2016年11月2日水曜日

【現場を担う-施工管理者×職長】日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟新営工事


 ◇5度目のタッグ、何でも言い合える相談相手◇

 「いかに効率よく足場を組むか。難しいが、そこに尽きる」。東京都新宿区で進む「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟新営工事」で、とび・土工の職長として働く盟成の政川公次工事部長(42歳、写真㊨)の言葉だ。元請の安藤ハザマの内田善久主任(46歳)は、「ほかのパーティーだったら、うまくいかなかったかもしれない」と、堅い信頼を寄せる。建設産業の最前線で働く二人が抱く仕事への思いとは-。

 この現場は、ホールやオフィス、ホテルが入る地下2階地上16階建ての複合ビルを建設する工事で、地下と地上で並行して作業が進む。内田氏は、地下の躯体関係を中心に施工管理を担当。政川氏は、地下工事で仮設足場を任されている。

 二人が現場でタッグを組むのは今回で5回目。「仕事が早く正確」(内田氏)、「当たりが柔らかい」(政川氏)と互いを評する何でも言い合える良き相談相手だ。

 工事は15年7月に始まった。複雑な足場を組んだり、コンクリートを打設したりするなど、地下だけでも多くの作業が錯綜(さくそう)し、現場には1日約180人が入場する。

 円滑に工程を進めるためには、「職人とのコミュニケーションが重要だ」と内田氏は強調する。「事前に言うか言わないかの差は大きい」と長年の施工管理で身に付けたこつを明かす。

 ◇一度でよいから建設業の経験を◇

 政川氏はとび歴23年目のベテランで、「足場の段取りが後工程にかかわる。より簡単に効率よく足場を組むかが重要」という。「職人が安全で作業しやすい計画にしないといけない」と内田氏も同じ考えを持つ。立場は違うが、二人のベクトルは一致し、スピード施工を実現している。

 11月には、地上で大組みした重量500トンのメガトラス(梁)を大型のリフト装置を使い、5~6階に取り付ける作業が控えている。通常は上で架台を組み、そこで鉄骨を取り付けるが、安全で天候の影響も少ないこの方法を採用したという。10月12日時点の進ちょく率は30%。17年1月10日に上棟を迎える。

 政川氏は、とび・土工職だった父親のつてで今の会社に入った。最初の現場は親子で一緒。けんかもしながら仕事を覚えていった。「もともと高いところが苦手。今でも怖いものは怖い。でも、その恐怖が事故を防ぐ」。そうした意識も強い。

 実家が鉄工所で、ものづくりを肌で感じながら育った内田氏は、総合的な視野に立ったものづくりに魅力を感じ、建築技術者の道を選んだ。「自分が計画した通りになるのは楽しい」と話す。「若手には、『自分はここまでできた。次はもっとできる』とやりがいや達成感を持たせてあげたい」とも。現場では、周りから相談される機会も多い内田氏。「器の大きな人間になれれば」と将来の自分を思い描く。

 政川氏は、若手に仕事を任せ、責任感を持ってもらうというスタイルを採る。「上の人間が頭から言うのではなく、突き放して考えてもらうことが一番良いのではないか」。

 言われたままに動くのではなく、より良いやり方を自らが考え、現場を動かす。そこに面白さを感じている自身の姿と重なっている。

 担い手の確保・育成に対する危機意識は共通する。「若い人にどんどん入ってきてほしい」と口をそろえる。若者を建設産業に引きつけるには、何が必要か。政川氏は、「職人は、どれだけ給料が良いかだ」と指摘する。内田氏は、休暇を取得しやすい環境づくりなどが重要だと思っている。

 「若い人には、一度でよいから建設業を経験してほしい。結構楽しいものだ。やってみれば合う人もいるのではないか」と政川氏。40歳を過ぎ、体力の低下を感じることもあるが、今後も同じように仕事を続けていくことが目標だ。「自分にはこの商売しかない」とさらりと言い切る。その気持ちに揺らぎはない。

 《工事概要》

 △工事名=日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟新営工事
 △発注者=日本青年館、日本スポーツ振興センター
 △設計者=久米設計
 △施工者=安藤ハザマ首都圏建築支店
 △工事場所=東京都新宿区霞ケ丘町16の8
 △構造・規模=SRC造(地下)、S造(地上)地下2階地上16階建て延べ3万1848m2
 △工期=15年7月1日~17年6月8日。


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