◇「信頼」と「信用」の違い教訓に◇
横浜・鶴見に実家があり、小学生の頃は近くで行われていた首都高速道路建設工事の現場をよく見ていました。こうした経験もあってものづくりに魅力を感じ、大学は土木工学科に進みます。
大学の講義でプレストレストコンクリートが紹介され、合理的で面白い構造だと興味を覚えたのが、当時のピー・エス・コンクリート(現ピーエス三菱)への入社を希望した一つの動機です。会社の大きさで選ぶのではなく、将来性のある会社に入りたいとも考えていました。
入社して現場に配属されると、そこでの日々はまさに体育会系の合宿のようでした。先輩社員や協力会社の方たちは大変に勇ましく酒もよく飲んだものです。多くの新しい技術が導入された時代でもあり、仕事は現場で協力会社の人たちと失敗を繰り返しながら覚えていった記憶があります。
すぐ上の上司がやっている仕事は、次の現場では自分がやらなくてはいけない-。若い頃に心掛けていたことです。何でも自ら進んでやろうと意気込んでいました。
入社して4、5年くらい経つと、小さな現場では自分がトップとなり、原価管理にも関与するようになりました。でも上司からは予算書を渡されただけで何も教えてもらえず、それまでの自分の現場経験を頼りに試行錯誤しました。会社で開かれた会議に参加し、あの人のようになりたいと思える先輩が何人かいることを自覚したのもこの頃でした。「もっと職員らしい仕事をしろ」と指導されたことや、困っている時に発注者や関係機関と交渉する先輩の姿が印象に残っています。
新しい構造形式や架設機械を使う工事に挑戦した経験から得てきたものがあります。それは「人の言うことは信頼するが、信用してはいけない」というものです。初めてのことに挑む時、過去に行われた同種の工事をいろいろ調べて参考にするのですが、「これでいいのかな」などと自分でよく理解しないままに模倣した計画はたいていうまくいきません。過去の資料には都合良く書かれている所があるかもしれず、やはり自ら考えてシミュレーションした計画を頑固に進めるべきです。
現在の働き方改革ではより一層の生産性向上が求められています。現場の最先端にいる人はさまざまな課題に直面し、そういった求められていることとのギャップを感じているかもしれません。しかしやれることはしっかりやっていくことが必要です。ICT(情報通信技術)の活用やプレキャスト化、ロボット化などにも積極的に挑戦し、先輩たちをぜひ追い越していってほしいと期待します。
(みやわき・ひろあき)1979年日本大学理工学部土木工学科卒、ピー・エス・コンクリート(現ピーエス三菱)入社。土木本部土木部長、同副本部長兼土木部長、執行役員九州支店長、同東京土木支店長などを経て、18年4月常務執行役員東京土木支店長(予定)。神奈川県出身、62歳。
入社3年目。工事が完成に近づき、先輩に言われて撮った一枚 |
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