2018年3月15日木曜日

【回転窓】黒部川と政治

富山県黒部市の歴史民俗資料館にある日本三奇橋の一つ「愛本橋」の模型。江戸時代に整備された全長63メートルのはね橋を2分の1で復元。間近で見るとかなり迫力がある▼橋が架けられたのは急流として知られる黒部川。下流部に扇状地が広がり、人々は出水期の通行に苦労していた。加賀藩5代藩主の前田綱紀が架橋を命じ、通行がしやすいと防衛面で悪影響を及ぼすと反対の声もあったが、安心して渡ることができる環境を整える方が大事だと押し切った▼黒部川扇状地はかつて、秋になると稲の生育が衰える「秋落ち」の現象に苦しんでいた。明治生まれの農業技術者・伊東森作は実験により、性質の異なる土を混ぜる客土が有効だと解明した。切り札として上流の赤土を運んで利用する事業を考案。だが、実施するには膨大な資金が必要となる▼伊東は戦後、県議会議員へと転じ念願の事業を実現に導いた。その結果、米の収穫量は15~30%も増えたという。2人に共通するのは、多くの人に豊かさを実感してもらうことへの熱意だ▼次世代のために何ができるのか。後世の評価も念頭に置き、熱意を持って考える必要がある。

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