◇単品スライドの受注者負担撤廃を
全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)と都道府県建設業協会、国土交通省による2022年度地域懇談会・ブロック会議が、10月28日の北海道地区で全日程を終えた。資材価格の高騰や今年も各地で発生している自然災害を踏まえ、適正な請負契約や国土強靱化対策を柱とする公共事業予算の在り方などを議論。地域建設業が「地域の守り手」として使命を果たし続けるため、業界が直面する課題を率直に訴えた。=2面に関連記事
本年度も「業界の根本を考える大事な機会にしたい」(青柳剛群馬県建設業協会会長)として、国交省に課題の改善を求めた。地域建設業の経営は担い手の減少や高齢化、後継者不足が年々深刻さを増す。コロナ禍で落ち込んでいた民間投資は順調に回復しているものの、公共事業を主力とする会員が圧倒的に多く先行きは厳しい。
全建が会員に資材の高騰分が当初設定された予定価格に反映しているか調べた結果、7~8月時点で公共発注機関の5~7割が「反映していない」。資材高騰などを理由に利益が「悪い」もしくは「悪くなってきた」企業は約4割と前年度に比べ10ポイント超上回る。
このため各地域の会合では資材高騰対策に多くの時間を割いた。業界は改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で適正利潤の確保が発注者の責務に定められていると主張。特定資材品目の急激な価格変動に対応する単品スライドの運用を柔軟に見直すよう相次ぎ要望し、増額変更した後の工事費の1%が受注者負担となるルールの撤廃を強く呼び掛けた。
山口県建設業協会の井森浩視会長は、受注者負担によって「賃上げに向け利潤の確保がさらに困難となる。低入札価格調査基準価格の引き上げ効果も半減される」と指摘した。
国交省の見坂茂範官房技術調査課長は、スライド条項が物価の減額局面でも適用されると説明。実際にリーマンショック後の09~10年度に直轄工事で単品スライドを適用し、対象工事費の1%を発注者負担額として変動額から減免した実績を紹介した。受注者の負担だけにはならない制度の特性を訴えた一方、「受注者負担の撤廃要望はいろんな協会から聞いている。今後の運用状況を見て慎重な検討が必要」と述べ柔軟に対応する可能性も示唆した。
熊本県建設業協会の土井建会長は、スライド条項で減額局面もあるとした見坂氏の説明に理解を示しつつ、「(受注者にとって)増額の方が減額局面よりも負担は大きいということもある」と訴えた。
中国や東北の協会は単品スライドで受注者負担を減らすため、資材品目ごとでなく、各品目を合計した増額分で適用可否を判断することも求めた。
予算確保や働き方改革など業界を取り巻く課題は山積する。それでも近年の会合になかった資材高騰対策の議論を優先した背景には、「地域建設業の大部分が目の前にある課題を乗り切ることで精いっぱい」(東日本の協会関係者)という苦しい経営状況がある。
source https://www.decn.co.jp/?p=147448
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