「誰もその価値を把握できていなかった」。土木学会が17年度選奨土木遺産に認定した三重県御浜町の「緑橋防潮水門」。その講評で審査員が漏らした一言である▼緑橋防潮水門は1918(大正7)年、熊野灘に注ぐ市木川の河口部に石とれんがで建設された防潮堤と橋を兼ねた構造物。今も高潮の被害から地域を守り続けている▼選奨土木遺産は学会の支部ごとに推薦が行われる。その候補選びに使われるのが、土木学会発行の「日本の近代土木遺産-現存する重要な土木構造物2800選」。緑橋防潮水門は当初、このリストからも漏れていた▼実は文化庁はその価値を認め、登録文化財への指定を考えていたそうだが、地元行政が撤去を計画していたため宙に浮いていたという。保存を目指す地元市民が頼ったのが土木学会。関係者は「観光振興資源として地域に残る土木構造物を見直す機運が高まったことが幸いした」とみる▼土木学会は明治維新150年を迎える来年、明治に活躍した技術者や築造された構造物を大々的に取り上げる。地域に眠る貴重な土木遺産や技術者の掘り起こしにつながることを期待したい。
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