2017年10月30日月曜日

【建設業の心温まる物語】宮前建設・山口和弘さん(宮崎県)

 ◇最後に素敵な現場をありがとう◇

 宮崎県日南市油津港外港地区防波堤の上部工工事で出会った職人Aさんのお話しです。Aさんの年齢は、私のおじいさんくらいで70歳くらいでした。生コンクリート打設から天端仕上げまでを担当されていました。Aさんの年齢が高いため、私は現場代理人兼監理技術者という立場上、けがなどされないよう普段から気を配っていました。

 ある日のこと、作業開始前にAさんが体調不良を訴え、倒れてしまったのです。私はそのまま病院へ連れていきました。原因は疲れからくる体調不良でした。

 Aさんは1週間後に現場へ帰って来られました。その日は、最終の生コンクリート打設でした。「おかげさまで無事最終コンクリートを打ち終えました」とAさんに現場に戻ってきていただいたお礼を伝えると、次のように話されました。

 「長年建設業で働いてきましたが、最後の現場で、こんな素敵な仕事を手伝わせてもらってありがとうございました。この現場で引退します。たいへんお世話になりました」

 体調不良で倒れた時に引退を決めたとのことでした。

 「ここの現場は遠くからでも見えます。それに景色がとてもいい。最後に多くの人が見る場所で、いつまでも残るものにかかわることができて本当にうれしかった」と言って引退されました。

 Aさんの感謝の言葉はずっと忘れられません。永い間、たくさんのものを作っていただき、ありがとうございました。

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