指す中進国のタイでは、学生や社会人経験の少ないボランティアでは対応が厳しい任地も多い」と指摘。人手不足が叫ばれ、特に理系人材が枯渇している日本で、タイ側の要求を満たすボランティアを確保することの難しさを訴える。一方で、経験豊富なシニアボランティア(SV)が国家プロジェクトを支援し、現地で活躍する事例も見られる。
次世代燃料の事業化支援に取り組む葭村さん |
同事業では自動車の燃料に加えるバイオマス燃料の混合率を現在の7%(パーム油由来)から、H-FAMEによって36年度までに10%、20%へと段階的に高める計画だ。MTECへの派遣期間は17年1月~19年1月。タイ側の積極的な派遣要請もあったが、SVへの参加理由について葭村さんは「一人の技術者として、石油代替エネルギーのH-FAMEの実用化・普及に最後まで関わりたいとの思いが強かった」と振り返る。
MTECでは「自分が前に出て研究を進めた方が早いだろうが、現地研究員が主体的に取り組むことに意義がある」と考え、若手を指導しながら実用化をサポートする役回りに徹する。
ボランティア本人と送る側、受け入れ側それぞれがウイン・ウインの関係を構築することが、ボランティア事業の持続性を高める上では重要なようだ。
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