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日刊建設工業新聞社の公式ブログです。
鹿児島県はスポーツ・コンベンションセンター(新たな総合体育館)の整備に関するPFI等導入可能性調査の最終報告を公表した。BTO(建設・移管・運営)方式のPFIで行う場合、従来型手法に比べて約6・3%の事業費削減が見込まれることなどからPFIの採用が最適とした。10月に実施方針を公表し、2024年4月に入札公告を行い同11月の落札者決定、25年3月の契約締結を想定している。
スポーツ・コンベンションセンターは鹿児島港本港区エリア内のドルフィンポート跡地(鹿児島市本港新町)に計画し、規模は延べ3万平方メートル程度。
従来型手法、設計・施工一括(DB)方式、DBO(設計・建設・運営)方式、BTO方式のPFIの各事業スキームを定量的・定性的に評価。BTO方式のPFIは性能発注・一括発注によるコスト削減効果やサービス水準の向上が見込まれ、他の手法に比べ財政支出の平準化や事業の安定性で優位と評価した。
VFM(バリュー・フォー・マネー)は、22年11月の中間報告後に市場調査や金利動向などを踏まえて改めて算定。前提条件として設計・建設期間を4年、開業準備・維持管理・運営期間を15年と設定。基本構想の数値や類似事例の実績などに基づき費用を設定した。
BTO方式の場合、15年間の維持管理・運営費を含む事業費は230億6693万9000円で従来型手法に比べ事業期間内の財政負担は15億4521万3000円削減されると試算した。
中間報告後の市場調査には県内外から20者が参加。10者が事業に参加する意向を示し、もう10者が検討中と答えた。民間収益事業については、スポーツ教室や飲食施設などで収益性やにぎわい創出、利用促進などが期待できるとした。
調査はみずほリサーチ&テクノロジーズが担当。
大学で経済学を専攻し、大きな災害が社会経済に及ぼす影響を研究した。それがきっかけとなり、就職先には金融機関や社会インフラ系の企業を志望。初めて東日本建設業保証の存在を知った。「金融機関と社会インフラ両方の要素を備えていると思った。採用担当者がとても親身だったことも大きい」と当時を振り返る。
2009年に入社してから6年間、埼玉、長野の各支店に勤務。前払金保証業務の窓口担当として保証証書の発行や前払金の使途審査などに従事しつつ、先輩社員に同行しながら営業活動も経験した。建設現場で働く人たちとやりとりを重ね、自分なりに建設業という仕事への理解を深めていった。現場を訪問する機会もあるが、とてもきれいだったことに感動した。
本社業務部で冊子作成などに携わり、節目となる入社10年目に愛知支店へ。大手企業の保証手続きも任されるようになった。現在は本社経理部で各支店の経理チェックや問い合わせなどに当たる。
苦い失敗もある。「経験を重ねてくると『自分なりにこうだ』という思い込みも強くなり、お客さまとの間に大きな理解の相違や溝が生じたこともあった」。そのため後輩には経験も大切にしつつ、初心を忘れない丁寧な仕事の大切さを繰り返し伝えている。
趣味はベリーダンス。休日は仲間と一緒に充実した汗を流す。
(かねこ・なお)
大林組と建設機械レンタルのドリルマシン(東京都荒川区、永井敏実社長)は、ロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」に長尺鋼管先受け工法(AGF工法)の遠隔打設システム「AGF-Sq(スクイーズ)」を搭載した。独自の鋼管を活用して遠隔で先受け鋼管の打設・接続が可能。ロボルタスでの遠隔作業の機能を補助工法にも拡充し、トンネル補助工法の安全性向上と省人化を実現した。
