2017年10月4日水曜日

【現場を担う】発注者×施工者「首都高1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋立部更新工事」

 ◇コミュニケーションが安全・効率化の近道◇

 首都高速道路の大規模更新区間の中でも緊急性の高い1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋め立て部。発注者である首都高速道路東京西局プロジェクト本部の石橋学品川工事事務所工事長(48)は、難工事を進める上で「コミュニケーション」の重要性を強調する。実施設計と施工を担当する9社JVの代表である大林組の河合吾一郎首都高東品川JV工事事務所主任(35)も発注者と思いを一つにして現場の安全確保と作業の効率化に取り組む。

 京浜運河沿いに位置する東品川桟橋・鮫洲埋め立て部の更新工事では、陸側に整備した迂回(うかい)路に上り線の交通を先月14日に切り替えた。現在、上り線の造り替え作業に着手し、2020年東京五輪までに更新線(上り)を整備して同線に下り線の交通を切り替える。五輪後に更新線(下り)の工事に着手し、23年度末の完成を目指す。新しい上下線の供用開始後に迂回路の撤去を進め、26年度に事業をすべて完了させる予定だ。

首都高速道路・石橋学氏
更新工事に計画段階から関わってきた河合氏は「首都高とモノレールが並走し、陸側にはマンションなどの建築物も立ち並ぶ。これほど狭い空間で工事ができるのか、最初は不安が大きかった」と振り返る。

 発注者側から、五輪時には古い道路を使わない方針が示され、迂回路と更新線(上り)の早期完成は厳守しなければならない。「工事の半ばに五輪があり、まずはそこを一つの大目標にしたことで、非常に工期を重視した現場となった」と石橋氏。
 周辺住民を含め、さまざまな事業関係者との調整に駆け回りながら、現場作業がスムーズに進むよう力を注ぐ。

 工期短縮を図るため、JV側はプレキャスト(PCa)化技術を積極採用。これが発注手続きでも評価のポイントとなった。「迂回路がこれだけ早く完成したのもPCa化の効果が大きい。首都高でここまでPCa化を取り入れた現場は過去にないだろう」(石橋氏)。

 うなぎの寝床のように細長い現場を3カ所程度の大きな地区に分け、各地区で複数の工区を設定した施工体制を敷く。「JV職員は現場に率先して出るという所長方針の下、情報共有はかなり密に行っている。デザインビルドで設計を進めながら工事を行う中で、設計部門など本社のバックアップ体制も確立しながら、より最適な施工方法を追求していく」と河合氏は話す。

 ◇風通し良い現場環境を創出◇

 石橋、河合両氏とも、幼い頃からものづくりに興味を持ち、大きな構造物を造りたいとの思いから土木の道に進んだ。年齢は一回り以上離れているが、現場では年の差や受発注者という立場の違いを超えて積極的に意見を交わす。

 「品川工事事務所の皆さんはフットワークが軽く、何かあればすぐに現場に駆け付ける。自分の目で確認し、実情を分かった上で関係者に説明する。施工者と一体でプロジェクトを運営していると感じる」と河合氏。JV職員や作業員にとって、発注者が現場に来れば緊張するのは当然だが、その緊張をほぐしてくれるほど頻繁に顔を合わせ、声をよく掛けてくれるという。

 受発注者という縦の関係ではなく、フラットで何でも言いやすい仲間意識が風通しの良い現場の雰囲気を醸成している。時には首都高とJVの関係者でソフトボールの合同練習を行うことも。石橋氏は「更新線の完成後の迂回路の解体までにあと8年程度かかる。工事関係者らとのさまざまな交流を通じて親睦を深めることが、工事の円滑化にもつながる」と話す。
大林組・河合吾一郎氏
更新線(上り)の工事に移り、両側を供用中の上下線に挟まれた中での作業となり、動線や作業ヤードの確保など、これまで以上に厳しい現場環境となる。
 河合氏は「更新線の工事が本格化すると、作業員も200~300人規模に増大する。これまでと異なる職種の作業員も加わり、安全面の意識レベルの向上に一段と力を入れる」と気を引き締める。

 「ささいなことでも早め早めに現場の話を聞く。問題があれば関係先との調整に先んじて動き、工期の遅延リスクを排除する」と石橋氏。その一方で、安全確保には時間を惜しまない。事故が起きれば、家族や仲間が悲しむだけでなく、原因究明と再発防止に時間と人員が割かれ、工程にも大きな影響を及ぼす。石橋氏は「作業を早く終わらそうと無理をすることは、近道のようで実は近道ではない」と指摘。日頃のコミュニケーションが安全かつ最適な作業への近道だと信じている。

 首都高速道路の大規模更新区間の中でも緊急性の高い1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋め立て部。発注者である首都高速道路東京西局プロジェクト本部の石橋学品川工事事務所工事長(48)は、難工事を進める上で「コミュニケーション」の重要性を強調する。実施設計と施工を担当する15社JVの代表である大林組の河合吾一郎首都高東品川JV工事事務所主任(35)も発注者と思いを一つにして現場の安全確保と作業の効率化に取り組む。

 《工事概要》

 【工事名】高速1号羽田線(東品 川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事
 
 【発注者】首都高速道路会社
 
 【実施設計・施工】大林組・清水建設・三井住友建設・東亜建設工業・青木あすなろ建設・川田工業・東京鉄骨橋梁・エム・エ ムブリッジ・宮地エンジニアリングJV
 
 【工事場所】東京都品川区東品川 2丁目~東大井1丁目
 
 【更新延長】約1.9km(4車線)
 
 【事業完成予定時期】2026年度

1 件のコメント :

  1. いいね!頑張ってください。
    こんな人が建設にたっさわつて
    居るとは❗頑張ってください。

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