2017年10月11日水曜日

【回転窓】地震時に見る忠義

武家社会で最も重んじられた「忠義」。主君に忠義を尽くすことが美徳の時代、大地を揺るがす地震が、その重さを計る一つの機会でもあったらしい▼歴史学者の磯田道史氏が書いている。江戸で地震が起きると、大名は将軍に地震見舞いの使者を送った。家屋が倒壊するほどの大地震なら分かりやすいが、使者を送るかどうか判断に迷うのは現在で言う震度3~4程度の地震。この判断に、雨水をためる天水桶(おけ)が利用された▼天水桶に張った水はおおむね震度4以上でこぼれる。大名などは、この水がこぼれたらご機嫌伺いの使者を出すと判断したという(『天災から日本史を読みなおす』中公新書)。判断を誤れば、忠義を疑われてしまいかねない。「客観的な震動基準が人々に切望された」のもよく分かる▼1596年に伏見大地震が起きて、豊臣秀吉は伏見城で被災する。この時の武将たちの行動を見れば「豊臣方か徳川方か、地震は見事に暴き出している」とも磯田氏は解説する▼第48回衆院選が公示された。時に政界は忠義なき再編を思わせる動きも見せるが、国民の安全・安心を守るための政策論争に期待したい。

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