AGF工法は、トンネルの切羽前方へ屋根状に鋼管を打設して地山を補強する。特に軟弱な岩盤でのトンネル掘削を中心に広く使われている。通常、1本3メートルの鋼管を打設し、鋼管を接続して約12メートルの先受け鋼管を構築する。AGF-Sqは鋼管同士を接続するスクイーズユニットと、接続する次の鋼管を搭載するローディングユニットで構成。ロックボルト打設とAGF工法の二つの作業が、機械1台の遠隔操作で施工できる。
遠隔操作はリモコンで行い、バスケット上の作業が1人で済む。ローディングユニットにあらかじめ次施工の鋼管を搭載すれば、一連の作業のサイクルタイムを10%程度短縮できる。従来、鋼管同士の接続などの作業は、重機のバスケット上に2人の作業員が搭乗して行い、ブームを地上に下ろして次施工の鋼管を運搬していた。
独自考案したストッパーは、適切な位置で鋼管が自動で止まる。次施工の鋼管設置位置を目視確認する必要がなくなる。これにより崩落の危険がある切羽近くや稼働中の機械の近くに作業員が立ち入る必要がなくなり、より安全な作業ができる。
清水建設は20日、バイオ炭を使ってコンクリート内部に炭素を貯留する環境配慮型コンクリートを実工事に初適用したと発表した。適用現場は新東名高速道路川西工事(発注者・中日本高速道路会社)。場内工事用道路の仮舗装コンクリート34・5立方メートルに使用。普通コンクリート比99%の二酸化炭素(CO2)排出削減を実現した。
木質バイオマス(オガ粉)を炭化したバイオ炭をコンクリート1立方メートル当たり20~80キロ混入した環境配慮型コンクリート。バイオ炭の混入量1キロ当たり2・3キロのCO2が固定化できる。
セメント材料に低炭素型の高炉セメント類を使えば普通コンクリートのCO2排出量と比べて最大118%のCO2削減効果が得られ、削減量が排出量を上回るカーボンネガティブを実現できるという。
現場では高炉セメントB種をセメント材としたコンクリートに60キロのバイオ炭を混入する配合を採用した。定量的なCO2削減量は6・7トンだった。バイオ炭コンクリートは施工性にも優れ、現場でポンプ圧送に対応できる流動性を備える。強度性能も普通コンクリートと遜色ない。同社は仮設構造物だけでなく、擁壁や橋台など本設コンクリート構造物への適用を順次進めていく考えだ。
関東地方整備局は、詳細設計から施工段階への引き継ぎ情報などを記載した「工事発注時チェックシート(橋梁詳細設計)」を橋梁上部工事で試行活用する方針を固めた。工事・業務の条件明示を促し、円滑な施工につなげる。効果を見極めた上で対象工種を拡大することも視野に入れる。活用は建設コンサルタンツ協会(建コン協)関東支部(中村哲己支部長)からの要望を受けた措置。導入は全国で初めてという。
チェックシートには設計時の条件や留意事項を所定の様式に沿って記入しておく。設計条件、施工条件、設計思想、公文書協議の状況、配慮事項など詳細設計から施工段階に引き継ぐ内容を明確化することで、施工に円滑に着手できるようにする。状況を○△×で記入でき、配慮事項にもあらかじめ記入例を書き込むなど、使いやすさに配慮した。
チェックシートは詳細設計受注者が作成し、業務完了時に受発注者で内容を確認する。発注関係図書として扱い、入札公告時には受注希望者が閲覧できるようになる。同支部はチェックシートに合わせた運用の手引も作成した。
建コン協関東の中村支部長らが16日に同整備局を訪れ、小林賢太郎企画部長に導入を求める要望書を手渡した。これまで予備設計から詳細設計の間は「詳細設計時チェックシート(案)」によって引き継ぎの円滑化を図っていたが、詳細設計から施工段階には同様の仕組みがなかった。
チェックシートを活用することで、各設計技術者に委ねられていた引き継ぎの内容を整理し、施工段階に入ってから設計者に問い合わせる手間や手戻りが減ると期待されている。公共工事では予算や用地取得により詳細設計完了から実際の施工までに数年かかることも多い。発注者側の担当者が異動になるなどで、設計当時の申し送りが十分になされないというトラブルも防ぐことにつながる。
