2022年11月8日火曜日

記者手帖/指先に言葉の重み

 性暴力被害を公表した女性ジャーナリストを中傷するSNS(インターネット交流サイト)の投稿に「いいね」をした国会議員が、裁判所から賠償を命じられた。投稿に賛意を示す「いいね」を不法行為と判断した初めての判決に衆目が集まった◆SNSやネットでの誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たない。自殺者が出る事態にまで深刻化しており、悪質な投稿への対応を厳罰化する動きが広がっている。指先の操作で人を精神的に追い込むことから、韓国ではネットでの中傷行為を「指殺人」と呼ぶそうだ◆影響力のある人物の場合、発言の責任は特に重くなる。先の国会議員は単に「いいね」をしただけでなく、国会議員という立場やフォロワー数の多さなども判決に影響したとされる。しかし、現実には政治家の失言や問題発言は日常茶飯事。彼らが言葉の責任をどこまで重く捉えているのか、甚だ疑問だ◆言葉に対して誠実な姿勢が求められるのはメディアも同じ。会社の自席から視界に入るのは、実物を4倍に引き伸ばした訂正記事のコピー。これを貼った時の情けない気持ちは今でもまざまざと思い出す。原稿を打つ指先には言葉の重みがかかっている。そう肝に銘じて今日も記事を書く。(ゆ)

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