JR東海が進めるリニア中央新幹線(東京・品川~名古屋間)の建設事業で、南アルプストンネルの長野工区の工事が始まった。施工区間の一部では土かぶりが国内最大規模の1400メートルに達する。発注者と施工者が一体となって難工事に挑む。
南アルプストンネル(延長約25キロ)は山梨・静岡・長野の3県にまたがり、標高3000メートル級の山岳地帯を貫く。
長野工区の工事場所は長野県大鹿村で、西側のリニア本線と小渋川が交差する地点から東側の長野・静岡県境までの延長約8・4キロが施工区間。長野・静岡県境付近で国内最大規模の土かぶりとなり、高度な施工技術が求められる。本線トンネルは3カ所の非常口(小渋川、除山、釜沢)から掘削する予定。工期は26年11月30日まで。
安全祈願と起工式は1日、大鹿村の小渋川非常口予定地付近で行われた。同社や施工を担当する鹿島・飛島建設・フジタJV、沿線自治体の関係者など約100人が出席。約10年にわたる大規模工事の無事完成を祈念した。
起工式の冒頭、JR東海の柘植康英社長は「何よりも工事の安全に注意するとともに、地元の方々の生活と素晴らしい自然環境の保全に気を配り、地域と連携して工事を進めていきたい」とあいさつ。
続いてあいさつした阿部知事は「リニアの開業は本県に大きな経済波及効果をもたらすだけでなく、地域の方々にとって新たな地域振興の取り組みを始める契機となる」と期待を示した。県としては、リニア関連の道路整備などを重点的に進めるとともに、「美しく豊かな景観や伝統文化などの魅力を高め、発信していく好機とするため、リニア開業を見据えた観光や産業の振興にも積極的に取り組む」と述べた。
式典後に行われた記者会見には、施工者を代表して鹿島の茅野正恭取締役副社長執行役員が出席し、「これまでのトンネル工事で培った経験と知見を生かす。さまざまなデータを収集し、技術開発の準備も着々と進めている。JR東海と一体となって難工事に挑んでいきたい」と意気込みを語った。
着工に当たり、石井啓一国土交通相は同日の閣議後の記者会見で「事業が円滑に実施されるためには地元の理解と協力が不可欠。国交省としても、引き続きJR東海に対し、地元住民などに丁寧に説明しながら安全かつ確実に施工が行われるよう指示・監督していきたい」と話した。
「責任の重大さを感じるとともに、待ちに待ったという気持ちだ。特に地元との協調や安全について、第一線の責任者としての自覚を持ちながら工事を進めたい。トンネル工事は自然が相手のため何が起きるか分からない面もあるが、それを技術力でカバーしていきたい」。
0 comments :
コメントを投稿