要望に対し小林部長は「施工側の意見も取り入れ優れたものになっている。(関東整備局として)来年度から活用してきたい」と話し、導入準備が整い次第、試行導入する考えを示した。中村支部長は「協会としても全国に広げていきたい」と意欲を見せた。
鹿島はトンネル鋼製支保工の全周が地山から受ける応力を、高性能の光ファイバーでリアルタイムに精度よく把握できることを施工中の山岳トンネル現場で実証した。計測結果を基に支保工の配置パターンを的確に変更でき、補強を迅速に行える。支保の耐力不足による地山変状などのトラブルを完全に回避できるという。光ファイバーで鋼製支保工のひずみを計測したのは業界初という。
岐阜県中津川市で施工中の「中央新幹線中央アルプストンネル(山口)工事」(発注者=鉄道建設・運輸施設整備支援機構)で確認した。ケーブル状の光ファイバーセンサーを貼った鋼製支保工を地山に設置。高性能の光ファイバー計測器で支保工のひずみを計測した。結果、支保工が地山から受ける応力をリアルタイムに高精度で把握できることを確認した。
光ファイバーセンサーは支保全周の応力を把握でき、最大の応力が生じている場所がピンポイントで分かる。より的確な支保パターンの選定や補強が迅速に行え、地山変状などのトラブルを完全に回避することが可能となる。従来のひずみゲージは円周方向に3箇所程度を計測するものだった。
ケーブル状の光ファイバーセンサーは安価なため、コスト負担も少ない。同社は今後、断層などがあり大きな支保応力の発生が懸念されるトンネル工事現場にケーブル状の光ファイバーセンサーを常備し活用する。さらにトンネル以外の工事に光ファイバーセンサーを使用する考えだ。
6日に発生したトルコ南東部を震源とするマグニチュード7・8の地震で、トルコやシリアで甚大な被害が起きている。現地では救助活動が続いており、一人でも多くの救出を祈るばかりだ▼日本からも緊急援助隊・救助チームが派遣された。岸田文雄首相は8日の国会で「現地のニーズを踏まえ、被害を受けた地域への必要な支援を検討する」との姿勢を示した▼多くの建物が倒壊し、余震や降雪がある中で作業が難航しているという。被災地につながる道路も被害を受け、救助や支援物資運搬の障害となっている▼トルコは地震が多い国で、1939年のエルジンジャン地震では約3・3万人が亡くなった。99年の北西部での地震でも大きな被害が出ている。建築物の耐震化を含めた国土強靱化の重要性を改めて認識させられる▼国土交通省は昨年12月、エルジンジャン地震の発生日に合わせてトルコ政府と「日・トルコ防災セミナー」を開催し、防災協力を一層強化する方向性を確認した。まずは救助と復旧が第一だが、地震の懸念はこれからも続く。今後の復興はもちろんのこと、さらなる備えまでの支援が求められる。
戸田建設ら3社は、硬質地盤掘削に使用するシールド機のローラーカッターを安全に交換できる装置を共同開発した。カッタースポーク内に設置する交換装置はローラーカッターを固定した回転機構を備える。交換時には内部から回転機構を操作しカッターを縦向きに回転。上向き状態のまま地下水などの外圧を遮断しながら摩耗したカッターを交換する。
共同開発した「Hi-RORRA System(ハイ・ローラ・システム)」はトンネル掘削機メーカーのJIMテクノロジー(川崎市川崎区、三木孝信社長)、日本シビックコンサルタント(東京都千代田区、長崎均社長)と共同開発した。交換装置はローラーカッターを固定した回転機構と、シール部がスライドする止水機構で構成。掘削ズリの詰まりなどで二つの機構の動作が阻害されないよう、装置後方には排土機構も備える。
交換する場合、掘削停止後に作業員がセンターシャフトを通り機内からカッタースポーク内へ移動。油圧レンチなどを使いローラーカッターが収納されている回転体を上向きに回転。シールで土砂や地下水の浸入、外圧を遮断した後、カッターを取り出し交換する。大深度の高水圧下でも安全な作業環境が確保できる。
シールド機の外に出る必要がないため地盤改良などの補助工法を省略でき、工程短縮と工事費低減に貢献する。繰り返し交換でき、土質に応じたカッタービットの選択も可能になる。
カッタースポーク内を模擬した実物大の実験装置で交換実験を行った結果、止水機構の信頼性と円滑な交換作業性を確認した。今後も幅広い適用条件に対応するための検証などを進め、実プロジェクトへの適用を目指す。
自民党の公共工事品質確保に関する議員連盟(会長・根本匠衆院議員)が8日に東京・永田町の参院議員会館で開いた総会で、岸田政権による賃上げ要請や時間外労働規制を踏まえた働き方改革に対応し、公共工事設計労務単価を引き上げる必要があるとの意見が相次いだ。根本会長は「政策的な視点を入れた設計労務単価であらねばならない」と主張し、要望に訪れた建設業団体などの代表者らに「今年は例年以上にしっかり取り組むつもり。期待してもらいたい」と訴えた。=2面に関連記事
冒頭、根本会長は「業界団体の皆さんにも賃上げをお願いしている。その点で公共工事は発注単価をどうするか。そこは政策的にやれる」と強調。1年後の時間外労働規制の適用に向けた課題を建設業団体から吸い上げる考えを示し、「長期的な担い手を確保する観点から設計労務単価の引き上げは不可欠。働き方改革への対応という視点も含めて政策的に反映していく必要がある」と話した=写真。
総会では複数の議員から、岸田首相が国会などの場で経済界に繰り返し要請している「物価上昇を超える賃上げ」を設計労務単価に反映すべきとの声が上がった。2022年の消費者物価指数が前年比2・5%上昇となったことから「もう一息、岸田総理の発言を受けて上乗せする。緊急的に引き上げるのが大事ではないか」との意見もあった。
ある議員は建設資材の価格高騰が続く中、民間工事の請負契約でスライド条項が適用されない現状に触れて「賃金を上げよう、価格転嫁しようと言っている世の中の状況に対応できていない」と指摘。国土交通省の「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」で、適正賃金の原資確保を目的に建設工事の価格決定構造の見直しを議論していることに期待を示した。
これに呼応し根本会長は「民民間の契約も今後、切り込める分野ではないかと思う。しっかり取り組んでもらいたい」と国交省に要請。民間市場の環境改善に向け建設工事標準請負契約約款の活用などさまざまな政策手段があることを示しながら、品確議連として「きちんと制度を詰める力はある。国交省と品確議連の政府・与党一体で取り組んでいく」と話した。
鴻池組や富士興産など5者は、施工現場の二酸化炭素(CO2)排出量削減に向け、建設機械の燃料に軽油代替燃料を使う実証実験を行う。使用燃料は軽油に高純度バイオディーゼル燃料を30%混合した「B30燃料」。4月に京都府内の大型造成現場で実験を開始し、2024年3月までに燃費比較や建機に与える影響などを検証する。
対象工事は鴻池組が京都府京丹波町で施工している「瑞穂環境保全センター第三期保全計画埋立地工事」(発注・京都環境保全公社)。鴻池組と富士興産、日立建機日本、建設技術研究所、高純度バイオディーゼル燃料事業者連合会(大阪府守口市、星子桜文代表理事)が参画する。
実施工現場でB30燃料を建機燃料に使用する実証実験は建設業界初という。B30燃料は黒煙の排出など大気汚染を抑え、大幅なCO2削減効果が期待できる。現場では油圧ショベルなどの建機に使用。5者が連携し軽油との燃費比較や使用建機への影響、排ガスの環境影響などを検証する。
鴻池組は施工段階のCO2排出量削減を中期計画の重要テーマに掲げる。その一環として22年10月に大阪府寝屋川市内の施工現場を皮切りに、使用電力を100%再生可能エネルギー化する取り組みも始めた。4月から始める軽油代替燃料の実証実験で得られた知見なども生かし、カーボンニュートラル(CN)社会実現に貢献していく考えだ。